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1日約11分! 海外研究によると、早歩きなど“体を動かしながら会話ができるような運動”でも病気のリスク低下に

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毎日の運動は健康によいと考えられていますが、どれくらいの運動が適切なのでしょうか? 最近の海外研究では、推奨される運動量の半分(1日約11分の簡単な早歩き、1週間で75分)を行うことで、10人に1人の割合で命が救われると報告されました。推奨される運動量は、週に150分の中強度の有酸素運動です。このレベルの運動は、心臓や血管の病気やがんのリスクも大幅に低下させるというのです。

監修 : 星 良孝 <ステラ・メディックス>

ステラ・メディックス代表取締役社長 獣医師/ジャーナリスト
専門分野特化型のコンテンツ創出を事業として、医療や健康、食品、美容、アニマルヘルスの領域の執筆・編集・審査監修を担っている。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BP社において「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年に会社設立。YouTubeステラチャンネルでもヘルスケアの話題を発信。
YouTube:https://youtube.com/@stellach

Contents 目次

余暇の運動がリスクを減らす?

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運動量を増やすと心臓病や血管の病気、がんのリスクを減らすことが、数多くの研究で示されています。WHO(世界保健機関)や英国NHS(国民保健サービス)は、成人に対して毎週少なくとも150分の中強度の有酸素運動または75分の高強度の有酸素運動を行うことを推奨しています。

ただ、運動に関する研究の多くは、特定の病気や死亡のリスクを調べているうえ、必要な運動量の算出方法が異なるため、どれくらいの運動がどのような結果につながるかといった全体像や数値を明確に把握することは困難です。

そこで今回、英国ケンブリッジ大学をはじめとする国際的な研究グループは、仕事で体を動かす分は除いて、余暇の運動のみに焦点を当てた方法で過去のデータを分析しました。目的は運動量とリスク低下との関係をできるだけ正確な数値として把握することです。参加者が1万人以上で、死亡、心臓および血管の病気、各種のがんのリスクについて調べた研究だけに絞り込むことで、3000万人以上の参加者を含む196の研究を集めることができました。

推奨量の半分でも病気の予防に

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こうして研究で確認されたのが、運動量が多いほどリスクが低下し、しかも推奨運動量の半分(中強度の有酸素運動を週に75分)でも相当な効果が得られることです。リスクは推奨運動量まで大きく低下し、それ以上の運動量では低下が少なくなるか、不確実でした。中強度の運動とは、心拍数や呼吸数が上がる活動のうち、早歩き、自転車、ダンス、ハイキングなど、体を動かしながら会話ができるような運動を指します。

具体的に150分と75分の違いを見てみると、運動しない人に比べて、全体的な死亡リスクは31%減少および23%減少となりました。さらに、心臓および血管の病気になるリスクは27%減少と17%減少。がんになるリスクはがん全体で12%減少および7%減少となりました。がんについては部位によって大きな差があり、頭頸部および胃がん、白血病などは150分と75分の運動量で、それぞれ22〜35%減少および14〜26%減少となりました。これらの結果は、推奨される運動量の半分の運動をするだけでも、依然として大きな健康効果があることを示しています。

また、研究者らは、さまざまなレベルの余暇身体活動が、死亡や病気の予防に与える影響を推定しました。その結果、運動不足の人が週に150分の中強度の運動をした場合、記録された早死にの16%を防ぐことができたといいます。さらに、すべての人がこの目標の半分、1日にして11分の中強度の運動、たとえば早歩きをすると、死亡の10%を防ぐことができると算出しました。

今回分析した研究では、参加者が運動量を自己申告し、一部では運動の強度を推測したケースもあり、報告された運動量は完全に正確とは限りません。ですが、研究グループは推奨運動量の半分でも効果的と結論づけています。

今回ふれたように「中強度の身体活動」といった場合、何も特別な競技を伴うスポーツや運動を指しません。自転車や徒歩での通勤、アクティブなゲームなど、日常生活に楽しい身体活動を加えることが不可欠であると、研究グループは提案しています。日常生活のちょっとした変化でも、大きな効果が期待できるのかもしれません。

<参考文献>

Daily 11 minute brisk walk enough to reduce risk of early death
https://www.cam.ac.uk/research/news/daily-11-minute-brisk-walk-enough-to-reduce-risk-of-early-death

Garcia L, Pearce M, Abbas A, et alNon-occupational physical activity and risk of cardiovascular disease, cancer and mortality outcomes: a dose–response meta-analysis of large prospective studiesBritish Journal of Sports Medicine Published Online First: 28 February 2023. doi: 10.1136/bjsports-2022-105669
https://bjsm.bmj.com/content/early/2023/01/23/bjsports-2022-105669

1 in 10 early deaths averted if everyone met physical activity targets
https://www.bmj.com/company/newsroom/1-in-10-early-deaths-averted-if-everyone-met-physical-activity-targets/

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