膣のなかは通常は乳酸菌が多い状態になっています。健康な状態を守るため、また細菌性膣炎などの治療を補助するために、乳酸菌を使った膣内環境の改善が世界中で注目されています。実際に女性の膣から採取した乳酸菌を調べ、高機能の乳酸菌を取り出す研究も報告されています。腸活ならぬ膣活の動きが広がりを見せてくるかもしれません。
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57の乳酸菌を詳しく分析
膣のなかで優勢な乳酸菌はラクトバチルス属という仲間。この菌属にはカゼイ菌やガセリ菌など200種類以上もの「菌種」が含まれ、それぞれの菌種はさらに特定の「菌株」に細かく分類されています。最近では、ひとつの菌株にこだわったヨーグルト製品なども見られるように、菌株ごとに機能や性質に違いがあるそうです。
今回、南アフリカ・ケープタウン大学などの研究グループは、南アフリカの若い女性から膣内ラクトバチルス菌の菌株57株を採取。膣内環境を保つうえで効果的な乳酸菌を探る研究を進めました。
乳酸菌の「優等生」を見つけ出そうというプロジェクトです。酸性に傾いている膣環境に適応するか、病原菌を抑制できるか、細菌性膣炎などの治療に使われる抗生物質に耐えられるかなどの点から菌を選抜します。従来のプロバイオティクス(人間に有益に働く菌など)として使用されている乳酸菌とも比べながら検証しました。
現在使われている菌より高機能
一連の研究で確認されたのが、女性の膣から採取したラクトバチルス菌株のなかに膣内環境の改善に役立ちそうな高機能乳酸菌が存在しそうだということ。検証の結果からは、現在プロバイオティクスに使われている菌株より機能性にすぐれていると考えられたそう。なかでも最もよい性能の5つの菌株が特定しており、安全性が高いと判断されたことから、今後、膣内環境改善のための実用化に向けた取り組みをしていくといいます。
さまざまなラクトバチルス菌株を含む製品が開発されれば、再発率の高い細菌性膣炎の治療効果も上がる可能性があると研究グループは指摘しています。今後、新しい乳酸菌を使ったプロバイオティクスの試験も進み、日本にも影響が及んでくると、今後は国内での膣活の動きが身近になってくるのかもしれません。
<参考文献>
Probiotics with top-performing Lactobacillus strains may improve vaginal health
https://www.sciencedaily.com/releases/2020/06/200604152114.htm
Happel AU, Kullin B, Gamieldien H, Wentzel N, Zauchenberger CZ, Jaspan HB, Dabee S, Barnabas SL, Jaumdally SZ, Dietrich J, Gray G, Bekker LG, Froissart R, Passmore JS. Exploring potential of vaginal Lactobacillus isolates from South African women for enhancing treatment for bacterial vaginosis. PLoS Pathog. 2020 Jun 4;16(6):e1008559. doi: 10.1371/journal.ppat.1008559. PMID: 32497109; PMCID: PMC7271994.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32497109/
https://journals.plos.org/plospathogens/article?id=10.1371/journal.ppat.1008559