今年は平年よりも早く梅雨入りしている地域が多いようですね。そのぶん、夏も早く到来しそうな予感!
そこで気をつけたいのが「熱中症」。昨年に続き、マスクが手放せない今夏はいつも以上に注意したいところ。すでに5月に熱中症になりかかった人や熱中症と診断された人もいるそうです。
熱中症対策には、水分や塩分の補給、休息、気温や湿度の管理などが大切ですが、“乳たんぱく質”が重要であることがわかってきたのです。
今回は、そんな良質なたんぱく質を豊富に含む「塩ヨーグルト」の効果やパワーを解説します。カンタンに作れておいしい、塩ヨーグルトのアレンジレシピも紹介しているので、ぜひ試してみてくださいね。
Contents 目次
今年は昨年よりも熱中症に気をつけなきゃいけないってホント?
年々暑くなる日本の夏。10年ごとに見直される気温の平均値は全国的に0.1~0.5℃ほど上昇し続けています。気象庁最新の3か月予報によると、2021年の夏の暑さも平年並みか高温多湿になるとのこと。
そこで気をつけたいのが「熱中症」。総務省の発表によると、2020年8月の熱中症による救急搬送者数は4万人を超え、2008年の調査開始以来最多となっています。今年もすでに6月に入って全国で30℃を超える真夏日を観測、35℃を超える猛暑日となった兵庫県では体育の授業中に高校生9人が熱中症の症状を訴えて搬送されるという事例も報告されています。
なぜ、熱中症になる人が増えたのでしょうか。気象病、自律神経失調症などに詳しい、せたがや内科・神経内科クリニック院長の久手堅司先生にお話を伺いました。
「熱中症になる人が増えた原因のひとつには、新型コロナウィルスの感染拡大を防ぐために、夏の間もずっとマスクを着用していたことが考えられます。マスクは息苦しいだけでなく、顔周りの体温が上昇し、体内に熱がこもることによって熱中症になりやすくなるのです。マスクをはずすことをためらって水分をとる回数が少なくなったことも影響している可能性もあります」(久手堅先生)
また、急激に高温になる気候に体が慣れていないことに加えて、自粛生活によるストレスで自律神経が乱れて体温調節がうまくいかなくなるということも要因のひとつなのだとか。
「マスク生活も2年目に入る今年は、積極的な熱中症対策が必要です」(久手堅先生)
熱中症はなぜ起こるの?
そもそも熱中症は、どのようなメカニズムで引き起こされるのでしょうか。
「人間の体は生命活動を維持するために、体温を一定に保とうとします。寒いときは皮膚の血管が伸縮して細くなり、皮膚から放射する熱を少なく、暑いときは血管を広げて体熱交換をして、それでも間に合わないときは汗をかき、熱を逃して体温を下げるという仕組みになっています。
そのため、急激に暑くなるとこの体温調節機能がうまく働かず、汗をかくことができずに体内に熱がこもったり、逆に大量の汗をかいて体内の水分と塩分のバランスが崩れたりすることで熱中症になります」(久手堅先生)
熱中症の症状には、めまいや頭痛、筋肉痛、吐き気、高体温などがあり、症状が重くなると、けいれんや意識障害が起こるとのこと。
また、微熱を超えたらすでに熱中症の可能性も。
「エアコンの効いた室内にいても、不調を感じたら熱中症を疑いましょう。たとえ気温が25℃でも、湿度が高ければ汗が出にくいので、熱中症になりやすくなります」(久手堅先生)
「熱中症かな?」と思ったら、まずは涼しいところに移動して、横になるか椅子に座って安静にすることが大事なのだそう。ほかにも、首やワキの下、鼠径部(そけいぶ)など、太い血管があるところを集中的に冷やして、経口補水液など塩分を含んだ水分をとることで症状の悪化を防ぐことが可能に。
「それでも症状が改善されなければ、ためらわずに救急車を呼ぶことも大事です」(久手堅先生)
また、汗が出たからといって水分だけを摂取すると、体内の塩分濃度が薄まってしまい、熱中症の症状は進んでしまうのだとか。
「暑い時期は、特に塩分などのミネラルを含んだドリンクを飲むことをおすすめします。自粛生活になり、室内でフィットネスやヨガを楽しまれる方も多いと思いますが、熱中症の予防という点からも水分をとるときは必ず塩分も一緒にとるようにしてください」(久手堅先生)
厄介なのは、一度熱中症になると、次からもなりやすくなるのだそう。
「熱中症にならないためにも、暑い夏が来る前に自律神経を整えるような生活スタイルにしましょう。
そのためには、普段からウォーキングなどの軽い運動で汗をかくようにをすること。1~2週間ほど続けていくと、暑さに順応してうまく汗が出るような体質になります」(久手堅先生)
ほかにも、規則正しい生活を心がけて、バランスのよい食事で栄養をとり、水分補給するときは必ず塩分も合わせて摂取するよう気をつけたいところです。
「塩ヨーグルト」が熱中症対策にオススメな理由
腸は「第二の脳」とも呼ばれていて、脳と密接な関係があります。
「ストレスを感じるとお腹が痛くなるのは、脳が自律神経を介して腸に刺激を与えるせいです。一方、幸せホルモンと言われ、体のリズムを整えるのに大事なセロトニンはほとんどが腸で作られています」(久手堅先生)
腸の状態がいいと脳の状態もよくなって、悪くなると脳の状態も悪くなる。脳と腸はつながっていてお互いに影響を与えているそうです。
自律神経が正常に働くためには、腸内環境を整えることが大事になってくる、と久手堅先生。そこでおすすめなのがヨーグルト。さまざまな効能があるヨーグルトは、花粉症の改善になることは知られてきましたが、じつは熱中症対策にも有効であることがわかっているそうです。
「ヨーグルトに含まれる乳たんぱくは体内利用効率にすぐれ、栄養価が高いという特徴があります。余分な水分を体外に排出するだけでなく、必要な水分を体内にとどめてくれます。
また、乳たんぱく質をとることによって、汗が出やすい体質になり発汗をうまく促してくれます。腸内環境をよくするためには善玉菌を増やすことが何よりも大事で、ヨーグルトに含まれる乳酸菌は代表的な善玉菌であり、食べて増やすことが可能です。
ヨーグルトには各種ビタミンも含まれますが、中でもビタミンB1、B2は疲労回復の決め手になる栄養素で、暑さに対応できる体を作ります。
トルコやブルガリアなどヨーグルトをよく食べる国で広く親しまれているのが「塩ヨーグルト」です。さっぱりした味わいなのでドリンクとして飲んだり、料理に使ったりとさまざまに楽しんでいます」(久手堅先生)
栄養にすぐれたヨーグルトに塩を加えることで、熱中症対策の効果は十分期待できるそうですが、そこにバナナを合わせればよりパワーアップするそう。
「炭水化物やたんぱく質、ビタミン、ミネラル、葉酸、食物繊維などバランスよく含まれている万能食品であるバナナと塩ヨーグルトの組み合わせは、まさに熱中症対策の切り札です」(久手堅先生)
ほかにも、ビタミンB群やミネラルなどを含む食材と合わせてとるのもオススメだそうです。
ちなみに、塩ヨーグルトはどのタイミングでとるのがよいのでしょうか?
「腸内環境を整えるには、就寝する2~3時間前にとるのがよいとされていますが、熱中症のことを考慮すれば、1日の始まる朝にとるのもいいですね」(久手堅先生)
今年は「塩ヨーグルト」で、暑い夏を乗りきりましょう!
超カンタン! 「塩ヨーグルト」アレンジレシピ
基本の塩ヨーグルト
<ドリンクタイプ>
【材料(1人分)1人分=93kcal】
ヨーグルト…150g
塩…1g
水…80~100cc(分量はお好みで調整)
【作り方】
(1)ヨーグルトと塩と水を混ぜ合わせる。
<固形タイプ>
【材料(1人分)1人分=93kcal】
ヨーグルト…150g
塩…1g
【作り方】
(1)ヨーグルトと塩を混ぜ合わせる。
すりおろしキウイ入りサワーヨーグルトドリンク
キウイは、カリウムをはじめ、ビタミンCなども多く、熱中症対策以外にも、美肌効果や疲労回復にも役立つフルーツです。
【材料(2人分)1人分=100kcal】
塩ヨーグルトドリンク…1人分
キウイフルーツ…2個
炭酸水…150cc~(分量はお好みで調整)
【作り方】
(1)キウイフルーツをすりおろす。
(2)すべての材料を混ぜ合わせ、グラスに注ぐ。
青菜とバナナとベリーのスムージー
ビタミンやミネラル分を含む青菜に、栄養価の高いバナナを加えると甘味などがプラスされます。さらに、やや酸味のあるベリー類を加えることで、青臭さや甘味とのバランスが整います。
【材料(2人分)1人分=110kcal】
塩ヨーグルトドリンク…1人分
小松菜…80g
バナナ…1本
冷凍ミックスベリー(ストロベリー、ラズベリーを使用)…80g
氷…適量
【作り方】
(1)小松菜は2~3cmの長さ、バナナは適当な大きさに切る。
(2)すべての材料をミキサーにかけて撹拌し、グラスに注ぐ。
きゅうりとゆで豚の塩ヨーグルト和え ミント風味
熱中症対策によいとされるカリウムを多く含むきゅうりと、ビタミンB群を多く含む豚肉を組み合わせています。
【材料(2人分)1人分=226kcal】
塩ヨーグルト…1人分
きゅうり…1本
豚もも肉(しゃぶしゃぶ用)…120g
とうもろこし…1/2本
ミニトマト…6個
ミント…少々
A(オリーブ油小さじ2・黒こしょう少々)
【作り方】
(1)きゅうりは乱切りして軽く塩をふって10分ほどおき、豚肉は半分に切ってゆでて水にさらす。とうもろこしは皮をはがしラップに包みレンジで5分加熱してから、包丁で実をこそげとり、粗くほぐしておく。ミニトマトはヘタをとり半分に切る。
(2)ボウルに、塩ヨーグルトとAを入れ混ぜて、水気をきったきゅうり・豚肉・ミニトマト・とうもろこしを加え、手でちぎったミントも加え和える。
カレー風味のコールスローサラダ
カレーなどのスパイスは、ヨーグルトとの相性もよいので、少し加えると風味もアップ。塩もみすることで、野菜をより多くとることができます。
【材料(2人分)1人分=221kcal】
キャベツ…2枚
にんじん…40g
きゅうり…1/2本
塩…少々
ミックスビーンズ缶…80g
スライスハム…2枚
A(フレンチドレッシング大さじ1・カレー粉小さじ1・はちみつ小さじ1・白こしょう少々)
【作り方】
(1)キャベツ、にんじん、きゅうり、スライスハムをせん切りにする。
(2)ボウルに、キャベツ、にんじん、きゅうりを入れて、塩を加え混ぜて10分ほど置いておく。
(3)ボウルに塩ヨーグルトとAを入れ混ぜて、しっかりと水気をきった(2)と豆缶、ハムを入れて、よく和える。
どれも手軽でカンタンに作れるものばかりなので、毎日「塩ヨーグルト」をとって、今夏の暑さを乗りきりましょう!
料理制作・栄養価計算/大越郷子 撮影/国井美奈子 取材・文/藤野ともね