膣も口や腸のなかと同じように、微生物がいて健康を守ってくれています。でも、この常在菌のバランスが崩れて、よくない菌が増えると「細菌性膣炎」になるリスクが。このたび、この症状に関係する3種類の細菌に注目して、そのメカニズムを初めて明らかにする報告がありました。
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3Dで膣の微生物を調べたところ…
わりあいよく見られる症状である細菌性膣炎(細菌性膣症とも)。再発しやすく、性感染症にかかりやすくなるほか、早産を含む産婦人科系のよくない症状や病気につながるために問題になります。がんにさえつながると考えられています。膣のなかは通常、乳酸菌の一種であるラクトバチルス菌が優勢で、感染から守ってくれています。しかし、細菌性膣炎では、ラクトバチルス菌が減って、さまざまなよくない菌が増えます。
これまで、ガードネレラ菌など数種類のよくない菌については研究が進んでいますが、今回、米国アリゾナ大学を主体とする研究グループは、細菌性膣炎で発見されているなかでもまだ調べられていないベイヨネラ科の3種類の菌に着目。平面的な培養ではなく、実際に近い立体的な培養方法を使って、子宮頸部を模した形でこれらの菌を培養し、どんな作用をするのか検証しました。なお、ベイヨネラ科の菌は口のなかなどにごくふつうに存在している常在菌のひとつです。
菌の影響の仕方が明らかに
ここからわかったのが、注目した3種類の菌が膣のトラブルにつながりそうだということです。まず3種類のうち2種類は、有害な感染から体を守ってくれる乳酸菌が作る乳酸を減らしていました。その結果、細菌性膣炎に伴う臭いに関係する物質を増やしてしまうことに。さらに、もう1種類は、炎症(赤み、腫れ、痛み、熱っぽさ)を起こし、細胞を死なせてしまうことも判明。
研究では、こうした変化が、細菌性膣炎を持続させて、性感染症やがんなどになりやすくなる条件をつくると考えられました。
細菌性膣炎と女性の健康に対して独特な影響が明らかになったベイヨネラ科の菌。細菌性膣炎で主要な役割を果たす菌種が明らかになることで、最終的には細菌性膣炎に対処する方法が確立されていくことでしょう。腸内細菌を健康に保つ腸活が注目されますが、膣活も注目されてくるのかもしれません。
<参考文献>
Bacteria Are Key to Vaginal Health, UArizona Health Sciences Researchers Say
https://healthsciences.arizona.edu/newsroom/news-releases/2021/bacteria-are-key-vaginal-health-uarizona-health-sciences-researchers-say
Salliss ME, Maarsingh JD, Garza C, Łaniewski P, Herbst-Kralovetz MM. Veillonellaceae family members uniquely alter the cervical metabolic microenvironment in a human three-dimensional epithelial model. NPJ Biofilms Microbiomes. 2021 Jul 6;7(1):57. doi: 10.1038/s41522-021-00229-0. PMID: 34230496.
https://www.nature.com/articles/s41522-021-00229-0
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34230496/