ナッツ類の健康パワーに注目が集まる昨今ですが、このたび、がんの人がピーナッツを食べ過ぎると、転移のリスクが高くなるという報告がありました。ふつうに食べている分には心配するほどのことはないそうですが、ピーナッツにはがん細胞の転移を促進するように働く可能性のある成分が含まれているといいます。
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ピーナッツが病気に影響?
近年、健康への高い効果が注目されているナッツ類は国内外で大人気。毎日、口にしている人も多いかもしれません。しかし今回の研究では、がんの進行との関係に着目しており、代表的なナッツであるピーナッツのある成分が影響する可能性を指摘しています。それはピーナッツ・アグルチニン(PNA)と呼ばれるタンパク質です。
というのも、今回の報告を行った英国リバプール大学の研究グループは以前、このPNAががん細胞の増加や体内での拡散を助ける可能性を報告していました。まずPNAが体内を循環している血液中のがん細胞に作用するという発見。さらに、がん細胞が血管の壁に付着しやすくなったり、細胞同士が結合しやすくなったりする変化を起こし、がん細胞を増やす可能性も突き止めていました。
こうしたことから、以前の研究において、がんの人がピーナッツを日常的に食べるとよくない影響があるのではないかと予測していたのです。PNAはピーナッツの重量のうち最大で0.15%を占め、加熱調理や消化で分解されにくく、半分ほどがピーナッツを食べたあとすぐに血液中に現れます。血流にのって体のさまざまな場所に影響する可能性があると考えられていたのです
そこで今回PNAががんの転移においてどのような役割を果たしているのかをさらに詳しく分析しています。
血管の壁に働きかける
分析の結果、判明したのは、PNAが血液中で血管の壁の細胞に働きかけ、がんの転移をうながしてしまう可能性があるということでした。
今回、明らかになったのは、PNAの影響によって「サイトカイン」と呼ばれる物質が作られ、血管の壁に働きかけて、細胞表面がくっつきやすい状態になっていたということです。研究グループが過去の研究で確認したように、こうした変化によってがん細胞が引きつけられて転移しやすくなる可能性があるといいます。
そのうえで研究グループは、がんの人が頻繁にピーナッツを食べると転移のリスクが高くなる可能性があると注意をうながしています。
もっともピーナッツを食べても、がんによる死亡などに影響が見られないといった報告もあり、以前の研究でも、血液中のPNAが大きく増えたのは、大量の(250 g)ピーナッツを食べた直後1時間余りの一過性の現象だったと報告されたことがあります。ですから「ふつうに」食べてPNAが少し増える分には害がない可能性は十分にあると、研究グループは説明しています。
まだわからない点が多いものの、何でも過度に食べるのはよくないことも考え合わせると、がんを患っている場合はピーナッツの食べ過ぎには気をつけてよいのかもしれません。
<参考文献>
Frequent consumption of peanuts by cancer patients may increase risk of cancer spread
https://news.liverpool.ac.uk/2021/08/04/frequent-consumption-of-peanuts-by-cancer-patients-may-increase-risk-of-cancer-spread/
Wang W, Sindrewicz-Goral P, Chen C, Duckworth CA, Pritchard DM, Rhodes JM, Yu LG. Appearance of peanut agglutinin in the blood circulation after peanut ingestion promotes endothelial secretion of metastasis-promoting cytokines. Carcinogenesis. 2021 Jul 5:bgab059. doi: 10.1093/carcin/bgab059. Epub ahead of print. PMID: 34223877.
https://academic.oup.com/carcin/advance-article-abstract/doi/10.1093/carcin/bgab059/6315265
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34223877/