毎年2月22日は日本頭痛協会の定める「頭痛の日」。みなさんのなかでも頭痛にお悩みの方は多いのではないでしょうか。ぜひこの機会に、頭痛についての基礎知識と最新の治療法を知って、なんとなく「頭が痛くてもやりすごしてしまう」状態から脱しませんか? 頭痛専門医で、富士通クリニック、東京クリニックで頭痛外来を担当する五十嵐久佳先生にお話を伺いました。
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片頭痛に悩む人は国内で約840万人
頭痛には、大きく分けて「一次性頭痛」と「二次性頭痛」があり、一次性頭痛がいわゆる”頭痛持ち”の人がかかえている頭痛です。二次性頭痛はくも膜下出血など、ほかの病気の症状のひとつとして現れる頭痛を指し、命に関わる病気の場合もあるので、普段と違う頭痛を感じたら、すぐに医療機関に受診しましょう。
一次性頭痛には「片頭痛」「緊張型頭痛」「群発頭痛」などがありますが、悩んでいる人の多い代表格といえるのが片頭痛。緊張型頭痛は数は多いものの、片頭痛と比べ仕事や日常生活の支障となるほどの痛みとなることは少ないと言われています。群発頭痛は激しい痛みを伴いますが、片頭痛や緊張型頭痛と比べ有病率は低い頭痛です。
片頭痛は、ズキンズキンと脈打つような痛みがあるのが特徴で、くり返し起こります。発作中に体を動かすと痛みが強くなったり、吐き気をもよおす、光と音に敏感になるといった症状も。国内の患者数は約840万人と推定され、仕事や日常生活への支障も大きく、国内で約3600億円の経済損失があるとも推定されています。
「頭痛で外来に来る人のうち、約7割が片頭痛の患者さんです」と話すのは日本頭痛学会認定の頭痛専門医で、富士通クリニック、東京クリニックで頭痛外来を担当する五十嵐久佳先生。「片頭痛という病名ですが、両側が痛むという患者さんも約4割いる」とのことで、日常生活に支障があって受診する人が多いそうです。
片頭痛に悩む人の7割が医療機関を受診していない
そして、大きな問題は、片頭痛患者のうち医療機関を受診している人の割合は約3割にとどまることです。多くの片頭痛患者は、痛みを我慢したり、市販の鎮痛薬で一時的に痛みを緩和させたりして対処するケースが多いようです。
「頭痛持ちの人は頭が痛いのが当たり前のようになっていたり、女性だと生理痛の一種だと思って諦めている人も少なくないようですが、片頭痛は病院で治療が可能な病気なので、悩んでいる人は一度医療機関に行ってほしい」と五十嵐先生は強く語ります。
「どの病院の何科に行けばいいかわからない、以前に受診してMRIも撮ったけど何もないと言われただけ、というような声も聞きますが、日本頭痛学会のwebサイトではお住いの地域から頭痛専門医のいる医療機関を探すこともできますので活用してください」(五十嵐先生)
片頭痛は治療・予防が可能な時代になっている
頭痛専門医が医療機関にかかることを強くすすめるのは、ここ数年で頭痛の治療や予防に有効な薬が使えるようになっているからです。
「2021年にCGRP関連抗体薬という、片頭痛が起こるメカニズムに沿って開発された予防薬が認可されました。有効性は従来の予防薬とは段違いです」(五十嵐先生)
日本イーライリリー、第一三共の「エムガルティ」、アムジェンの「アイモビーグ」、大塚製薬の「アジョビ」といった薬が登場しており、こうした片頭痛の新薬が国内で発売されるのは、およそ20年ぶりのこと。片頭痛は病院で治療し、予防ができる時代になっていると言えます。
また、市販の鎮痛薬などを使いすぎると、それが原因の頭痛を引き起こしてしまうことも。週に2日以上、市販薬を飲んでいたり、市販薬を飲んでいても片頭痛が治まりにくくなっているという人は、ぜひ一度医療機関を受診することをおすすめします。
医療機関にかかる際、日本頭痛学会のWebサイトでダウンロードできる「頭痛ダイアリー」をつけておくと、診断がスムーズになることも。月に何日ぐらい片頭痛が起きていて、どういうときに起こりやすいかなどを自分で把握することもできますし、治療の際にどの薬が効いたということもわかりやすくなるので、頭痛持ちの人はダウンロードしてつけてみるとよさそうです。
頭痛は周囲の人からは目に見えないことから、本人はつらい思いをしていても、まわりからはサボっているように見られることも少なくありません。頭痛持ちでない人も、周囲につらい思いをしている人がいるかもしれないということ、片頭痛は治療が必要な病気であることを理解し、悩んでいる人がいたら医療機関にかかるように言葉をかけてあげられるといいですね。
取材・文/増谷茂樹