パンデミックから1年、新型コロナウイルス感染症をめぐってさまざまな研究が進められています。その重要な要素のひとつが、かかりやすい人や重症化しやすい人を識別するための研究です。このたび、海外の研究グループが、歩く速度が遅い人は新型コロナで亡くなるリスクが4倍も高く、重症になるリスクも2倍高いと報告しています。新型コロナに特に気をつけるべき人を見極めるヒントになるかもしれません。
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歩く速度は健康状態の指標になる
これまでの研究から、新型コロナウイルス感染症にかかって重体になるリスク要素として、太っていることと「フレイル」(虚弱状態)があることがわかっています。特にフレイルは、年齢や基礎疾患よりも大きな影響を与えると考えられているそうです。そこで注目されたのが、歩く速度。フレイルを含めた全身の健康状態の指標になるとされ、死亡リスクとの関連性も証明されています。
今回、英国の研究グループは、歩く速度と新型コロナウイルス感染症の重症化および死亡リスクとの関連性を調査。肥満の尺度としてBMIも加味して分析しました。
使用したデータは、英国民の遺伝情報や健康情報を広く集めているデータベース「UKバイオバンク」から、新型コロナウイルス感染症のデータを含む41万人以上の情報です。
太っていてもいなくてもリスクに
こうして判明したのは、歩く速度は新型コロナの病状と関係していること。具体的に見ると、正常体重でも太っていても(BMIにかかわらず)歩く速度が遅いと、新型コロナウイルス感染症の重症化および死亡リスクが高くなることです。正常体重の人では歩く速度が遅いと、速い人に比べて重症化のリスクがほぼ2.5倍、死亡リスクが3.75倍になりました。また、正常体重でも歩く速度が遅いと、太っていて歩く速度が速い人よりもリスクが高いとわかりました。
この結果を受けて、研究グループは「速く歩く人は概して心臓や血管の健康状態がよく、ウイルスなどの外部からのストレスを受けても回復力が高いと考えられる」と指摘。新型コロナウイルス感染症の重症化リスクを予測する尺度として、BMIのほかに歩く速度も加えてはどうかと提案しています。意外と重要かもしれません。
<参考文献>
ビタミン不足がまねく「フレイル」、早めの対処が大切
https://fytte.jp/healthcare/83141/
Pick up the pace! New study finds slow walkers four times more likely to die from Covid-19
https://le.ac.uk/news/2021/march/slow-walk-covid
Yates T, Razieh C, Zaccardi F, Rowlands AV, Seidu S, Davies MJ, Khunti K. Obesity, walking pace and risk of severe COVID-19 and mortality: analysis of UK Biobank. Int J Obes (Lond). 2021 Feb 26:1–5. doi: 10.1038/s41366-021-00771-z. Epub ahead of print. PMID: 33637952; PMCID: PMC7909370.
https://www.nature.com/articles/s41366-021-00771-z
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33637952/