日本は「疲労大国」といわれ、文部科学省が行なった調査では、日本人のおよそ6割は「慢性的な疲れを抱えながら暮らしている」そう。疲労解消のための商品もよく見かけますね。メディカルトレーナーの夏嶋隆さんによると、「疲れの原因は間違った姿勢や動作」にあるといいます。今回は、夏嶋さんの書籍『疲れないカラダ大図鑑』よりお伝えしてきます。
Contents 目次
一流アスリートが実践するメソッド
「動作解析」の専門家として、アスリートたちのトレーニングをサポートしてきた、メディカルトレーナーの夏嶋隆さん。
動作解析とは、人間の動作を観察・記録して、運動学や解剖学、物理学に沿った 「人体構造に合った正しい動作」を検証し、それをスポーツの現場に還元していく研究です。アスリートには疲労やケガがつきものですが、「その原因の多くは、“間違った姿勢・動作”をしているために引き起こされている」と話します。
これまで夏嶋さんのもとを訪れたアスリートには、サッカー・セリエAの外国人選手から、元日本代表の中山雅史さんや久保竜彦さん、プロ野球広島カープで監督としても活躍した名外野手などがおり、スポーツ界で活躍するたくさんの人たちから信頼を寄せられてきました。
夏嶋さんのメソッドは、動作解析と合気道を筆頭とした日本古来の武道の動きをもとにしたもので、一般の人が日常生活で疲れないためのポイントがあります。そのなかでも重力を意識すること、全身を使うようにすることで、疲労感はかなり軽減できます。
1.重力のダメージを抑える「重力解放ポジション」
疲れの大本の原因は、地球の重力です。人間は、頭を中心とする上半身の重みを、背骨(脊柱)や腰(骨盤)、 2本の足で支えなければなりません。人体の構造上、足の真上に骨盤があり、骨盤の真上に頭がある状態が重力の負荷をもっとも受けにくい姿勢だといえます。
立っているとき横から見て、耳、肩、骨盤の中心が一直線上にあると、重力のダメージを最小限に抑えることができます。つまり、立つにしろ、座るにしろ、できる限り真上から見たときの体の面積を小さくすることが、重力の負荷から逃れるためのポイントなのです。
2.全身のパワーを引き出す「ファイティングポーズ」
「火事場の馬鹿力」とはよくいいますが、人間の体というのは、本来、自分が想像しているよりもすごい力を生み出せるようにできています。しかし、私たちは日常生活において、手を動かすときは手だけに頼り、足を動かすときは足だけに頼りがちです。つまり、全身の力ではなく、パーツパーツの力しか使っていないのです。その習慣が筋肉に過度な負担をかけて、疲労を生み出す原因になります。
全身の力を使うための基本は、何かをするときに「ファイティングポーズ」をとって行なうことです。ボクシングのように足を前後に開いて半身になり、ひざを伸縮させて全身の力を使うと、肉体的疲労感をかなり軽減できるのです。
これらの基本を抑えれば、あらゆる場面でパワーを浪費せず、肉体への負担を軽減することができます。
片足重心は疲労倍増⁉︎
片足を横に出して、もう一方の足に体重をかけて立つ、片足重心の立ち方。駅やバス停で待っているとき、本屋で立ち読みしているとき、オフィスで立ち話しているときなどに、こうした立ち方をしている人は多いのではないでしょうか。
この動作を解析すると、「重力の負担はまったく減っておらず、むしろ疲労がたまりやすい姿勢です。また、いつも同じ足に体重をかけていると、骨盤にゆがみが生じ、体に左右差が生まれてしまいます。すると、“立つ”だけでなく、あらゆる日常動作がアンバランスになり、疲れが残る原因にもなります」と夏嶋さん。
疲労を回避するため、体の重心を定期的に動かすようにすること。その際は、この立ち姿勢のように両足を左右に開くのではなく、足を前後に開くようにするといいそうです。
「前後に開いた前足に重心を置き、うしろ足に重心を置く、と交互にくり返していると、立つのがとてもラクになります。バレエダンサーの基本姿勢にも足を前後に開く立ち方があります。足を前後に開いて立つと、左右に広げるのに比べて、体の揺れが目立ちにくいため、公的なシーンでも活用できるでしょう」
立っているだけ、座っているだけで疲れた、というのはよくありますが、それには間違った体の使い方が原因だったようです。体の使い方を見直して、疲労をためないカラダを目指したいですね。
次回は、疲れない歩き方のポイントをお伝えします!
参考書籍
『疲れないカラダ大図鑑』(アスコム)
文/庄司真紀