食習慣から女性ホルモンを整え、PMS(月経前症候群)や生理痛、生理不順など、女性ならではの不調や悩みを解決する「食べるフェムケア」。そのポイントとなるのが、質のいい油を食事にプラスすることです。そこで今回は、良質な油の選び方やとり入れ方などを、管理栄養士の伊達友美に教えてもらいます。
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女性ホルモンのモトになる材料は脂質
管理栄養士の伊達友美さんが提案する「食べるフェムケア」。前回の記事「まずは『油』に注目! 女性ホルモンに関わる不調や悩みを解決したいなら、食生活から変えていこう」では質のいい油をとることの大切さをお伝えしました。では、女性ホルモンを整えるために、なぜ質のいい油をとる必要があるのでしょう?
「女性ホルモンや男性ホルモンの性ホルモンは、ステロイドホルモンと呼ばれる種類のホルモンで、その原材料となるのが脂質です。質のいい油を摂って、ステロイドホルモンを作るための上質な材料を十分に体にとり入れることで、女性ホルモンは整ってくるのです」(伊達さん)
また、女性ホルモンを整えるためには、その分泌をサポートする刺激ホルモン(ペプチドホルモン)も重要です。ペプチドホルモンは、肉・魚・卵・大豆などに多く含まれるたんぱく質を原材料に作られます。ですから、質のいい油だけでなくたんぱく質を意識的にとると、女性ホルモンを作り、分泌を促すという自然な流れで活性化されるのです。
「食べるフェムケア」でとりたい質のいい油とは?
「では、質のいい油とは、どのような油をさすのか、説明しますね。まず油には、体内で作ることができるものと、作ることができないものがあります。体内で作ることができる油は、バター、肉の脂身、ココナッツオイルなどに多く含まれる“飽和脂肪酸”や、オリーブオイルなどに多い“一価不飽和脂肪酸”で、これらは必ず口からとらなくてはいけないというものではありません。一方、体内で作ることができない油が“多価不飽和脂肪酸。これは口からとらないと不足してしまうため、できるだけ毎日とる必要があります」
多価不飽和脂肪酸には「オメガ6系脂肪酸:n-6系多価不飽和脂肪酸」と「オメガ3系脂肪酸:n-3系多価不飽和脂肪酸」の2種類があります。「オメガ6系脂肪酸」は、大豆油やコーン油、一般的なごま油などに多く含まれています。熱に強い性質があり、調理用として使われることが多く日常的にとりやすい油ですが、とりすぎると炎症を促し、ニキビやアレルギー、生理痛などの原因になることも。
「オメガ3系脂肪酸」は、えごま油、アマニ油、しそ油などに多く含まれ、体の中でDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)に変わります。健康・美容効果にすぐれ、女性ホルモンの調整や皮膚・粘膜の調整、炎症の抑制、血液をサラサラにする作用があります。
「女性ホルモンを整える『食べるフェムケア』では、オメガ3系脂肪酸を意識的にとり入れるのが重要。つまり、えごま油、アマニ油、しそ油が質のいい油と言えますね」
食事に油をプラスし、女性ホルモンに振り回されない体に!
「オメガ3系脂肪酸はえごま油、アマニ油、しそ油などのオイルのほか、クルミや魚介類にも含まれますが、食べるフェムケアでは、体への吸収率が高いオイルでとるのがおすすめです。ただ、オメガ3系脂肪酸は、酸化しやすいのが弱点。空気や光にふれると酸化して質の悪い脂肪酸に変わってしまうため、ボトルタイプのものは開封後は冷蔵庫で保管し、1か月半を目安に使い切るのがポイントです。未開封のものは冷凍保存が適しています。また、オイルは加熱すると一気に酸化してしまうので、加熱調理には使わないでください」
オメガ3系脂肪酸の1日の必要摂取量は約2g。えごま油などのオイルは小さじ1杯が適量ですが、女性ホルモンに関わる不調がある場合は、はじめは小さじ2杯とり、体調が整ってきたら小さじ1杯に。また、オイルをそのまま飲むのはNG。基本的にオイルは調味料なので、サラダのドレッシングにプラスしたり、野菜ジュースやスムージーに入れたり、納豆や漬物にかけるなど食材と一緒にとることで、消化・吸収がスムーズになります。温かいスープやみそ汁に使う場合は、半分ぐらいまで飲み、冷めてから加えるとよいでしょう。
「えごま油などのオイルは、毎日摂取することが理想ですが、オメガ3系脂肪酸は体内に蓄えることができるので、1日とり忘れたとしても大丈夫。あまり神経質になりすぎずに、質のいい油を食事にプラスすることで、女性ホルモンが徐々に整い、生理前や生理中の体調の変化や気分の乱れも落ち着いてくるでしょう」
次回は、女性ホルモンに悪影響を及ぼす、栄養面の間違いについて紹介します。
取材・文/野口美奈子
【参考書籍】『女性の不調は「油+(プラス)」でよくなる ~女性ホルモンに振り回されないための「食べる」フェムケア~』