ゆっくりした動作のヨガは、心身のリラックスなどさまざまな健康効果があると、科学的な根拠も続々と出ています。このたびさらに、ヨガを続けていると“失神”を防ぐという意外な報告がありました。失神はいろいろな原因で起こりますが、この場合は自律神経のバランスがくずれて起こる「血管迷走神経性失神」と呼ばれるタイプです。ヨガに秘められた効用なのでしょう。
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従来の予防法と比較する初の試験
一般的に「失神」とは、脳への血流が低下して一時的に意識を失うことです。「血管迷走神経性」の失神では、自律神経の調節機能に問題が起きて、循環器系(心臓・血管)に影響が現れます。たとえば、長い間立っている、恐怖、痛み、血液を目の当たりにする、高温および高湿の環境などが原因になります。失神のなかでは最も多いタイプで、あらゆる年齢で見られ、くり返す人もいるとされています。
今のところ予防法としては、水分補給、暑くて人の多い環境を避ける、筋肉を緊張させる、横になるなどがありますが、効果はあまり大きくないのが課題といいます。
今回、インドと米国の研究グループは、ヨガが自律神経の障害によい効果があると証明されている点に着目。血管迷走神経性失神をくり返す約100人を対象として、ヨガを行うグループと従来の予防法を行うグループに半数ずつ無作為に分けて結果を比較する、初めての研究に取り組みました。
従来の予防法のグループは、塩分6〜9gと水3リットル以上を毎日摂取し、失神の兆候があったら回避動作(脚を交差させる、太ももとお尻の筋肉を緊張させる)をしました。ヨガのグループは、呼吸法・ポーズ・瞑想から成る60分のセッションを受けたあと、12か月間これを毎週少なくとも5日行いました。
そのうえで参加者には失神の発生を記録。失神が日常生活に与えた影響や恐怖および不安のレベルなどについて、研究開始時とその後3か月、6か月、12か月時点で答えてもらい、生活の質を評価しました。
失神の回数が3分の1以下に
2つのグループを比較してわかったのが、ヨガが失神を防ぐ効果を持ち得るということです。ヨガのグループは従来の予防法のグループに比べて、研究開始後のすべての時点で失神の回数が少なく、生活の質のスコアがよくなっていました。12か月間の失神回数は、従来の予防法のグループが3.8回に対して、ヨガのグループは1.1回(研究開始前には、平均17か月の間に6.4回)。この差は早くも3か月後から明らかで、その後も維持されました。
今回の研究は1か所の医療施設で行われたため、さらに多くの施設で大規模に試験を行って結果を確認する必要があると研究グループはつけ加えていますが、ヨガは血管迷走神経性失神の予防法として、従来の方法より有効と指摘しています。呼吸法と瞑想は自律神経系に、ポーズは血管の緊張に効果があると考えられるそうです。
<参考文献>
Jayaprakash Shenthar, Ritesh Singh Gangwar, Bharatraj Banavalikar, David G Benditt, Dhanunjaya Lakkireddy, Deepak Padmanabhan, A randomized study of yoga therapy for the prevention of recurrent reflex vasovagal syncope, EP Europace, 2021;, euab054,
https://academic.oup.com/europace/advance-article/doi/10.1093/europace/euab054/6219608
Slow yoga prevents fainting
https://www.escardio.org/The-ESC/Press-Office/Press-releases/Slow-yoga-prevents-fainting