全国的にみて、例年よりもスギ花粉飛散量が多いと予想される2023年。まだ花粉症になっていない人でも、きちんと対策をしないと今年こそ発症してしまう可能性は多いにあります。そこで、ちまたでよく聞く花粉症対策や対処法が、本当に効果があるのか、医療現場で花粉症の患者さんを多く診ている医師の村上典子先生にお話を伺いました。
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関東甲信地方のスギ花粉飛散量は昨年の2倍以上!
一般財団法人 日本気象協会の発表によると、2023年のスギ花粉の飛散量は、九州~東北で前シーズンより多く、特に四国・近畿・東海・関東甲信で非常に多い予想とされています。これは2022年の夏の天気が「高温・多照・少雨」となり、スギの花芽形成に好条件だったため。それだけに、すでに花粉症の人だけでなく、まだなっていない人も花粉症を発症する可能性は大きく、きちんとした対策が必要です。
本当にその花粉症対策は合ってる? 正しい花粉症の対処法を医師が教えます!
なんとなくやっている花粉症対策や対処法。それが間違っていたり、逆効果なんてこともあるので、花粉症の素朴な疑問や正しいやり方を村上先生に伺いました。
<ケース1>目がかゆくなるので、ふだんはコンタクトですが、花粉の季節だけはメガネを着用。でも、ゴーグルのほうが効果はある?
「コンタクトよりメガネ、メガネよりゴーグルのほうがもちろん効果はあります。花粉は粘膜から吸収されます。粘膜面に花粉が付着するのがアレルゲンになるので、それをメガネやゴーグルで防ぐことはとても有効です」(村上先生)。
<ケース2>花粉の季節はマスクを二重にして対策。これって意味あるの? それとも頻繁にマスクを変えたほうが効果的?
マスク1枚でも息苦しいものですが、花粉の季節は二重にしているという人も。
「研究報告があるわけではないので、どちらが効果的かは何ともいえませんが、マスクを二重にしてもいいと思います。鼻・口から花粉が入ることを防ぐために、マスクは欠かせません。頻繁にマスクを変えるのも効果的です。外出のたびに新しいものをつけ、帰ったら使用済みのマスクを玄関で捨てて、部屋に持ち込まないようにしましょう」(村上先生)。
<ケース3>腸活などで免疫力を高めれば花粉症の症状は軽減する?
「ビフィズス菌や乳酸菌など人の腸に存在する善玉菌・プロバイオティクスに、免疫力が高まり、アレルギー抑制効果があることは研究によって明らかにされています。プロバイオティクスなどで腸内環境を整えることは、免疫の問題だけでなく、便秘や下痢症の改善、動脈硬化の予防効果、抗腫瘍作用などが報告されていて、絶対的におすすめです」(村上先生)。
<ケース4>花粉症を抑えられるお茶、ハーブティーなどに効果はある?
「このお茶を飲めば花粉症にならないというのはウソだと思いますが、カテキンやポリフェノールが入ったお茶やハーブティーにおける花粉症の症状の緩和の有効性は認められています。紅茶やウーロン茶にもポリフェノールがたくさん含まれていて、花粉症の症状を抑える効果があることもわかっています。なかでも、ポリフェノールが豊富なルイボスティーは、ノンカフェインなのでお子さんでも安心して飲ませることができ、夜に飲むのにもおすすめです」(村上先生)。
<ケース5>花粉が多いときは、薬に頼ることも。説明書に書いてある使用頻度を守れば、一生花粉症と付き合っていくうえで、ずっと飲み続けても問題ないの?
「この質問は、よく患者様から聞かれます。抗アレルギー薬というのは、そもそも長く飲むことを想定して作られているので、ある程度は大丈夫です。もちろん、年余に渡って読んでいる子どもたちもたくさんいます。ですので、医師の指導の元、きちんと飲んでいただければ問題ありませんよ」(村上先生)。
<ケース6>耳鼻科にある「ネブライザー」の吸引って、意味あるの?
耳鼻科などで治療される「ネブライザー(吸入器)」。これは、吸入薬を霧状にし、鼻から吸い込んで気管支や肺などに届ける医療機器です。1分間ほど吸入しますが、効いているのかわかりづらかったりします。
「ネブライザーの効果は時間的に限定的です。1日に何回もやるなど、持続的にやれれば、もっと効果がわかるのですが、受診したときに1回やるだけでは、一時的な感じです。ただし、加湿するのは、花粉症にとてもよいので、家の中でもスチーマーや加湿器などを使って湿度を高くしましょう。湿度があると花粉は水とくっついて下に落ちるので、花粉が飛散しにくくなるのでおすすめです」(村上先生)。
<ケース7>免疫舌下療法を行えばだれでも花粉症が治る?
「免疫舌下療法は、ほぼ全員の人に効果は少なからず期待できます。ただし、注意が必要なのが、現在、免疫舌下療法は、スギ花粉症とダニアレルギー性鼻炎の場合だけということです。じつはスギ花粉症だと思っていたけど、ヒノキ花粉症もあるとか、ダニのアレルギーだと思っていたけど、ハウスダストのアレルギーのほうが強かったという場合は、効果が出ません。アレルギー体質の人は、スギやダニだけでなく、ヒノキ、ハウスダストなど、いくつか被っている可能性があるので、事前にアレルギー検査を受けてから治療をしましょう」(村上先生)。
意外と知っているようで知らなかった花粉症対策。
次回は、田舎よりも都会の人のほうが花粉症の人が多いワケなど、花粉症の都市伝説的な話をたくさん伺います。
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取材・文/奥沢ナツ