いびきは単に「うるさい」とか「恥ずかしい」というだけのものではありません。睡眠中に気道がふさがって一時的に呼吸が止まってしまう“睡眠時無呼吸症候群”の兆候なのです。重症化すると生活習慣病やメンタルの不調にもつながるこの症状、妊娠中に見られると、出産後にメタボリック症候群や高血圧になるリスクが高くなるという報告がありました。
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妊娠中のいびきの背景に病気?
妊娠中は体やホルモンに大きな変化があるため、睡眠時無呼吸症候群やそれに伴う体内の酸素不足といった呼吸障害になりやすいと考えられています。そして、このような睡眠中の呼吸障害は、妊娠によって増加する体内の炎症や酸化ストレスを増幅しますから、妊娠高血圧や妊娠糖尿病などさまざまな病気のリスクが高くなり、高血圧や代謝障害につながる恐れがあります。また、出産から数年経っても体重が減らない場合などにやはり睡眠中の呼吸障害を発症するリスクが高くなるといいます。
そこで今回、米国の研究グループは、妊娠中および出産から数年後に睡眠中の呼吸障害(基本的には睡眠時無呼吸症候群)があると、高血圧か、糖尿病や脂質異常症を含むメタボリック症候群になりやすいかどうかを調べました。
分析したのは、初産の女性で妊娠と心臓や血管の健康との関連性を調べた研究の参加者から、妊娠中に睡眠時呼吸障害の検査を受けた約2000人と、そのなかでさらに出産から2〜7年後にも同じ検査を受けた約1200人のデータです。1時間の睡眠中に呼吸が止まるか浅くなる回数が5回以上、または血液中の酸素飽和度が3%以上低下する回数が5回以上の場合を睡眠時呼吸障害とみなしました。
出産後も持続するとさらにハイリスク
今回の研究で確認されたのが、いびきにつながる睡眠時無呼吸と、妊婦の病気のリスクとの間に関連があるということです。
妊娠中でも出産から2〜7年後でも、睡眠時呼吸障害があると、高血圧やメタボリック症候群になるリスクが高くなっていました。さらに睡眠時呼吸障害が出産から2〜7年後まで続いていた人は、呼吸障害がまったくなかった人に比べて高血圧になるリスクが3倍以上、メタボリック症候群になるリスクが2倍以上でした。
また、呼吸が止まる、または浅くなる回数よりも、血液中の酸素飽和度が低下した回数のほうが、高血圧およびメタボリック症候群との強い関連性が見られたため、リスクが高い人の選別には簡単に測定できる血中酸素飽和度が有用かもしれないと研究グループは指摘しています。そして、母親の長期的な健康のためには、妊娠中と出産後の睡眠時呼吸障害の検査や治療の役割を評価する必要があると結論づけています。いびきをかいてしまう人は気をつけておくとよさそうです。
<参考文献>
https://www.eurekalert.org/news-releases/942602
Facco FL, Redline S, Hunter SM, Zee PC, Grobman WA, Silver RM, Louis JM, Pien GW, Mercer B, Chung JH, Bairey Merz CN, Haas DM, Nhan-Chang CL, Simhan HN, Schubert FP, Parry S, Reddy U, Saade GR, Hoffman MK, Levine LD, Wapner RJ, Catov JM, Parker CB; NICHD NuMoM2b and NHLBI NuMoM2b Heart Health Study Networks. Sleep Disordered Breathing in Pregnancy and Post-Delivery: Associations with Cardiometabolic Health. Am J Respir Crit Care Med. 2022 Feb 11. doi: 10.1164/rccm.202104-0971OC. Epub ahead of print. PMID: 35144521.
https://www.thoracic.org/about/newsroom/press-releases/journal/2022/sdb-in-pregnancy.pdf
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35144521/