妊娠した女性の多くが経験するつわり。はっきりした原因はわかっておらず、いろいろな要素が影響するようです。消化器系の働きもそのひとつで、最近では腸内細菌の関与も報告されています。しかし、このたび、やはり腸の活動に大切な食物繊維について、多くとってもつわりを和らげる効果はなさそうという報告がありました。
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つわりと食事との関連を調査
食事はつわりに影響を与える可能性があり、つわりがある女性は、ない女性に比べて肉類の摂取量が少ないとか、炭水化物の摂取量が多いといった研究結果も出ているそう。そのほか血糖値の維持や腸の動きをよくするなど消化器系によい効果がある食物繊維も効果的ではないかという見方もあります。
そこで今回、フィンランドの研究グループは、食物繊維の摂取量がつわりに関連するかどうかについて調査しました。作用の違いがあるので食物繊維を水溶性(果物や野菜)と不溶性(主にシリアル)に分けて分析しています。同時に、肥満や便秘の解消に効果がありそうな運動、特別な食習慣、喫煙、飲酒などの要素についても、つわりに影響があるかを調べました。
対象としたのは妊娠した女性188人。食物繊維を含む食品(野菜や果物、シリアル、パンなど)の摂取量、便秘や胸焼けなどの症状、ライフスタイルについて、妊娠前と妊娠初期に分けて2回の質問調査を行いました。
かえってなりやすくなる?
この研究から判明したのは、食物繊維を多くとっても、つわりを防ぐことにはならず、かえってつわりになりやすくなりそうだということ。つわりのあった女性(91人)はなかった女性(97人)に比べて、妊娠前に不溶性の食物繊維と総食物繊維の摂取量が多くなっていました。さらに、妊娠初期にはどちらのグループも総食物繊維と水溶性食物繊維の摂取量が増加しました。太っている人と食物繊維の摂取量が少ない人は、つわりの頻度が少ないという関連性が見られました。
また、つわりがあったグループのほうが、妊娠前に全体的により健康的なライフスタイル(高強度の運動、飲酒・喫煙が少ない)だった傾向が見られ、運動はつわりに関してはあまり効果がないようでした。食物繊維は健康によい効果をもたらしますから、安易に減らすのは好ましくないと考えられます。今回の研究結果から考えると、もしかするとつわりは妊婦さんが健康的であることの証であるのかもしれません。
<参考文献>
Reijonen JK, Tihtonen KMH, Uotila JT, Vihtamäki T, Luukkaala TH. Dietary fibre intake and lifestyle characteristics in relation to nausea or vomiting during pregnancy-a questionnaire-based cohort study. J Obstet Gynaecol. 2022 Jan;42(1):35-42. doi: 10.1080/01443615.2021.1871886. Epub 2021 May 4. PMID: 33942705.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33942705/