気候変動などを受け異常気象が世界中で報じられています。そんななか、暑さが人体に与える影響、特に熱中症に関心が集まっています。海外研究によると、熱中症にかかると、症状が軽くても重くてものちにメンタルを病んでしまうリスクが高くなるかもしれないと指摘されています。熱中症の意外な問題といえそうです。
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台湾の3万人以上を追跡して比較
熱中症は暑さの影響によって体に障害がもたらされる病気です。いろいろな器官に長期にわたって影響する可能性があります。たとえば、それは心臓や血管、腎臓の病気のほか、神経系の問題です。神経系の問題が起きるとそれは精神障害に関連する可能性もあります。今回、台湾の研究グループは、熱中症が精神障害の原因になるかどうかを調べてみました。
台湾の国民健康保険記録から、2000〜2015年に熱中症と診断されたおよそ3100人と、その人たちの年齢と性別の条件を合わせた熱中症にならなかったおよそ3万1000人をピックアップ。精神障害を発症するリスクを比較しました。追跡期間16年の間に熱中症になったグループではおよそ500人、ならなかったグループではおよそ3600人が何らかの精神障害を発症しました。
4倍近いリスクの増加
このような追跡調査からわかったのが、熱中症になった人は、ならなかった人に比べて精神障害を発症するリスクが4倍近く高いということです。熱中症の程度や環境の違いで分けても、その条件にかかわらずリスクは増えていました。また、たまたまメンタルを病んでいた人が熱中症になっただけである可能性も考慮して、熱中症になった直後の5年間を除いて分析しても、一部の精神障害(PTSD、急性ストレス障害、統合失調症様障害)以外、リスク増加が確認されました。
こうした関連が確認されたことから、熱中症は精神障害のリスク増加に影響する可能性があると研究グループは結論づけています。その原因としては、熱中症による脳神経系の損傷が精神障害につながるのではないかと指摘。さらに研究する必要があるものの、熱中症には後遺症の観点からも注意が必要といえそうです。
<参考文献>
Li FL, Chien WC, Chung CH, Lai CY, Tzeng NS. Real-World Evidence for the Association between Heat-Related Illness and the Risk of Psychiatric Disorders in Taiwan. Int J Environ Res Public Health. 2022 Jul 1;19(13):8087. doi: 10.3390/ijerph19138087. PMID: 35805746; PMCID: PMC9265553.
https://www.mdpi.com/1660-4601/19/13/8087/htm