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「大人こそ性教育を学ぶべき」性教育YouTuberシオリーヌさんに聞くリアル・フェムケア
助産師の経験と知識を、YouTuberとして発信し続けるシオリーヌさん。学校では教えてくれない性教育の知識を気軽に学べる動画が話題となり、今やチャンネル登録者数は17.4万人超え。この数字からも、世間からの「性教育」への関心の高さが伺えます。今回は、「遅れている日本の性教育」を受けて育った、現代女性に必要なリアル・フェムケアについて、シオリーヌさんに伺いました。
Contents 目次
不安をガマンしすぎずに必要なケアを受けることが重要
性教育についての知識を十分に与えられずに大人になった現代女性は、生理や妊娠、出産などで不安や迷いを抱えることが度々あります。
自分の生理痛がつらくても、知識がないために「受診すべきレベルかどうか」を判断することができず、ガマンしてしまう人も少なくないはず。不安を抱えていても「みんなつらいのだから、ガマンしよう」と結論づけてしまうのは、「生理=つらいもの」という認識があるからかもしれません。
「現代女性に伝えたいのが、『助けを求めることをためらわないでほしい』ということ。生理も子育ても『しんどいのが普通』ととらえずに、『自分がつらいと感じることはつらい』でいいと思います。SOSを出すことにもさまざまなハードルがありますが、必要に応じて病院を受診したり専門家のケアを受けたりして、自分のつらさを無視しないでもらえたらと感じています。」(シオリーヌさん)
妊娠や出産についても同様に、知識がなければ「出産ってどんなふうに進むの?」「産後の子育てってどのくらい大変?」など、「これからどうなるかわからない不安」と向き合い続けなければいけません。2022年に第一子を出産したシオリーヌさんは、ご自身の妊娠、出産を振り返って「知識があるって、とても心強いことだと感じた」と話します。
「これまで積み上げてきた知識や経験があったからこそ、分娩中の自分が順調かどうか、これから何をすべきかを予測することができました。『予期できない不安』を感じることなく出産を迎え、出産直後の赤ちゃんのケアも『こんなふうに頑張ればいい』という見通しが立てられたから、大変な中でもある程度落ち着いて過ごすことができたと思います
自治体や産院などが主催している母親学級で、最低限必要な情報は伝えられていますが、本当に必要な情報はとても伝えきれていないのだと痛感しました」
今抱えている不安は、知識を得ることによって緩和されることもあれば、必要なサポートを受けることにつながる可能性もあります。情報社会において、知識を集めることは簡単です。しかし、「不安をガマンせざるを得ない状況」を作っているのは「知識を蓄える必要がある」という前提が伝わっていない現状なのかもしれません。
自分の体と人生のことは、「自分で決める」権利がある
「SRHR(性と生殖に関する健康と権利)」という言葉をご存知でしょうか?「自分の体は自分のもので、自分の体や人生に関することは自分で決める権利がある」という私たちにある大切な権利を示す言葉です。
例えば、「自分が嫌だと感じる性行為は断ってもいい」ということや、「自分が避妊したいと言ったときに、それを拒む権利は誰にもない」ということ。私たちが当たり前に持つ権利であり、性教育の基礎になるような考え方です。
シオリーヌさんは、SRHRの重要性を説明するとともに、「多くの女性は、自分の体のことを自分で主体的に決めていいという認識が希薄な気がする」と話します。
「特に上の世代の女性たちは、『性について受け身であることが好ましいこと』という教育を受けて育ち、性に関して主体的であることは『はしたない』と教えられて育った方が多いです。大切な性教育の知識を誰からも教わる機会を与えられなかったことで、主体性を奪われていたのではないかと感じます」
また、子育て中の保護者からよく聞かれるのが「習ったことのない性教育を、子どもにどうやって教えればいいかわからない」という声。大切だと理解しているし、教えるべきだとわかっているけれども、どうしても子どもの前で性行為について話す自分を想像できないという人も多いのでは。これに対して、「今までおおっぴらにできなかった話題を、いきなり、『子どもの前で堂々と話して』と言われても、できないのは自然なことだと思います」とシオリーヌさん。
「学生時代、助産師の資格を取るための授業で、当たり前のように性に関する話を聞いてきました。そのうちに自然と自分の中にあった『性の話題に対する気恥ずかしさ』がなくなり、『当たり前に大切なこと』と考えられるように。大人世代のみなさんも、子どもに性を伝える前の最初の一歩として、自分の中の性の価値観と向き合うプロセスが必要なのではないかと感じています。まずは自分が性教育を学んでみることで、自分の中の認識が変化し、パートナーやお子さんとの話しやすさにつながるかもしれません」
「性教育=恥ずかしいこと」という認識を持ったまま、自分自身や家族と向き合うのは難しいこと。それを打破し、「性教育の大切さ」を当たり前に感じるためにも、改めて性教育を学ぶ必要がありそうです。
産後ケアのイベント開催と助産師の育成活動も視野に入れて
現在、シオリーヌさんは「産後ケア」への関心を高めており、今年3月には初めての産後ケアイベントを企画。助産師に子どもを預けて、お母さんがひとりでゆっくりお風呂に入れる「産後ケア銭湯」を開催しました。
「産後の女性は、心身のバランスを特に崩している状態です。それにも関わらず、日本の子育ては『お母さんが担うもの』というイメージがまだ強く、サポートを受ける文化が浸透していません。しかし、身をもって産後を経験してみて『社会全体で子育てを支えていかなくては、親たちの心身を守ることはできない』と実感。
親が休むことを当たり前にしていかなければと考え、産後ケア事業に着手しました。今後も開催場所を検討しながら、継続的に開催していく予定です。また、性教育に関心のある助産師さんを育成するための活動にも関心があります」
性教育に関する知識の提供とともに、学びの必要性を考えさせてくれるシオリーヌさん。幅広い年代が「性の話をもっと気軽にオープンに」話せるようになったとき、今抱えている体や性への不安や悩みが和らいで、もっと生きやすい世の中になっているはずです。
取材・文/佐藤有香