空気が冷え始め、秋の台風シーズンがやってきました。台風などで気圧が変化すると、不調を感じる人も少なくないはず。ツムラが10代〜40代の女性を対象に行った調査によると、女性は男性よりも気候の変化が原因で不調を感じることが多いことがわかっています。また、PMS 症状(月経前症候群)がある女性の3人に1人は天候の変化で症状の悪化を感じており、とくに症状が重い女性ほど症状の悪化を感じているようです。頭痛や眠気、イライラ、不安感など、毎月訪れるPMSの症状は決して軽視できない問題。くわしい調査結果と、産婦人科医の内山心美先生からのアドバイスを紹介します。
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女性は男性よりも不調を感じやすい!
10代〜40代の男女5,000人を対象に、どんなときに体の不調を感じるかを聞いたところ、女性は「寝不足のとき」(60.4%)、 「ストレスやプレッシャーを感じる時」(52.9%)、「生理前」 (48.3%)、「天候が変化するとき」(40.7%)など、日常生活のさまざまなシーンで不調を感じています。
一方男性は、「寝不足のとき」(47.7%)や「ストレスやプレッシャーを感じるとき」(45.0%)に不調を感じるものの、4人に1人は「日常生活で不調を感じることはない」(23.6%)と答えており、女性は男性に比べて不調を感じやすいことがわかります。
また、女性の半数は「生理前」に、約4割は台風などによる低気圧・雨・梅雨時期・季節の変わり目など「天候が変化」する際に不調を感じています。「天候の変化」による不調は、女性の方が男性に比べて 20ポイントもスコアが高く、女性に多いと言えるでしょう。
また、女性たちが感じている生理前の不調は、若い世代では「肌あれ・にきび」(10代30.8%、20代30.5%)や「過食」(10代30.8%)などの身体的な不調が多いのに対して、30代以降は「焦燥感・イライラ感」(30代30.9%、40代24.3%)や「不機嫌」(30代25.4%、40代 21.2%)など、精神的な不調が上位を占めていました。
3人に1人が天候の変化でPMSの症状が悪化すると回答
ここからは、生理前に不調が生じる10代〜40代の女性800人を対象に行ったPMSについての調査結果を紹介します。
自身のPMSの程度について聞くと、約2人に1 人が「PMSが重い」と答えています。症状がひどくなるシーンは「寝不足のとき」 (51.1%)や「ストレスやプレッシャーを感じるとき」 (51.0%)が多く、前述の「不調を感じるシーン」と同じです。次いで多いのは「天候が変化するとき」 (35.1%)。 生理前に不調が生じる女性の3人に1人は気圧の変化で症状がひどくなると自覚しており、とくにPMSが重い女性については半数近くが、天候が変化すると症状がひどくなると回答しています。
また、天候に関係なく、PMSの症状がある期間は6割以上が「心身ともに疲れ果てている」状態。PMSの症状が重い女性では約9割もの人が心身ともに疲れ果てた状態になっていることがわかりました。秋の台風シーズンは、天候の変化が多くなるため、生理前に不調を生じやすい女性にとって何らかの対処が必要であることがわかります。
仕事や学校を、休みたくても休めない
PMSで学校や仕事を休んだ経験について聞くと、「休んだことがある」のは17.6%と少数派。約8割は休んだことはありませんが、約半数は「本当は休みたかった」とムリをしてガマンしていることがわかりました。
また、「PMSでも会社や学校を休むことはできない」 (69.6%)と、休むことに強い抵抗を感じている人がほとんど。背景には職場の環境があるようで、約8割が「PMSについて学校や職場での理解がない」と感じています。
PMSへの対処法を聞く質問では「早めに就寝する」(50.0%)、「家で静かに過ごす」 (43.4%)、「ひたすらガマンする」(43.3%)が上位を占め、積極的に治療するよりも、なんとかやり過ごそうとしていることがわかる結果に。
また、PMSの症状があるにもかかわらず、63.9%は「PMSの対処法や治療法を知らない」と回答。PMSに伴う症状での婦人科受診については、約9割が「受診したことはない」と答えました。
受診しない理由を聞くと、約半数が「病院へ行くほどの症状ではないと思う」、3割強が「症状が治まると受診するほどのことではないと思う」と答え、PMSは病院に行くほどの病気ではないという意識が強いことがわかります。また、約8割が「PMSは日頃からの体調管理も大切だと思う」と回答しつつも、約3割は「一時的なことだと思えばガマンできる」と答えています。
婦人科に行った人は心身の状態が改善
PMSの症状で婦人科を受診している女性に、受診してよかったと思うことを聞くと「症状がラクになった」 (53.2%)、「悩みが軽くなった」(35.1%)、「ガマンする以外の選択肢を持てた」(23.4%)、「理解することができ不安感が軽くなった」(22.1%)など、肉体的なつらさの緩和に加え、気持ちも前向きになったことがわかります。 最後に、生理前に不調のある人全員に、今後婦人科を受診したいかを聞くと、 44.4%が「受診したい」と答え、PMSの症状が重い女性では60.0%と受診意向が高くなっています。また、受診経験がある女性は88.3%が「今後も受診したい」と答え、婦人科を受診することがPMS症状への対策に有用である、と実感していることがうかがえます。
<調査概要>
実施時期:2021年7月29日(木)~ 8月2日(月)
調査手法:インターネット調査
調査対象:
調査1=全国の10代※〜40代男女5,000人(人口構成比)
調査2=生理前に不調がある10代※〜40代の女性800人(年代別に200人ずつ)
※10代は15歳〜19歳が対象
産婦人科医に聞いたPMSへの対処法
今回の調査結果について、産婦人科医の内山心美先生の解説を見ていきましょう。
●年代別での不調の違いについて
「診療現場でも10〜20代では腹痛や頭痛などの症状に加えて、ニキビの訴えが多い印象です。思春期以降は性ホルモン(とくにアンドロゲン)の増加によりニキビの訴えは多くなります。また不規則な生活、偏った食生活にも陥りやすいことから過食が上位になっている可能性があります。
一方、30代〜40代は、10代〜20代に比べて子育て中の方も多く、仕事、家事、育児に追われてストレスが増え焦燥感、不機嫌(イライラ)が高まる傾向かと思います。コロナ禍が長期化していることで、自粛でのコミュニケーションの減少によるストレス、自宅にひきこもりがちとなり家族との摩擦が増えるなど、さまざまな要因もあり、 PMSで受診される方は増えている印象です」
●PMSの症状が悪化するのは、体内の水が停滞する「水毒(すいどく)」の状態かも
「女性は排卵に伴う月経周期によるホルモンの変動という内的要因に加え、生活環境や精神的・身体的ストレスといった外的要因があり、男性に比べて日常的に不調を感じやすいと考えられます。女性特有の不調のひとつであるPMSは、月経周期と密接に関連することから、性ホルモンの関与があることは異論がないとされていますが、今回の調査では、天候の変化でPMSの症状がひどくなる女性が3人に1人もいることがわかりました。気圧の変化により片頭痛が誘発されたり、雨続きにより水毒の状況となってPMSの症状が悪化したり、といった可能性が考えられます。水毒とは漢方医学的考えで、体内の水分代謝が悪くなり、体のいろいろな部位にとどまったり偏在したりすることで、むくみ、倦怠感、拍動性頭痛、頭重感、立ちくらみ、悪心嘔吐(おうと)などさまざまな症状を引き起こします」
●PMSの症状でつらいときは医師に相談を
「日本には“月経に関するトラブルはガマンするもの”と考えてしまう風潮が少なくありません。そのせいか、PMSの症状がある女性の6割が『対処法を知らない』と答え、婦人科を受診する女性は1割以下しかいません。恥ずかしいという気持ちがあるのかもしれませんが、PMSによるイライラや焦燥感が強くなると、家族や職場の人間関係にも摩擦が生じ、場合によっては退職や離別につながる恐れもあります。早めに婦人科などのお医者さんを受診することをおすすめします」
また、妊娠を希望される女性にとっても、PMSへの対処法は意識してほしいものです。
「プレコンセプションケア(Preconception Care)という言葉があります。これは、将来の妊娠を考えながら、本人とパートナーが自分たちの生活や健康に向き合うということで、WHOなど世界レベルでその重要性が叫ばれています。プレコンセプションケアで大切なのは、いかに自身のコンディションをベストな状態にするか、ということ。そのためにも、PMSの正しい理解と対処法を知ることが重要です。
受診するタイミングは、PMSの症状が出ている間に限らずいつでも大丈夫です。月経とそのときの症状を記録した『症状日記』をつけて持参いただくとよりスムーズです。診察内容は問診が基本で、必要に応じて経腟超音波断層法などの内診をする場合もあるので、月経中は避けたほうが無難かもしれません。内診に抵抗がある場合など、不安があれば医師やスタッフにご相談ください。
問診では、『症状日記』から月経周期との関係性を確認し、疾患への理解を深める『生活指導』や、漢方薬やピルなどを処方 する『薬物療法』が行われます。また、自分だけで悩まず、PMSについてパートナーを含めた家族に対し理解を求めサポートしてもらうよう、アドバイスも行いますので、まずは医師に相談するという選択肢をとってみることをおすすめします」
内山心美さん
のぞみ女性クリニック 院長 産婦人科医
昭和大学産婦人科学教室、各関連病院勤務、北里大学東洋医学研究所漢方研修生、昭和大学江東豊洲病院助教などを経て現職。「予防医学」「未病」の考えのもと、女性に関するさまざまな病気、トラブルを最小限にして笑顔で過ごしていただくことを願い、2020年9月に産婦人科、漢方内科の「のぞみ女性クリニック」を開業。日本産科婦人科学会 専門医 指導医、日本東洋医学会 漢方専門医、日本女性医学学会 女性ヘルスケア専門医、女性ヘルスケアアアドバイザー
●のぞみ女性クリニック 東京都墨田区業平1-20-2 Twill Narihira 1F
https://www.nozomi-lc.com
文/MFC