午前中いつまでたってもスイッチが入らず、ぼーっと過ごしてしまったり、夕方“ガス欠”になって疲れ果ててしまったり、リモートワークが多くなるなかで集中力の低下を感じている人が多いよう。集中力と大きくかかわるのが血糖値。今回は、最新の研究にもとづいた脳と血糖の関係について、脳科学者・西 剛志先生の著書『低GI食 脳にいい最強の食事術』からお伝えしていこうと思います。
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脳は小さな大食漢!
体のなかでエネルギーを多く消費する組織はどこだと思いますか?それは人間の脳。
「人間の脳の重さは体全体の質量の約2%しかないのにもかかわらず、体全体の20〜25%のエネルギーを消費しています。成長途中の子どもは脳のエネルギーの消費率が大きくなるため、5〜6歳の子どもの場合は、なんと約60%を使っているといいます。脳はとにかくもう休む間もないほど常に動いていて、ただ立っているだけでも、座っているだけでも、体を維持するために指令を出し続けているのです。脳には約1000億個もの神経細胞(ニューロン)がありますが、そのすべての細胞がエネルギーを消費しているのです」(西先生)
その小さな大食漢の脳を動かすエネルギーとなるのが、糖質です。脳がエネルギーとして直接利用できるものは炭水化物のなかの糖質のみ。何も食べずに仕事をすると、集中力が途切れてぼんやりしたり、やる気がでなかったり、イライラしたりしたことがあるのではないでしょうか。
記憶力には脳グリコーゲンが大切
私たちの脳は糖質を大量にとり込めるようになったことで進化したという理論が現在、世界的に注目されています。
「私たちが猿人類だった頃の脳はたった400g。ところが今から約180万年前から急激に脳の容量が巨大化して今ではその3倍の大きさになっています。これには、火を使って料理をするという“食の大革命”が理由のひとつだと考えられています。火を使うことで、かたくて食べられなかった穀物が食べられるようになり、人類の脳はブドウ糖の大量摂取というこれまでにない食の革命を経て、脳が大きく発達したといわれています」
脳のエネルギーとなる糖質。糖質から生まれる脳グリコーゲンは、記憶の中枢である海馬に存在し、記憶力の原料となっているといわれています。
「最新の研究では、糖質をある程度とらなければ、集中力だけでなく情報処理能力まで下がってしまったり、長期記憶から短期記憶まで影響を受けてしまったりするということもわかってきています」
血糖値スパイクに注意!
脳には糖質が大切ですが、それでは脳を十分に働かせるためには、単に糖質をたくさんとればよいのでしょうか。
「じつは糖質をたくさんとり過ぎると逆に“血糖値スパイク”という現象が起き、脳のエネルギー不足を引き起こしてしまいます。たくさん食べて血中に大量のブドウ糖が一気に流れ込むと、すい臓が“間に合わない!”と慌ててインスリンを大量に放出します。急上昇した血糖値が急激に下がることを血糖値スパイクといい、血糖値スパイクで血液中のブドウ糖が不足すると、脳もエネルギー不足を引き起こします」
糖質は少な過ぎても多過ぎても脳は十分に機能できません。脳のパフォーマンスをよい状態にするためには、血糖値スパイクを起こさないように糖質をとる必要があります。
「集中力を高め、仕事や生活の効率を高めるためにどうすればいいか、それが低GI食です。食材のGI値が低いほど、食後の血糖値の上昇がゆるやかになります。最新の研究では、低GI食をとることが継続的な集中力や記憶力のアップにつながることまでわかってきました」
これまで、健康やダイエットの面で注目されてきた低GI食ですが、脳へのメリットもわかってきました。また、集中力や記憶力だけでなく、メンタルへも働きかけ、心の健康にも役立つことがわかっているそうです。次回は実践的な低GI食についてご紹介しましょう。
参考書籍/
『脳科学者が教える集中力と記憶力を上げる 低GI食 脳にいい最強の食事術』(アスコム)
文/庄司真紀