腸内で作られるおならのなかには有毒なガスが含まれています。それは硫化水素。微量であれば体によい効果もありますが、多くなると大腸がんなどの病気に関連することが疑われています。一般的には動物性の食品をとると、硫化水素は増えがちだと考えられています。このたび海外研究によると、この困ったガスの出やすさは、個人の腸内環境に左右されると報告されました。腸活がカギを握るようです。
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1週間ずつ食事を変えて調査
硫化水素は卵が腐ったような独特のニオイをもち、黄色い硫黄が見られる温泉で多く発生することで一般的には知られているでしょう。これは濃度が高くなると健康を害するので有毒ガスになります。ですが、タウリンや緑黄色野菜をとると、腸内細菌によって分解されて微量に生成され、腸内の病原体や炎症を抑えたりする働きがあると考えられています。ただ、一方では大腸がんや大腸炎などの病気と関連しているのではないかとも長い間、疑われてきました。そもそもくさいおならの原因のひとつです。こうしたなか、食事、腸内細菌、実際の硫化水素の生成量という3つの要素の関連性が注目されています。
今回、米国ミネソタ大学の研究グループは、これら3つの要素の関連性を実際に人間の食生活と便の検査から分析しました。具体的には、動物性食品が多くて食物繊維が少ない(西洋型の)食事と植物性食品が多くて食物繊維が多い食事をそれぞれ1週間ずつとってもらい、便を採取して硫化水素の生成量を比較するとともに、細菌の構成を調べてみました。
大半は植物性主体の食事で改善
一連の研究で確認されたのが、おならの硫化水素を増やしてしまうのは動物性の食品だということと、さらに腸内環境によっても変化するということです。
具体的には、研究への参加者の大半では、動物性食品主体の食事に比べて植物性食品主体の食事をとったあとのほうが硫化水素の生成量は減りました。ですが、植物性食品主体の食事をとっても個人によっては硫化水素の生産量が減らずに増えていたのです。個人によって便のなかに確認された細菌の構成に違いがあり、その違いが硫化水素の生成量と食事内容との関係に関連していました。
全体的には、植物性食品が多い食事で食物繊維を定期的にとると腸の健康によいという一般的な認識を裏づける結果になったと研究グループは結論。ただ、硫化水素の生成と食事との関連性には、腸内細菌の構成が影響すると考えられるため、おならの“健康”にとっても腸活は重要といえるのかもしれません。
<参考文献>
Research Brief: diet type can increase potentially harmful gas in the gut
https://med.umn.edu/news-events/research-brief-diet-type-can-increase-potentially-harmful-gas-gut
Teigen L, Mathai PP, Lopez S, Matson M, Elkin B, Kozysa D, Kabage AJ, Hamilton M, Vaughn BP, Sadowsky MJ, Khoruts A. Differential hydrogen sulfide production by a human cohort in response to animal- and plant-based diet interventions. Clin Nutr. 2022 Apr 5;41(6):1153-1162. doi: 10.1016/j.clnu.2022.03.028. Epub ahead of print. PMID: 35500315.
https://www.clinicalnutritionjournal.com/article/S0261-5614(22)00111-X/fulltext
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35500315/