日本でも乳がん検診としてマンモグラフィ検査が一般的に行われていますが、そのマンモグラフィ検査でよく問題になるのが検査画像で判定される「乳腺濃度」です。乳腺濃度が高い状態である「デンスブレスト」は乳がんと関連するとされます。米国ではこの検査に関する詳しいルールを定めた連邦法があり、米国食品医薬品局(FDA)が管理していますが、このたび、FDAはこの法律の規定を一部改訂し、マンモグラフィを受けた人にデンスブレストか否かを知らせることを医療機関に義務づけました。この変更の意味とは…?
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説明する言葉をルール化
マンモグラフィ検査で見た乳腺濃度が高いデンスブレストだと乳がんが見つかりにくく、乳がんになるリスクも高いと考えられていて、近年、その認識が広がっています。乳房内の脂肪が少なく乳腺の比率が高いやせ型の人や若い人、日本人を含むアジア人に多いといいます。
米国では現在38州で、マンモグラフィ検査の結果、デンスブレストであるかどうかを本人に知らせるよう定めた法律がありますが、この情報の伝え方は州によって異なることがあります。
今回、米国食品医薬品局(FDA)は、使う言葉も含め情報の伝え方を明確化。これまで「高濃度」または「低濃度」と表していたものを、「デンスブレストである」と「デンスブレストではない」にあらためたうえで、その違いの重要性も明記。自分の状況や乳がんのリスクについて、かかりつけ医とよく話し合うようすすめる文言も加えました。
乳房の組織構成は、脂肪が多いか乳腺が多いかで4つに分類され、このうち乳腺が多いほうの2つが「デンスブレストである」になります(少ないほうの2つが「デンスブレストではない」)。FDAは、検診を受けた人のかかりつけ医には、どの分類かも含めた全体的な評価を提供するように定めています。
告知に力を入れ、早期発見につなげる
FDAは、マンモグラフィ検査を提供する医療機関を監督する役割も担っています。今回の改訂では、特に検査を受ける人に重要な情報がきちんと伝わるように、FDAの監督権限も強化されました。新しい規則を守っているかどうか、各医療機関がチェックされ、その医療機関の評価が低い場合は、FDAが個人に直接的に関与することもできます。
マンモグラフィ検査には課題もいろいろありますが、今のところ死亡率を下げると科学的に証明されている唯一の検査。今回、米国で新しいルールが始まったのは、乳腺濃度の高い場合は乳がんと密接な関係があり、それだけ認識しておくことが乳がんの危険を回避するためには重要視されているということでしょう。
日本と欧米では違いがあるかもしれませんが、こうした情報を得ておくことは乳がんの早期発見につながります。乳がんリスクを考えるときには乳腺濃度が重要な要素であるとあらためて認識しておくとよさそうです。
<参考文献>
FDA Updates Mammography Regulations to Require Reporting of Breast Density Information and Enhance Facility Oversight
https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-updates-mammography-regulations-require-reporting-breast-density-information-and-enhance
Mammography Quality Standards Act
https://www.federalregister.gov/documents/2023/03/10/2023-04550/mammography-quality-standards-act