マンモグラフィ検査で乳がんを見つけづらい状態といわれている「デンスブレスト」(高濃度乳房)ですが、早期発見が難しい点を別にしても、乳がんになるリスクが高いとされています。その理由はよくわかっていませんが、このたび海外研究において、デンスブレストでは細胞レベルで特徴的な性質が見られ、がんを助長するようなミクロの環境が生じやすい可能性があると報告されました。
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脂肪性乳房と比較
デンスブレストは乳房内の乳腺組織の割合が高く、マンモグラフィで白く映る「高濃度乳房」のこと。乳腺の密度が濃いため、マンモグラフィでは白く映る部分が多くなり、乳がんが発見されにくいタイプとして問題になっています。マンモグラフィ画像で見た乳腺組織の濃度を4段階に分け、高いほうの2段階がデンスブレストとされています。
今回、スウェーデンの研究グループは最も高い「極めて高濃度」の人と最も低い「脂肪性」の人を比べて、デンスブレストの特徴を検討しました。
女性には造影剤を使った精度の高いMRI(磁気共鳴画像)検査を受けてもらい、示される数値や乳房組織の構成などについて比較したほか、乳房内の細胞を取り巻く液体を採取して、そこに含まれるさまざまなタンパク質の量を測定しました。デンスブレストの場合、この細胞を取り巻く環境が、がん細胞のものと似ていることが過去の研究で示されているためです。
がんを促進するタンパク質が増加
一連の研究で確認されたのが、デンスブレスト(高濃度乳房)と脂肪性乳房では、構造だけでなく生理学的にも大きな違いがあることです。
具体的に見ていくと、細胞のまわりに存在するタンパク質270種を分析した結果、がんの発達に関わる124種がデンスブレストで増えていました。このようなタンパク質の差は、MRI検査で確認された特徴と関連していました。
こうした結果から、デンスブレストはがんの発生・成長を助長するような細胞の環境をもっていると、研究グループは説明。そのうえで、これが乳がんの高リスクにつながっている可能性があるとして、新たな予防法の発見につながるのではないかと指摘しています。実際、この研究グループは炎症を減らすことでこうした細胞の環境を変えられるか研究しているそうです。
デンスブレストはがんが見つかりづらいと指摘されていますが、今回の研究を踏まえると、それ以外にもがんになりやすい性質がある可能性がありそうです。
<参考文献>