コーヒーとお茶は、それぞれいろいろなポリフェノール類やカフェインなどの有効成分を豊富に含み、リラックス効果に限らず、幅広い美容および健康効果が続々と明らかになっています。コーヒーについては腎臓や肝臓の病気、がんの進行まで防ぐことが示されているなか、このたび、海外研究において、コーヒーとお茶が過敏性腸症候群のリスクを下げるという報告がありました。腸の調子を整える効果が期待できるようです。
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42万人以上の追跡結果は…
過敏性腸症候群は、腸の症状を引き起こすほかの病気が見られないのに、腹痛やお腹の膨満感、便秘や下痢といった腸の不調が続く病気です。世界的には最大でおよそ20%、日本でも10%くらいの人がかかっているとされ、決して珍しい病気ではありません。女性や若い人のほうが多いといわれています。原因やメカニズムははっきりしていませんが、ストレスと食べ物が大きく影響すると考えられています。
今回、中国の研究グループは、英国で長く実施されている研究である「UKバイオバンク」のデータを使って、コーヒーおよびお茶と過敏性腸症候群との関係を調べてみました。このデータは、英国の約50万人の健康や遺伝子に関する情報を集めた膨大なもので、世界中で数多くの研究に利用されています。データ収集時点で、共通して腸の症状を伴う病気である過敏性腸症候群、セリアック病、炎症性腸疾患、がんのどれでもなかった42万人以上について、コーヒーとお茶それぞれの摂取量を4種類(飲まない、1日0.5〜1杯、2〜3杯、4杯以上)に分類。およそ14年にわたる追跡期間中の過敏性腸症候群発症との関連性を分析しました。
コーヒーは多いほどリスク低下
こうして研究で確認されたのが、コーヒーを多く飲む人ほど過敏性腸症候群のリスクが低く、お茶は1日0.5〜1杯の場合にリスク低下が見られたことです。
具体的に見ると、コーヒーをまったく飲まない人に比べて、1日に0.5〜1杯、2〜3杯、4杯以上飲む人は、過敏性腸症候群のリスクがそれぞれ7%、9%、19%低くなりました。特にコーヒー飲料をまったく飲まない人に比べて、インスタントコーヒーかレギュラーコーヒーを飲む人でリスク低下(17〜18%)が顕著でした。お茶については、1日2〜3杯と4杯以上ではリスク低下は見られませんでした。
脳と腸の密接な関係(脳腸相関)や自律神経バランスの乱れが関与しているとされる過敏性腸症候群。命に関わる病気ではないものの、日常生活で困ることが少なくありません。今回の研究を踏まえると、コーヒーやお茶は強い味方になりそうです。
<参考文献>
Shanshan Wu, Zhirong Yang, Changzheng Yuan, Si Liu, Qian Zhang, Shutian Zhang, Shengtao Zhu, Coffee and tea intake with long-term risk of irritable bowel syndrome: a large-scale prospective cohort study, International Journal of Epidemiology, 2023;, dyad024,
https://doi.org/10.1093/ije/dyad024
過敏性腸症候群の引き金になるのは何…? 海外研究で新たな発見
https://fytte.jp/news/healthcare/131161/
環境の変化や緊張…ストレスが原因でお腹の調子が悪くなる「過敏性腸症候群」とじょうずにつきあうコツ
https://fytte.jp/news/healthcare/109308/
過敏性腸症候群(IBS)ガイドQ&A(日本消化器病学会ガイドライン)
https://www.jsge.or.jp/guideline/disease/ibs.html