ALS(筋萎縮性側索硬化症)は、筋肉が弱くなる難病として日本でも知られるようになっています。神経が侵されることで筋肉を動かせなくなるメカニズムはわかっていますが、治療する手段がないのが大きな問題になっています。そうしたなかで海外の研究から神経だけではなく、血管とも関連があると報告されました。治療手段を見つけ出すヒントになりそうです。
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ALSはなぜ起こる?
ALSは人によって症状の進み方に差があるとわかっています。それがどうして違うのか、神経にどのような変化が起こるのかの研究が進んできました。そうしたなかで注目されたもののひとつが、弱っていく神経との関係において、神経に酸素や栄養を送り込む血管の役割でした。
スウェーデンのカロリンスカ研究所などの研究グループは、血管の関与について研究を進めるなかで、血管の周辺にある「線維芽細胞」と呼ばれるごく一般的な細胞の役割に着目して、詳しく調べてきました。これまでの動物実験からわかったのが、線維芽細胞の遺伝子によって、症状の出方や生存率などに影響しそうだということ。この点からさらに人に対象を変えて詳しく検証を続けてきました。対象は、574人のALSと診断された人たちと、504人の健常者。血液検査によって血液の変化について検証しました。
病気の進み方の手がかりを発見
ここからわかったのは、ALSの進み方が血液の変化から判別できるかもしれないということです。具体的には、すでに動物実験で発見されていた、血管周囲にある線維芽細胞という細胞に関連しているタンパク質の一種「SPP1」という成分が血液に増えると、ALSの進行が起こりやすくなったり、生存期間が短くなったりする可能性があると判明しました。
研究グループによると、ALSになると、神経細胞を支えている「ミクログリア」と呼ばれる神経に関連した細胞がダメージを受けるのですが、それよりも先に血管周囲の線維芽細胞に変化が起こる可能性があるというのです。血液検査からこの変化がわかる可能性があるとしたら、診断や治療など、難病の解決につながることも期待されそうです。
<参考文献>
New type of cell contributes to increased understanding of ALS
https://news.ki.se/new-type-of-cell-contributes-to-increased-understanding-of-als
Månberg A, Skene N, Sanders F, Trusohamn M, Remnestål J, Szczepińska A, Aksoylu IS, Lönnerberg P, Ebarasi L, Wouters S, Lehmann M, Olofsson J, von Gohren Antequera I, Domaniku A, De Schaepdryver M, De Vocht J, Poesen K, Uhlén M, Anink J, Mijnsbergen C, Vergunst-Bosch H, Hübers A, Kläppe U, Rodriguez-Vieitez E, Gilthorpe JD, Hedlund E, Harris RA, Aronica E, Van Damme P, Ludolph A, Veldink J, Ingre C, Nilsson P, Lewandowski SA. Altered perivascular fibroblast activity precedes ALS disease onset. Nat Med. 2021 Apr;27(4):640-646. doi: 10.1038/s41591-021-01295-9. Epub 2021 Apr 15. PMID: 33859435.
https://www.nature.com/articles/s41591-021-01295-9
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33859435/
Ny typ av cell ökar kunskaperna om ALS
https://news.cision.com/se/karolinska-institutet/r/ny-typ-av-cell-okar-kunskaperna-om-als,c3325945