CATEGORY : ヘルスケア |不調
「とり過ぎ」をひとつ減らせば、不調もひとつ減る! 大人気漢方家・櫻井大典さんが教える、養生を続けるコツは?
『病気にならない食う寝る養生』(学研プラス)の著者で、Twitterフォロワー17万人超の漢方家・櫻井大典さん。漢方の専門家として、これまでのべ4万人以上の人にアドバイスをしてきた櫻井さんですが、ご自身は、どのような養生をとり入れているのでしょうか。ふだんの習慣や食事に対する考え方などを教えていただきました。また、かつては乱れた食生活をしていたことも。そんな、櫻井さんの意識を変えたきっかけとは?
Contents 目次
「食べたいものを食べる」けれど、体にとって何が必要かは意識
漢方の専門家である櫻井さん。ご自身は、ふだんどのような養生や食生活を実践しているのでしょうか。
「仕事柄、ストイックな摂生生活をしているのだろう。そんなふうに思われることもありますが、皆さんが期待するような生活はしていません(笑)。23時くらいには寝る、お風呂では極力湯船に浸かる、会社に到着したら軽くスクワットするなどは習慣にしていますが、あとは特別なことはしていないです。食事も、基本は食べたいものを食べます」(櫻井さん)
仙人のような生活をしているのでは…? そんなことも頭をよぎりましたが、実践しているのは意外にもゆるいことばかり。また、「食べたいものを食べる」という答えが予想外だった人もいるのではないでしょうか。
「スイーツも食べますし、ラーメンだって焼き肉だって食べます。ただ、『食べたいものを食べる』といっても、『なんでもいい』とか『いくらでも食べる』ではないのです。お弁当を買うにしても野菜が足らなければおひたしをひとつ加えたりしますし、前の日に焼き肉を食べたら、翌日は野菜多めの食事にしよう。そういったことを考えながら、調整をしています。あれは食べない、これは口にしないなどと極端な制限をすることはありませんが、体をつくっているのは『食べもの』ですから、体にとって何が必要で、何がいらないのかは日々意識しています。仮に『なんでもいい』『いくら食べてもいい』そんな食生活で健康が維持できるのであれば、それでもいいかもしれません。でも、当然、体調を崩してしまいますよね」
漢方医のひと言を機に、食生活を見直すと体重が1年で10㎏減に
無意識に食べるのではなく「考えること」が重要。そう教えてくれた櫻井さんですが、じつは、櫻井さんにはかつて、何も考えずに食事をしていた時代があったそうです。そして当時は、今より10㎏も体重があったのだとか。
「漢方の会社に入って間もない20代の終わりの頃は、まさに『何も考えていない』食生活をしていました。朝から甘い菓子パンと、ソーセージパン。そこに、コーヒー牛乳もプラス。ランチでは大盛りやおかわりもしていましたし、夜も食べたいものをがっつり。そんな生活を当たり前のように続けていたある日、職場の漢方医に『きみは、食を冒涜(ぼうとく)している。食べることに何の感謝もなく、無駄に食べている』と怒られたんです。その言葉を聞き自分の食事を振り返ると、確かにその通りだと思いました。午前中は2時間程度しか働かないのに朝から高カロリーの食事をとり、それが消費していないうちに大盛りご飯。こんなに、いりませんよね? そのことに気づくと、体が必要としていないものを毎日毎日とっている自分が、すごく愚かに思えてきたんです」
漢方医のひと言を機に意識が変わったという櫻井さん。そこから必要な量を考えて食事をするようになったそうです。
「まず、朝食はミニトマトと、生レモンをしぼってはちみつを入れたレモンティーにしました。昼食はおにぎり2個とみそ汁、おひたしやごま和えなどのお惣菜。夜はわりと自由に食べていたので、朝はそれほどお腹が空きません。だから、朝食は少量で充分だったんです。それを1年間続けたところ、自然と10㎏減量しました。
私のもとにも『体質を変えたい』と相談にいらっしゃる方は多いですが、体質を変えるためにいちばん大事なのはやはり食事の見直しです。さらに言えば、昔の私がそうだったように『とり過ぎ』が不調の原因になっている人は少なくありません。甘いもの、冷たいもの、お酒、炭水化物…。人によってとり過ぎているものは違いますが、とり過ぎをひとつ減らせば、不調もひとつ減ると思います」
完璧を目指してやめるより、できることをコツコツ続けたほうが勝ち
養生や体質改善と聞くと、あれもこれもしなくてはいけない。あるいは、甘いものはダメ。お酒はダメ。そういったストイックなイメージをもち、「自分にはできない」と思ってしまう人も多いのではないでしょうか。
「毎日栄養バランスのいい食事をして、早起きして、朝から運動して…。そんな完璧な生活ができればいいですが、できませんよね? 私だって、できません…。だからといって何も変えなければ、体も変わらないんです。ではどうすればいいのか――。できることをすればいいんです。ストイックなことをやろうとすると、できない理由ばかり探してしまうし、どうしたって続きません。でも、例えば、毎日食べているアイスを週1回にする。お菓子をフルーツに置き換えてみる。夜更かしをしてしまった次の日は10分早く寝る…。こういったことだったら、どうでしょうか。「自分でもできそう」と思えた人も多いのではないでしょうか。完璧が無理だからといって何もやらないよりも、小さいことを10年続けたほうが勝ちです。だからハードルはできるところまで下げていい。まずは、『何だったらできるのか』を考えるところから始めてみましょう」
また、「食べたいものを食べたいときに食べても、びくともしない体づくりが養生」と、櫻井さん。
「例えば、『甘いものは好きだけど、ぜったい食べない』などと我慢ばかりしていたらストレスになってしまいますよね。ときには、好きなものを楽しく食べる時間も必要です。前述したように、私自身も無理に我慢をすることはせず、食べたいときは、食べています。でも、ふだんから体を酷使するような食事をしていると、食べたいものを食べたときに、それに耐えられず不調を起こしてしまいかねないのです。反対に体のバランスが整った健康的な体であれば食べたいものを食べてもグラつきません。食べたいものを食べたいときに食べるためには、ふだんの食事や養生で体を整えることが大事なんです」
養生というと、身構えてしまう人も多いかもしれませんが、櫻井さんの著書、『病気にならない食う寝る養生』で紹介されている養生法も、どれもゆるく簡単なことばかりです。なんとなく不調が続くという人は、まず自分の生活を見直し、不調の原因を考えてみてください。そのうえで、「これならできる」というちょっとしたことから養生を始めてみましょう。
取材・文/柿沼曜子