暑さや湿気の多さから起こる熱中症はアスリートにとっても大きな問題になります。海外研究によると、体感温度が上がるほど熱中症になるアスリートの割合が増えるそうです。特にマラソンなどの長時間の競技は短時間の競技と比べて熱中症のリスクが48倍に上るとわかりました。増加の程度は一般に考えられているよりも大きいのかもしれません。
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どれくらい熱中症につながる?
夏になると気をつけたいのが熱中症。熱中症でも不快感やめまいといった軽い症状で治まればまだよいですが、体がけいれんしたり意識障害を起こしたり重い症状に至ると一大事。炎天下で活動することが多いアスリートにとっては知らないでは済まされない問題です。たとえば、国際的に活躍するトップアスリートのおよそ半数が、暑さに関連した何らかの体調不良を経験しているというデータもあるそう。そうした低調不良の多くは熱中症と関連していると見られます。特に屋外のランニング競技は、体調不良の発生率が特に高いといいます。
今回、ドイツ、フランスなどの国際研究グループは、2009〜2018年に開催された7つの屋外競技会のデータをもとに温度と熱中症との関連性を調べました。温度については、気温も含む気象測定データから算出される体感温度を指標(UTCIと呼ばれる)にしました。競技は短距離走、マラソン、競歩などに分類して比べています。
マラソンは短距離走の45倍
こうしてわかったのは、長時間にわたるランニングやウオーキングをしている人の熱中症の危険度が特に高いということです。当然のことながら温度が上がるほどアスリートの熱中症は増えます。平均すると選手1000人当たり11.7件の熱中症が発生。体感温度が25度から35度へと10度上がると熱中症は倍増しました。なかでも熱中症が多いのはマラソンと競歩で、短時間の競技に比べると熱中症になるリスクは48倍にもはね上がると判明。この結果に男女差はありませんでした。
競技を高温高湿の環境で行うときには、マラソンと競歩のような長時間にわたる競技ほど熱中症対策は大切になるよう。スポーツ熱中症の対策を考えるときには、このような高い発生率を覚えておいたほうが安全かもしれません。
<参考文献>
Hollander K, Klöwer M, Richardson A, Navarro L, Racinais S, Scheer V, Murray A, Branco P, Timpka T, Junge A, Edouard P. Apparent temperature and heat-related illnesses during international athletic championships: A prospective cohort study. Scand J Med Sci Sports. 2021 Nov;31(11):2092-2102. doi: 10.1111/sms.14029. Epub 2021 Aug 9. PMID: 34333808.