クローン病は、腸の粘膜に炎症が起きる炎症性腸疾患のひとつ。原因がわかっていない難病ですが、腸内細菌の関与を示す研究結果が出るなど研究も進んでいます。そんななか、太っているとクローン病になるリスクが高くなるという報告がありました。腸の不調に悩んでいる人などにとっては参考になるかもしれません。
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太ると炎症を助長する物質が増える?
これまでの研究から肥満と体の炎症反応との関係が問題として見なされるようになっています。太ってしまうことで脂肪細胞が肥大化し、体内の炎症を助長する物質がつくられるようになったり、腸内の炎症を示す物質が増えたりすることなどがわかっています。炎症反応とは腫れや赤み、痛みなどを引き起こす体の反応のことで、さまざまな病気と関連していることが明らかになっています。
しかし一方で腸の炎症にはとても多くの要素が関係するため、過去の研究では肥満とクローン病や潰瘍性大腸炎との関連性については謎も残されています。
今回、英国、米国、欧州の国際的な研究グループは、肥満やライフスタイルに関して詳細でたしかなデータがある5つの追跡調査をまとめて分析し、肥満とクローン病および潰瘍性大腸炎との関係を調べてみました。肥満はBMIとウエストとヒップの比で割り出し、カロリーや食物繊維の摂取量、運動量、喫煙などの要素についてもアンケートのデータから算出しました。
合計で9か国60万人以上(18〜98歳、女性71%)が平均16年追跡され、クローン病が563件、潰瘍性腸疾患が1047件発生していました。
成人初期の肥満が特に危険
ここから判明したのは、太っていると(BMI 30以上)、ふつうのBMI(18.5〜25未満)の人に比べて、クローン病になるリスクが34%高くなることです。BMIの数値が5増えるごとに、クローン病になるリスクは16%ずつ増加し、特に成人初期の人(18〜20歳)では、BMIが5増えるごとに22%ずつ増加しました。
一方で同じ炎症性腸疾患の潰瘍性大腸炎については、肥満(BMI)との関連性は見られませんでした。これは、カロリーや食物繊維の摂取量、運動量、喫煙などの要素を含めて分析した結果です。
研究グループによると、アンケートの回数が少なかったり参加者が白人だったり研究にも限界があるものの「肥満は免疫系や腸壁の浸透性、腸内細菌などに影響を与えクローン病の発症に寄与しているのでは」と指摘。
特に成人初期の肥満については、過去の研究でも子ども時代(8〜13歳)の肥満が30歳以前のクローン病発症リスクに関連することが示されていると説明します。こうした腸の健康からもダイエットの大切さを意識するとよさそうです。
<参考文献>
Chan SSM, Chen Y, Casey K, Olen O, Ludvigsson JF, Carbonnel F, Oldenburg B, Gunter MJ, Tjønneland A, Grip O; DEFINe-IBD Investigators, Lochhead P, Chan AT, Wolk A, Khalili H. Obesity is Associated With Increased Risk of Crohn’s disease, but not Ulcerative Colitis: A Pooled Analysis of Five Prospective Cohort Studies. Clin Gastroenterol Hepatol. 2021 Jul 7:S1542-3565(21)00720-5. doi: 10.1016/j.cgh.2021.06.049. Epub ahead of print. PMID: 34242756.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34242756/