多くの人の生活を変えた新型コロナウイルス感染症の流行。働き方や遊び方、自宅での過ごし方が変わったのをきっかけに、生活を見直そう、新たによい習慣を身につけよう、と目標を決めた人も多いかもしれません。でも、習慣化するのは案外、難しいもの。「いいことを始めても習慣化まで行きつかない…」こんな悩みを解くカギは、「自己肯定感」にあると、自己肯定感の第一人者で心理カウンセラーの中島輝さんは言います。中島さんの近著『習慣化は自己肯定感が10割』(学研プラス)から、よい習慣を身につけるヒントを、3回にわたって紹介します! 1回目の今回は、「習慣化」について考えを深め、習慣化と自己肯定感の関係を探ります。
Contents 目次
「習慣化」のスタート!~「どんな自分になりたいか」を描くための6つの質問~
毎日の行動のうち、半分近くが習慣となっていることのくり返しです。いい習慣を身につけることは、人生を変える力をもつほど大切なのです。
新しい習慣を身につけようと思うとき、私たちは、「達成したい結果」を想像してやる気を高め、スタートを切ろうとしてしまいがちです。たとえば、「資格をとりたい。だから、毎日の勉強を習慣にする」「リバウンドしないダイエットを成功させる。そのために食習慣を変える」などなど…
でも、じつは大事なのは「どんな自分になりたいか」のビジョンを明確に描くこと。そうすることで、やる気や失敗を受け止める力、ひとつの物事に集中する力、自分を許す力がもてるようになり、自己肯定感が高い状態で行動することができます。
ではさっそく、なりたい自分のビジョンを描く6つの質問に答えてみましょう。
◆6つの質問
1.あなたは何のために、その習慣を必要としていますか?
2.その習慣を達成させることが目標となり、無理をしていませんか?
3.どうしてそれを習慣化させようと思ったのですか?
4.その習慣にとり組もうと思ったきっかけは何でしたか?
5.その習慣が実現したら、どんなすばらしい変化があると思いますか?
6.習慣化されたことによって、あなたの人生はどう幸せになっていきますか?
なかでも大切な質問は6番目。結果を手にすることでどんな幸せを感じているかを知ることがポイントです。結果のその向こうにある「何のために(Why)」を深掘りすると、とり入れたい習慣を習慣化する本当の理由がはっきりと浮かび上がるのです。
「習慣化」と自己肯定感を支える「6つの感」の関係とは?
ところで、「習慣が身につく」(=習慣化)とはどういうことでしょうか。それは「無意識に行動できるようになること」。何を習慣にしたいかによって変わってはきますが、「習慣化」には平均66日かかります。この66日間に、新しい習慣をとり入れて定着させるまでの6つのステップがあり、各ステップは自己肯定感を支える「6つの感」*と深く関連しています。
*自己肯定感を支える「6つの感」……「自尊感情」「自己受容感」「自己効力感」「自己信頼感」「自己決定感」「自己有用感」のこと
「習慣化」への6つのステップ
【ステップ1】習慣の種まき期(0日目~1日目)
【ステップ2】習慣の反発期(2日目~8日目)
【ステップ3】習慣の忍耐期(9日目~21日目)
【ステップ4】習慣の成長期(22日目~31日目)
【ステップ5】習慣の開花期(32日目~60日目)
【ステップ6】習慣の達成期(61日目~66日目)
今回は、習慣化の【ステップ1】~【ステップ3】のくわしい説明と、うまくいくための対処法をお伝えします。さっそく上記の6つの質問に答えて、習慣化したいことを決めたら、読み進めてみてください。
【ステップ1】習慣の種まき期(0日目~1日目)
このステップでもっとも重要なのは、自尊感情です。習慣の種まき期は、なりたい自分をイメージして模索する時期。「自分には価値がある」と思える自尊感情を満たしたうえで(いい土壌に)、習慣化のスタートを切る(いい種をまく)ことが重要です。
●よい種をまくためには……?
「自分には価値がある」と思える自尊感情が十分でないと、動機づけがあいまいなまま、習慣化のスタートを切ってしまう傾向があります。どんな習慣の種をまくべきかを考えるときには、「6つの質問」のうちの、特に6番目「習慣化されたことによって、あなたの人生はどう幸せになっていきますか?」ということを、しっかりと考えましょう。
また、習慣化したい内容を、「What」(何をするのか・具体的にどんな行動を起こすのか)ではなく、「Why」(なぜそうするのか・信念、目的、どんな自分になりたいのか)から考えるのも重要です。
「なりたい自分」の種は、自分の心の中にあります。明確な目的を持てば、自尊感情が満たされ自己肯定感が高くなるのです。
【ステップ2】習慣の反発期(2日目~8日目)
このステップでもっとも重要なのは、自己受容感です。習慣の反発期は、現状維持を求める本能が、新しい習慣に反発する時期。脳は過去の記憶に基づき、〈無意識のうちに行動できる状態=すでに習慣化されたやり方〉を好むので、3日坊主になってしまうのも自然なこと。小さなザセツがあったときに、「休んじゃう日もあるよね」と切り替えて再び習慣化のサイクルに戻るには、ありのままの自分を認める自己受容感が大切です。
●さぼってしまったときどうする…?
すでに習慣化されたやり方を好む脳のはたらきで、「なんだかめんどうくさいな」「忙しいから、あと回しにしよう」というぼんやりした拒否感が現れやすいこの時期。新習慣へのとり組みをさぼってしまうのも珍しいことではありません。大事なのは、さぼってしまったあと、自己嫌悪に陥らないこと。さぼった事実よりもその後の対処の仕方が、習慣化をザセツさせる大きな要因になっているのです。
そこで試したいのが、「フォー・グッド・シングス」。その日にあったネガティブなことをひとつノートに書き、そのできごとを囲むように、その日あったポジティブなできごとを4つ書いていきます。そうすることで、たとえ習慣を途切れさせるようなことがあったとしても、それ以上のよいできごとが自分にはたくさん起きていると自覚できます。失敗を悔やみ、自己嫌悪をくり返すネガティブな反すう思考に陥らず、気持ちを切り替えることができるのです。できる自分もできない自分もどちらもあって当たり前。失敗やザセツを経験した自分を受け入れる、自己受容感が満たされます。
●「フォー・グッド・シングス」の例
【ステップ3】習慣の忍耐期(9日目~21日目)
このステップでもっとも重要なのは、自己効力感です。習慣の忍耐期は、誘惑や欲望により習慣が途切れがちになる時期。油断をすると習慣を継続できなくなる不安定な時期なのです。この状態をくぐり抜けるために、「自分はできる」と思える自己効力感を満たす必要があります。
●やる気が出ないときは休むのもアリ!――ただし1日だけ
新習慣の定着には道なかばのこの時期。油断をすると習慣を継続できなくなる不安定な時期だという自覚が大切です。でも、気分が乗らなくてやる気が出ないときには、休むのも全然アリ。ただし、「さぼるのは1日だけ。次の日からはまた、習慣化にとり組む」と決めておきます。このように、「もし(if)Xが起きたら、行動Y(then)をする」という「if-thenプランニング」というテクニックを用いることで、ピンチを切り抜けられます。
たとえば、ランニングを習慣化したい人の場合は、「雨が降っていて外を走りたくない日(if)は、YouTubeでトレーニング動画を見ながら体を動かそう(then)」などという風に、気分が乗らないときのシチュエーションに合う「if-thenプランニング」を用意してとり組みます。すると、習慣化に完璧を求めて自分を追い詰めるような場面が減っていき、「大丈夫、うまくいっている」「じょうずに切り替えられた!」と感じることができて、自己効力感が満たされていくのです。
いかがでしたか? 次回はいよいよ、新しくとり入れた習慣が、成長し、花開いていく過程についてお伝えしていきます。
取材・文/寺田千恵
〈参考書籍〉
『習慣化は自己肯定感が10割』(中島 輝 著/学研プラス)