乳がんをはじめとして若い世代でも注意しておきたいがんは少なくありません。海外研究によると、比較的に若い年代といえる50歳を下回る年代のがんが増えており、その実態と原因が報告されました。このような若くして起こるがん―早期発症型のがん増加の背景には「世代効果」と呼ばれる特徴があるといいます。
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増加傾向にある早期発症型
WHO(世界保健機関)傘下の国際がん研究機関(IARC)によると、50歳未満に発症する「早期(若年)発症型のがん」が増加傾向にあり問題になっているそう。この国際機関がまとめた分析「グローバル・キャンサー・オブザバトリー(Global Cancer Observatory)」によると、乳がんや大腸がんなどのがんが若い年代でも増えているようです。背景には検診の普及による早期発見が増えていることがあるようですが、増加の原因はまだわからない部分もあるようです。これまでの研究から、がんにつながる生活習慣や環境の問題の影響は、赤ちゃんの頃から始まっていると考えられており、赤ちゃんの頃にさかのぼって、がんと関連する問題について究明する必要性が高まっているようです。
今回、米国ハーバード大学など国際的な研究グループは、50歳未満での発症が増えている14種のがん(乳房、子宮内膜、消化器系、腎臓、肝臓、膵臓、骨髄、前立腺、頭部など)について、2000〜2012年にわたって発症率やリスクにつながる要因、早期発症(50歳未満)と後期発症(50歳以降)のがんの違いなどについて調べた過去の研究を集めて、検討してみました。
リスクにつながる要因が増加
こうした分析から、「世代効果」と呼べるような変化が存在している可能性が浮かび上がりました。世代効果は世代によってさらされるリスク要因に変化があったことを指しています。
研究グループが、生まれた年によって10年ごとにグループ分けして比べたところ、あとの世代、たとえば1960年代生まれの人は50年代生まれの人よりも、がんのリスクが高くなっていることを発見したのです。20世紀の中頃から程度の差こそあれ世界中で特に若い世代を中心にリスク要因にさらされる機会が増えていることで、がんの増加につながっている可能性があるようです。
ここで挙げられたリスク要因は、よく加工された食品、西洋型の食事、肥満や糖尿病、アルコール、喫煙、睡眠不足、座りがちな生活などです。特に子どもの睡眠時間はこの数十年で大きく減っているほか、食生活の変化に伴う腸内細菌の変化も関係している可能性があるそうです。こういった検討から、早期発症がん増加の背景には、ライフスタイルの変化とともに、リスク要因に幼少期からさらされるようになったことが影響している可能性があると、研究グループは結論づけています。
また、研究グループはがんにつながるリスク要因を突き止めて予防できるようにすべく、もっと詳しい追跡調査が求められると指摘しています。何が大きなリスク要因かはまだ見えてきませんが、健康に悪そうな食事や生活習慣についての情報は次々と出ていますから、最新の情報を参考にしながら、リスクを遠ざけるのが賢明なのでしょう。
<参考文献>
Cancers in Adults Under 50 on the Rise Globally
https://www.brighamandwomens.org/about-bwh/newsroom/press-releases-detail?id=4250
Ugai T, Sasamoto N, Lee HY, Ando M, Song M, Tamimi RM, Kawachi I, Campbell PT, Giovannucci EL, Weiderpass E, Rebbeck TR, Ogino S. Is early-onset cancer an emerging global epidemic? Current evidence and future implications. Nat Rev Clin Oncol. 2022 Oct;19(10):656-673. doi: 10.1038/s41571-022-00672-8. Epub 2022 Sep 6. PMID: 36068272; PMCID: PMC9509459.
https://www.nature.com/articles/s41571-022-00672-8