新型コロナウイルスの感染拡大で、「肺」の健康の大切さに気づかされた人も多いことでしょう。肺の機能低下は免疫力を下げ、不調の原因になります。「ウイルスや病気に負けない強い体をつくるには、“肺の劣化”を防ぐことが絶対に必要」と小林弘幸先生。今回は、小林先生の新著『最高の体調を引き出す超肺活』からお伝えします。
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「肺の機能低下」を知るためのチェックリスト
肺の機能低下は自覚症状が現れにくいものの、誰でも20代から加齢とともに低下していきます。特に喫煙者は40代以降になって急速に機能低下が進行することがあるそう。それでは最初に肺の機能低下をチェックしてみましょう。
□喫煙者(過去に喫煙歴がある人も含む)
□ぜんそくなどの呼吸器疾患がある
□風邪が3週間以上治らないことがある
□ 1日に咳が何度も出る
□黄色や粘り気のある痰が出る
□呼吸すると、ゼイゼイ、ヒューヒューと音がする
□長い坂や階段を上るときに息切れする
□歩いていると、同年代の人についていけない
□ささいなことにイライラする
□集中力が続かない
□不安やパニックになりやすい
□慢性疲労を抱えている
□肩こりや腰痛がひどい
□便秘に悩んでいる
□ぐっすり眠れない
□冷え性や肌荒れに悩んでいる
3つ以上該当する人は、 肺の機能が衰えている可能性があります。肺活力を高めて改善していきましょう。
「肺が衰える」ことで起きる病気と不調
肺の機能が低下すると、どんな病気のリスクが高まるのでしょうか。
「肺の機能が低下すると、COPD(慢性閉塞性肺疾患)になる可能性があります。肺胞が壊れて酸素を血液にとり込めなくなるため、重症化すると酸素ボンベが手放せない疾患です。また肺の免疫力が下がるため、肺炎が発症して命の危険にさらされる可能性が高まります。高齢者に増えている誤嚥性肺炎についても、肺の機能が衰えていることが発症の一因です」と小林先生。
また、このような肺そのものの病気だけでなく、肺の衰えは全身の健康状態を悪化させます。
「血液中の酸素濃度が低いと、脳は心臓に負担をかけて血液量を増やそうとします。その結果、心臓や血管に過度の負担がかかり、心臓の病気や血管の病気を発症させる危険性があります」(小林先生)
新型コロナウイルス感染症にはさまざまな部位に後遺症が起こることが指摘されていますが、「肺がダメージを受けるということは、血液が流れる場所、すなわち全身の細胞すべてになんらかの影響を与える可能性があるということ」なのです。
その不調、肺の衰えが原因かも
病気だけでなくなんとなくの不調も肺と関係していることが多いそうです。
「たとえば、冷え性や肌荒れなどの症状に悩まされている人は、毛細血管のすみずみまで酸素が届いておらず、細胞にエネルギーが足りていない可能性があります。また、慢性疲労を抱えている人は、脳が酸素不足、血流不足に陥り、疲労物質がたまっている可能性があります」(小林先生)
肺が衰えると、知らず知らずのうちに「浅い呼吸」になり、浅い呼吸は自律神経のバランスを崩すため、さまざまなメンタルトラブル、内臓トラブル、血管トラブルを引き起こすリスクを高めてしまいます。
「自律神経は全身の免疫力と深いかかわりがあるため、肺が弱り自律神経のバランスが乱れていると、免疫力の低下を招きます。あらゆる感染症をブロックするためにも、肺の機能低下を放置してはなりません」(小林先生)。
このように日々の健康のためにもなおざりにできない肺。意識的に深い呼吸をするだけでも肺活になります。まずは自分の呼吸が浅くなっていないか、注意してみましょう。
次回は「肺活」の4つのメリットをご紹介します!
参考書籍
『最高の体調を引き出す超肺活』(アスコム)
著者/小林弘幸
順天堂大学医学部教授。日本体育協会公認スポーツドクター。1960年、埼玉県生まれ。87年、順天堂大学医学部卒業。92年、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属医学研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学小児外科講師・助教授を歴任する。
自律神経研究の第一人者として、プロスポーツ選手、アーティスト、文化人へのコンディショニング、パフォーマンス向上指導に関わる。また、順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した”腸のスペシャリスト”でもあり、みそをはじめとした腸内環境を整える食材の紹介や、自律神経と腸を整えるストレッチの考案など、様々な形で健康な心と体の作り方を提案している。『医者が考案した「長生きみそ汁」』、『自律神経を整える長生き呼吸法』(アスコム刊)などの著書のほか、『世界一受けたい授業』(日本テレビ)や『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』(TBSテレビ)などメディア出演も多数。
監修者/末武信宏
1962年、岐阜県生まれ。さかえクリニック院長。医学博士(順天堂大学大学院医学研究科博士課程修了)。トップアスリート株式会社代表取締役。日本美容外科学会認定専門医としてアンチエイジング診療を行うかたわら、順天堂大学医学部非常勤講師としてスポーツ医学の研究を行っている。また、オリンピック日本代表選手、プロ野球主力選手、ツアープロゴルファー、格闘家、トップアイドルなどのトレーニング指導、コンディショニングも行うなど、多方面で活躍中。
文/庄司真紀