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CATEGORY : ヘルスケア |風邪予防

しょうがや、葛根湯で症状が悪化することも⁉ 大人気漢方家・櫻井大典さんが教える、正しい風邪の対処法とは

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しょうが

冬はどうしても風邪をひきやすい季節です。そこで今回は、『病気にならない食う寝る養生』(学研プラス)の著者で、Twitterフォロワー17万人超の漢方家・櫻井大典さんに、風邪の対処法を教えていただきました。「風邪をひいたら葛根湯」「しょうがで、温まる」「たくさん食べて、栄養をとる」…。じつは、その対応が症状を悪化させている可能性もあるというのです。

監修 : 櫻井大典 (さくらい・だいすけ) (漢方コンサルタント)

漢方コンサルタント。国際中医専門員。日本中医薬研究会会員。漢方薬局の三代目として生まれ育つ。カリフォルニア州立大学で心理学や代替医療を学び、帰国後はイスクラ中医薬研修塾で中医学を学ぶ。中国の首都医科大学附属北京中医医院や雲南省中医医院での研修を修了し、国際中医専門員A級資格を取得。これまで年間数千件の健康相談を受け、のべ4万件以上の悩みに応えてきた。相談者の話をじっくり聞き、不調の根本的な理由を探し、体質やライフスタイルに合わせたアドバイスをしている。Twitterで発信されるやさしいメッセージと、簡単で実践しやすい養生法も人気を集め、フォロワー数は16万人を超える。著書・監修書も多数。最新刊『病気にならない食う寝る養生』(学研プラス)が発売中。
公式Twitter @PandaKanpo

Contents 目次

風邪は症状によって対処法が違う! しょうがで、温めると悪化することも?

しょうがとお茶

ひとくちに風邪といっても、のどが痛い、寒気がする、熱がある…など症状はさまざまです。症状が違えば対処法も異なり、その点を考慮しないと悪化させてしまいかねないそうです。

「例えば、『のどが痛い』という場合は、炎症が起きていることが考えられます。炎症とは、“炎”という漢字からも想像できるように、熱をもった状態です。風邪のときは、『体を温めたほうがいい』と思っている人も多いのですが、熱をもっているのに、さらに温めるというのは、火に油を注いでいるようなもの。症状を悪化させてしまいかねません。

また、風邪のときは、『しょうがやねぎを食べるといい』というイメージをもつ人もいますよね。これらは体を温める食材ですから、のどが痛いときは避けたほうがいい食材なんです」(櫻井さん)

これまで、よかれと思って温める対策をしていた人もいるのではないでしょうか。前述のように、「温めること」が、風邪をひどくしかねないケースもあるのです。

とはいえ、「風邪=温め」がNGかというと、必ずしもそうではありません。風邪のひきはじに「悪寒がする」という場合は、温めることが有効だそう。

「風邪の初期に『寒くてゾクゾクする』。そんな経験がある人も多いでしょう。こういった症状は、主に冷えが招いています。寒い場所に長時間いたり、薄着をしていたことで、冷えが体に入り込んだことが原因です。だから、こういったケースは、『温めて発汗すること』が効果的です。しょうが、ねぎはもちろん、ニラやシナモンなども体を温めてくれる食材ですから、それらをとるのもおすすめです。ほかにも、お風呂で体を温めることや、太い血管が走る首すじを温タオルなどで温めるのもいいでしょう」(櫻井さん)

風邪=葛根湯ではない! 漢方薬もタイプに合わせた細かい使いわけが必須

漢方薬とお茶

また、風邪というと「葛根湯(かっこんとう)」のイメージをもつ人も多いのではないでしょうか。葛根湯は風邪の万能薬のようにも思われがちですが、症状によっては有効ではないそうです。

「葛根湯は体を温めて発汗を促す漢方薬ですから、『悪寒がし、なおかつ発汗がない』ときに使います。のどが痛かったり、腫れているときに服用すれば炎症を助長し、悪化させてしまいます。寒気や悪寒がするならば、発熱があってもなくても使うことができます。ただし、悪寒がして使う場合でも、あくまで汗をかくまでです。その時点でやめないと、温めすぎになり逆効果になってしまいます」

また、発汗をともなう場合の悪寒には「桂枝湯(けいしとう)」、のどの痛みや腫れがあるときは「銀翹散(ぎんぎょうさん)」という漢方薬を使うことが多いそうです。

ただし、風邪の漢方薬は種類が多く、風邪のタイプをさらに細かくわけて考えて処方することが必要なのだそうです。

「風邪は、症状の変化が早いことも特徴です。だから、原因や状況、症状などを細かく見極めたうえで薬を決定します。同じように38度の熱があっても、暑く感じる場合と、寒く感じる場合がありますよね。この時点で使う薬はまったく違ってきます。少し症状が違うだけで適する薬は変わりますから、その点を注意して選ばないと逆効果になりかねません。ドラッグストアでも漢方薬は手に入りますが、やはり漢方薬局などで、専門家のもと選ぶことがおすすめです」

何はともあれ、早く寝ることがいちばん! 食べる量を控えることも大事

ふかふかのお布団

中医学では、体の中に『邪気(じゃき)』が侵入することで病気になると考えられています。「風邪」は「風が邪気に変化したもの」と考えます。風邪が熱の邪気や冷えの邪気を連れて体に侵入してきた結果起きる症状が「カゼ」です。ということは、邪気が入らなければ風邪をひかないというわけです。邪気の侵入を防ぐためにはどうすればいいのでしょうか。

「邪気の入る隙間がない体にすればいいんです。中医学では邪気に対して、体の守る力を『正気(せいき)』いいます。ペットボトルを人の体に例えて考えてみましょう。ペットボトルいっぱいに正気が入っていれば、邪気が入る隙間はありません。しかし、正気が半分までしか入っていなかったら、邪気は軽々と入ってきてしまいます。邪気を入れないためには、生気で満たせばいい。そのためには、やはり十分な睡眠、バランスのいい食事、ストレスを溜めないなど、体に負担の生活習慣が大事です」

生気を増やすことは、病気への抵抗力を高めること。風邪を防ぐためには、免疫力を高める必要ということですね。

「風邪は予防が第一ですが、かかってしまったときは、何はともあれ早く寝る! それが、いちばん大事です。また、『体力をつけるために、しっかり食べたほうがいい』と思っている人もいますが、それは正解ではありません。というのも、たくさん食べれば、消化に多くのエネルギーが必要になってしまうからです。体は使えるエネルギーの量が限られていますから、風邪のときはできるだけウイルスと戦うためにエネルギーを使いたいんです。そのためには、消化に費やす分を抑えたい。だから、食べる量も抑えたほうがいいです。よく煮た野菜を入れたスープやみそ汁、おかゆを少量だけ食べるようにしましょう」

次回は、櫻井さん自身がふだんとり入れている養生や意識していることなどをご紹介します。また、櫻井さんにもかつて、暴飲暴食をしていた日々があったそうです。その食生活を改めることになったきっかけなども、教えていただきます。

取材・文/柿沼曜子

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