毎日の食事から女性ホルモンを整える「食べるフェムケア」。ポイントは、質のいい油を食事にプラスすることですが、女性が陥りがちな栄養面の間違いも気になるところ。そこで、「食べるフェムケア」を提案する管理栄養士の伊達友美さんに、女性ホルモンに悪影響を及ぼす食習慣を教えてもらいます。
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カロリーは太らせるものではなく、“体を温め代謝を上げてくれる”もの
栄養を考えるときに間違えやすいのが、「カロリーの認識」と伊達さんは指摘します。
「やせたい、太りたくないと思ったときに『カロリーを抑えよう!』と思う人が多いのではないでしょうか。私もダイエットを頑張っていた頃は、とにかくやせたくてカロリーばかり気にして、食事をすごく控えていました。でも、カロリーは、太る・やせるの目安となる数値ではなく熱量(エネルギー量)を表す単位です。高カロリーは体を温める力が大きいもの、低カロリーは体を温める力が弱いもの。『高カロリーは太る』と思っていた人は『高カロリーは体を温める』と認識を上書きしてくださいね」(伊達さん)
女性に多い冷えも、低カロリーな食事が原因のひとつに。また、体が冷えると代謝が低下し、脂肪をため込みやすくなるため、太りやすく、やせにくくなる悪循環を招くことにもなります。
「熱量(エネルギー)を作るのは、人間の体に欠かせない五大栄養素のうち、たんぱく質・脂質・糖質の3つ。前回の記事「女性ホルモンは『油』でできている! 良質な油をとり入れて、生理前・生理中の不調を解消しよう」でお伝えしたように、脂質は女性ホルモンのモトでもあります。そのため、カロリーを減らそうとして脂質が不足すると、冷えだけでなく、PMS(月経前症候群)や生理痛、生理不順など、女性ホルモン系のトラブルの原因にもなるのです。女性ホルモンを整えるには、1脂質、2たんぱく質、3糖質の順に、優先的に栄養をとるのが効果的です」
脂質は、女性ホルモンに加え、脳や神経のモトになり、また心臓を動かすエネルギーにもなります。たんぱく質は、女性ホルモンの分泌を刺激するホルモン・ペプチドホルモンのモトになり、女性ホルモンを活性化させる働きがあります。糖質は、燃えやすく速やかにエネルギーになるため、冷え予防に欠かせない栄養素。そして、脳を働かせるエネルギー源でもあり、自律神経の調整に役立ちます。自律神経は女性ホルモンに影響するため、自律神経のバランスが整うと、女性ホルモンも整ってきます。
野菜をたくさん食べ、油・肉・米を控えるのはNG
栄養を考えるときに勘違いしやすい、もうひとつのポイントが「野菜をたくさん食べる」こと。
「健康志向の高い人ほど、野菜をたくさん食べる傾向がありますが、1日にとりたい野菜の目安量は350g。ちょうど両手のひらに乗るぐらいの量です。必要以上に野菜をとり、脂質・たんぱく質・糖質を控えるのは、冷えや便秘、婦人科系のトラブルの原因になります。自分の体が必要だといっているのにエネルギーをあえてとらないのは、自分に対するパワハラ。野菜中心の食事をしていて、生理前や生理中に不調がある場合は、まずは脂質・たんぱく質・糖質をしっかりとり、その上で野菜をとるようにしましょう。スーパーに買い物に行くときも、肉売り場か魚売り場に先に行き、メインの食材を選んでから、野菜売り場に行くといいですよ。野菜をたくさんカゴに入れてから肉売り場や魚売り場に行くと、すでにカゴが重たくなっていて、肉や魚をゆっくり選ぼうという気になれませんから」
前述の通り、女性ホルモンのバランスを整える栄養素は五大栄養素のうち、たんぱく質・脂質・糖質で、これらをうまく働かせるサポート役がビタミンとミネラル、そして6番目に必要な栄養素の食物繊維です。それぞれ、とり方を説明していきます。
「ビタミンをとるときは、脂質・たんぱく質・糖質の代謝に必要な食材をとるのが効率的。脂質の代謝にはビタミンB2が必要で、ウナギ、カレイ、サバ、レバーなどに多く含まれています。たんぱく質の代謝にはビタミンB6が必要で、アジ、サケ、カツオなどから補給できます。糖質の代謝には、ビタミンB1が必要です。ビタミンB1は豚肉、ウナギ、きな粉、栗、そばなどに多く含まれています。意外に野菜にはあまり含まれていません」
「ミネラルをとるときは、女性が不足しやすい鉄分とカルシウムを意識的にとるのがポイント。鉄分は、牛や豚の赤身肉やカツオなどの赤身の魚に含まれる動物性のヘム鉄と、ほうれん草、ごま、のりなどに含まれる植物性の非ヘム鉄を一緒にとるのが理想ですね。カルシウムは、煮干しや干しエビ、豆腐、豆乳、アーモンドなどに多く含まれています。カルシウムというと、牛乳やチーズなどの乳製品を思い浮かべるかもしれませんが、日本人はもともと乳製品を食べてきていないので、牛乳やチーズに含まれるカルシウムは吸収しにくいと言われています」
そして、6番目に必要な栄養素の「食物繊維」は5大栄養素の次に必要なもので、あくまでもわき役。
「便秘がちな人は、食物繊維をかなり多めにとる傾向がありますが、食物繊維をとりすぎて便秘を悪化させるケースも。野菜でお腹がいっぱいになり、ごはんや肉、魚を食べる量が少なくなると、便秘につながりやすいので気をつけましょう」
いかがでしたか。これまで3回にわたって「食べるフェムケア」について伊達さんにお話しいただきました。女性ホルモンにまつわる不調を抱えている人は、食生活に質のいい油をとり入れ、3大栄養素である「脂質、たんぱく質、糖質」とのつき合い方を見直してみるのも、ひとつの有効な方法だと言えそうです。
取材・文/野口美奈子
【参考書籍】『女性の不調は「油+(プラス)」でよくなる ~女性ホルモンに振り回されないための「食べる」フェムケア~』