夏の訪れとともに、サンダルやミュールで出かける機会も増えてきました。それに伴って、「足」も気になる季節です。「美足」のために、今すぐしたいことを紹介します。日本で唯一の足の総合病院「下北沢病院」の菊池守院長に話を聞きました。
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「美足」の決め手は、3つのアーチ
日頃から、美脚には関心を持っていても、足首から先の「美足」となると、なかなかイメージがわかないかもしれません。FYTTEでは、「美足=健康的な足」と考えます。
では、健康的な足とはどういう状態をいうのでしょうか。菊池先生は、次のように話します。
「足には、体重を支え、着地時の衝撃をやわらげるために、3つのアーチがあります。土踏まずをつくる、かかとと親指のつけ根を結ぶ『内側の縦のアーチ』、かかとと小指のつけ根を結ぶ『外側の縦のアーチ』、指のつけ根を結ぶ『横アーチ』です。足の健康には、この3つのアーチがそろっていることが大切で、見た目も美しいといえます」
●3つのアーチ
美足の決め手となる3つのアーチは、「体重を支え、歩くときの足を地面の衝撃から守る」という大切な役目を果たしています。
「歩いているとき、アーチの形は変わり続けています。足が地面に着地するときは、アーチはしなるように沈み込んでやわらかい状態になり、衝撃を吸収します。そして、足を踏み切るときには、アーチはもとの形に戻り、かたくなることで、蹴る力を強くしています。こうした一連のスムーズな動きによって、足の関節やひざに過度な負担がかからないようにしているのです」
しかし、足に合わない靴や歩き方のクセ、また加齢によっても、アーチはくずれてしまうことがあります。
「代表的なのは、内側の縦アーチ(①)がくずれる『扁平足』です。土踏まずが低下してしまい、ペタペタ歩きになるのが特徴です。また、横アーチ(③)がくずれる『開張足』も女性によくみられます。『扁平足』は、『開張足』や外反母趾*といった足の変形につながることも少なくありません」
*外反母趾…足の親指が外側に曲がり、親指のつけ根が内側に出っ張った状態のこと
こうしたアーチのくずれは、足のサイズにも影響するといいます。
「扁平足や開張足になると、足の形が平べったくなるため、足のサイズが大きくなります。左右でサイズが違う人は、どちらかの足のアーチがくずれているのかもしれません。そうなると足に高低差も生じて、脚の長さにも影響します。それが腰痛や肩こりに原因になったりもします」
アーチに問題がないか、今すぐチェック!
あなたのアーチは大丈夫? ここで足のアーチに問題がないかチェックしてみましょう。
【チェックテスト】
1.裸足になり、キッチンのカウンターや机などに向かって背すじを伸ばして立ち、手のひらをカウンターや机に置く。
2.片方の足をひざから持ち上げる。
3.その状態で、もう一方の足のかかとをゆっくりと持ち上げ、親指のつけ根にあるふくらみにすべての体重をかける。
4.かかとをゆっくりと床に戻す。
5.3~4の動作を10回くり返す。つらいときは途中で止めてもOK。
6.反対側の足も同様に行う。
では、判定結果です。
○痛みや疲労感もなく、ラクに10回できた⇒今のところアーチに問題ナシ
○10回できない⇒アーチに疲労アリ
かかとを持ち上げられるものの、10回までくり返しできなかった場合は、アーチに疲労がたまっているのかも。これから紹介する足の筋トレとストレッチを行いましょう。
○かかとを持ち上げることができない⇒アーチに問題アリ
かかとを持ち上げるために、手に力をこめたり、カウンターや机に寄りかかったりしなければできない、あるいは痛みを感じる場合は、アーチに問題があるかもしれません。アーチに関する腱が伸びたり断裂したりして、アーチが下がっている可能性が。足の外科医など専門の医師にできるだけ早く相談しましょう。
○チェックテスト中にアーチに痛みがあった⇒オーバーユースかも?
かかとを持ち上げられるものの、アーチに痛みがある場合は、アーチのオーバーユース(過労)により炎症(足底腱膜炎) を起こしている可能性があります。足の外科医など専門の医師に相談しましょう。
アーチのくずれには、足の筋トレを
さて、あなたのアーチはどうでしたか? アーチに疲労がみられた人も、特に問題がなかった人も、「美足」のために、今すぐアーチくずれを防ぐ筋トレを。
「アーチを支える筋肉をストレッチで伸ばしたり、トレーニングで鍛えたりすることは、アーチのくずれを防ぐだけではなく、外反母趾などの足のトラブルを予防する効果もあります。すでに扁平足や外反母趾がある場合、これらで改善させることは難しいですが、元気に歩くという機能を維持するために行っていきましょう」
アーチを引き上げる筋肉を鍛えよう
※内くるぶしからふくらはぎにかけての「後脛骨筋」を鍛えるトレーニングです
【後脛骨筋トレ】
イスに座り、足の裏を床につける
〈1〉片方の足のつま先を少し外側に向ける
〈2〉小指とかかとを床につけ、親指側を浮かせる
〈3〉足の小指側で床をこするように、足首を内側に向けて動かす。反対の足も同様に。左右10回
足裏の疲れをとりながら、扁平足を防ごう
【足底筋膜マッサージ】
〈1〉両脚を伸ばして座り、片方のひざを曲げて足を手前に引き寄せる
〈2〉足裏をゆっくり反らし、足裏を手のひらでていねいにもみほぐす。左右1分ずつ行う
足指の動きやアーチの調整を担う足の筋肉を鍛えよう
【グーチョキパートレーニング】
足の指でグーチョキパーを作り、それを左右10回ずつくり返します。
●グー
5本の足指をすべて内側に折り込む。足指下の骨の出っ張りが見えるくらい、しっかり丸める。足指を内側に曲げる程度では、ふくらはぎの筋肉が動いてしまい、足の筋肉に効かせることができないので、しっかり丸めることを意識してグーをつくろう
●チョキ
親指を立て、ほかの指は内側に折り込む
●パー
できるだけ足指を大きく広げる。ヒール靴をはいた日は、特にしっかりと行いたい
足のアーチくずれを防ぐために、もうひとつ重要なカギになるのは、アキレス腱です。次回はアキレス腱の仕組みとケアについて、お伝えします!
〈参考書籍〉『“歩く力”を落とさない! 新しい足のトリセツ』(下北沢病院医師団・著/日経BP)
取材・文 海老根祐子