口のなかの虫歯菌が食べものに含まれる糖分から酸をつくり出し、この酸によって歯が溶かされるのが「虫歯」。このたび歯(特にエナメル質の下にある “象牙質”)が酸によって溶かされるプロセスを、1mmの1万分の1という極小レベルで立体的に解き明かす研究が海外から報告されました。虫歯予防のヒントにもつながるようです。
Contents 目次
酸による歯へのダメージを調べた結果は…
虫歯の原因となる細菌が歯を“溶かす”というのは、歯からカルシウムやリンといったミネラル成分が溶け出すことをいいます。ふだんは唾液に含まれる「リン」や「カルシウム」が歯に戻って修復され、虫歯の進行を防いでくれます。これは「再石灰化」と呼ばれます。
こうした歯の再石灰化や唾液による酸の中和が間に合わないと虫歯が進んでしまいます。さらに虫歯だけでなく、食いしばりなどの強い力がかかってエナメル質に穴や裂け目ができる場合も、その下の象牙質が酸にさらされることになってきます。
今回、英国サリー大学とバーミンガム大学の研究グループは虫歯のできかたについて詳しく調べています。象牙質の内部構造を1mmの1万分の1レベルで3D画像にして虫歯のできかたを分析。象牙質を酸で処置しながら、6時間にわたり15分ごとにスキャンして、構造の変化を記録しました。
象牙質の細い管から溶けていく
ここからわかったのが、虫歯ができ始めるときの弱点といえそうな場所がどこであるかについて。実際に歯が溶け始めるのは、象牙質の内部に無数に存在している細い管からと見られました。象牙質には歯の外と内をつなぐような目に見えないくらいの多くの細い管が通っています(「象牙細管」と呼ばれます)。この細管に沿った周辺部分が細管と細管の間の部分よりも酸がミネラルを溶かすスピードが速いことがわかりました。
虫歯ができるときは細管が壊れていくように溶かされるようで、いかにダメージを受けないように予防をしていくかがポイントといえます。たとえば、酸味の強い食べものや飲みものを口にしたときには、酸の影響を減らすための食後の歯ブラシやうがいをはじめマウスケアを行うことが、あらためて肝心といえそうです。
<参考文献>
New technique helps researchers understand how acid damages teeth
https://www.surrey.ac.uk/news/new-technique-helps-researchers-understand-how-acid-damages-teeth
Leung N, Harper RA, Zhu B, Shelton RM, Landini G, Sui T. 4D microstructural changes in dentinal tubules during acid demineralisation. Dent Mater. 2021 Sep 18:S0109-5641(21)00246-3. doi: 10.1016/j.dental.2021.09.002. Epub ahead of print. PMID: 34548177.
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0109564121002463
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34548177/