なかなか寝つけない、長く眠っていられない、よく目が覚めたりして熟睡できないといった症状が長く続く「不眠症」。これまでの研究から、心臓および血管の病気などリスクが高くなると考えられていますが、このたび海外研究において不眠症は心筋梗塞のリスクを70%近く高めると報告されました。しかも女性のほうが、リスクが高くなる傾向にあるようです。
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不眠症と心筋梗塞、その関連性は?
長く続くストレスは不眠症の原因になります。一方で不眠症の人は、慢性的なストレスを抱えていることが多く、ストレスホルモンの一種であるコルチゾールの濃度が高いこともよくあります。動物を使った研究では、ストレスとコルチゾールの両方が心筋梗塞のリスクを高めることが示されています。なお、心筋梗塞は心臓に血液を送る血管が詰まることで起こる命に関わる病気です。
そこで今回、エジプトを含む国際研究グループは、心筋梗塞を発症した不眠症の人を追跡調査した過去の研究を収集し分析。それぞれの病気がどれくらい関連しているのかを調べました。不眠症は、なかなか寝つけない、よく目が覚めて睡眠が中断される、早朝に目覚めたきり眠れないという3つの症状のいずれかがあるかどうかと、睡眠時間を目安としました。
米国や台湾など6か国の9つの研究が集まり、これらの研究には110万人以上が参加し、そのうち43%が女性でした。全体として、参加者の約13%、つまりおよそ15万人が不眠症でした。
5時間以下でも9時間以上でもリスクアップ
こうして研究で確認されたのが、不眠症の人ではそうでない人と比べて、心筋梗塞を発症するリスクが69%高くなることです。また、高血圧、高コレステロール、糖尿病があるとリスクはさらに高くなります。たとえば糖尿病と不眠症があると、不眠症のない人の2倍以上でした。
十分な睡眠をとることは、心臓の健康にとって重要です。睡眠時間が5時間以下の人は6時間の人と比べて心筋梗塞のリスクが1.38倍、7〜8時間の人と比べて1.56倍に高くなりました。睡眠時間5時間以下と9時間以上との間で比べるとリスクは変わらず、睡眠時間が短すぎても長すぎてもよくない結果でした。睡眠時間が6時間の場合は9時間よりも低リスクとなりました。
なかなか寝つけない、長く眠っていられないという症状も、個別に心筋梗塞のリスク上昇(およそ13%)につながりました。ただし、十分な睡眠をとっているにもかかわらず疲れがとれない、日中の眠気があるなどの症状は、心筋梗塞のリスクを高めるものではありませんでした。
不眠症の人は、性別や年齢にかかわりなく、不眠症でない人に比べて心筋梗塞を起こす可能性が高いという結果です。また、女性はホルモンバランスの崩れなど、女性に特有の不眠の原因が関連してややリスクが高くなる可能性があります。こうしたリスクを減らすためには、7〜8時間の睡眠をとることが重要であると、今回の研究からは示されました。
<参考文献>
Insomnia Tied to Greater Risk of Heart Attack, Especially in Women
https://www.acc.org/About-ACC/Press-Releases/2023/02/23/18/23/Insomnia-Tied-to-Greater-Risk-of-Heart-Attack-Especially-in-Women
Dean YE, Shebl MA, Rouzan SS, Bamousa BAA, Talat NE, Ansari SA, Tanas Y, Aslam M, Gebril S, Sbitli T, Eweis R, Shahid R, Salem A, Abdelaziz HA, Shah J, Hasan W, Hakim D, Aiash H. Association between insomnia and the incidence of myocardial infarction: A systematic review and meta-analysis. Clin Cardiol. 2023 Feb 25. doi: 10.1002/clc.23984. Epub ahead of print. PMID: 36841256.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/clc.23984