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「体がかたくなった」は動脈硬化進行のサイン! 専門家が伝授する、座ってできる血管をやわらかくするストレッチ
年齢を重ねると誰しも血管がかたくなっていきますが、同じ年齢でも血管年齢が若い人とそうでない人がいます。血管がかたいとやがて詰まりや破裂を引き起こすことに。女性の場合は肥満や閉経以後が要注意です。症状が出にくい動脈硬化のサインには高血圧などがありますが、「体のかたさ」もひとつのサインであることがわかっています。今回は、立命館大学教授の家光素行先生の著書『体がやわらかくなると血管が強くなる』からお伝えしていきます。
Contents 目次
研究からわかった新事実!「体がかたくなった」は動脈硬化のサイン
5年前に比べて、体がかたくなっていませんか?
前屈時に昔は床に手がついていたのに、まったくつかなくなってしまったということがあったら、血管が悲鳴を上げているのかもしれません。
「私たちの研究と実験によって体のかたさと血管のかたさには深い関わりがあることがわかっています。実験では60歳以上の中高年層132人を体のかたいグループとやわらかいグループにわけ、それぞれのグループの動脈硬化度を測定すると、体がかたいグループのほうが、動脈硬化度が高いという結果になりました。つまり、体がかたくなったという人は、血管もじわじわかたくなり、思いのほか動脈硬化が進んでいる可能性が否めません」(家光先生)
血管の状態は自覚症状がほぼないので、かたくなっていることを見逃しがち。そんななかで「体のかたさ」は、血管の状態を知るための貴重かつ手軽なサインになるといえます。
そして研究では、体のかたさをストレッチでほぐすことで血管もやわらかくすることができるという結果も出ています。
「“かたくなった血管”の若返りに、ストレッチを考案しました。なぜこのストレッチが効果的なのかというと、その理由のひとつは、一酸化窒素(NO エヌオー)をはじめとした“血管拡張物質”をたくさん分泌させることができるからです。動脈硬化の予防に食生活と合わせて、ぜひとり入れていただきたいと思います」
血管の内膜にある「内皮細胞」は、血液が流れることによって生じる刺激や血液中に含まれるホルモンから刺激を受けると、血管の拡張をうながす作用があるNOなどを分泌し、血管内の筋肉「平滑筋」に”ゆるむ”ように働きかけます。それに反応した平滑筋がゆるむことで、血管が広がり、やわらかくもなるのです。
「平滑筋を『いかにゆるますことができるか』が、血管の若返りのカギ」と家光先生。そこで考案されたのが、血流の増加により血管内皮細胞に対する物理的な刺激を与えることで、平滑筋を緩ませるストレッチです。
ストレッチは太い動脈と大きな筋肉のある「前もも」と「ふくらはぎ」をメインにアプローチしています。下記の注意点に留意し、1日1分だけでもいいので、毎日続けていきましょう。
1.ストレッチ中、呼吸を止めない
2.次のストレッチまで10から20秒、間をあける(反対の脚を行う)
3.イタ気持ちいいと感じるくらいまで伸ばす
4.関節が痛いときなどは、無理をしない
血管を若返らせる2つのストレッチ
〈前もも伸ばし〉
ももの前側にある太い血管「大腿動脈」と、大きな筋肉「大腿四頭筋」を同時に伸ばすストレッチ。こりやすいももの前側も、椅子を使うことでラクに伸ばせます。
1. 椅子の端に片脚だけのせて座る
椅子の背もたれが体の横にくるようにセットし、片側のお尻と脚だけが座面にのるように座る。片手で背もたれを握り、体勢を安定させます。
正面から見ると、右脚だけが座面にのり、左脚は座面にのっていない状態です。
2.左脚をうしろに引き前ももを伸ばす
左脚をできるだけうしろへ引き、ひざを伸ばす。上半身をまっすぐ起こすと、脚のつけ根と前ももの伸びを感じられる。15~30秒伸ばしたら、反対の脚も同様に行う。
右脚の位置は変えず、左脚だけうしろへ。左手は右ももの上に添え、上半身がブレないようサポート。前かがみになるとそけい部が伸びないので注意しましょう。
※片脚を初心者では15秒、慣れたら30秒行います。必ず左右両方を行いましょう。
〈ふくらはぎのばし〉
ふくらはぎにある動脈「後脛骨(こうけいこつ)動脈」がターゲット。「ヒラメ筋」や「腓腹筋」といったふくらはぎの筋肉も一緒に刺激して、下肢にたまった血液の循環をうながします。
1.椅子に浅く座って背すじを伸ばす
座面半分くらいの位置に座り、背すじを伸ばします。足裏は床につけ、足の指先は前へ向けます。手はそれぞれのももの上に添えておきましょう。
2.片脚だけうしろへ軽く引く
背すじを伸ばしたまま、左脚をうしろへ。引くのはかかとが浮かない位置まででOK。引き過ぎるとかかとが浮いてしまいます。
3.両手をひざに当て、前へ押し込む
左脚のひざ上部に、両手を重ねて添えます。上半身をやや前傾にし、手でひざを前方へ押し込みます。ふくらはぎ部分の伸びを感じながら15~30秒キープ。反対の脚も同様に行います。
※片脚を初心者では15秒、慣れたら30秒行います。必ず左右両方行いましょう。
血管がかたくなっていても痛みもかゆみもなく、なかなか自覚できませんが、体のかたさを自覚している人は多いはず。ストレッチなら毎日とり入れやすく、体がやわらかくなっていく実感も得られやすいですよね。血管が若返ることで、疲れやすさ、冷え、不眠といった不調も解消されていきます。
文/庄司真紀
参考書籍/
『体がやわらかくなると血管が強くなる』(アスコム)
著者/
家光素行
立命館大学スポーツ健康科学部教授。国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所客員研究員。1996年、川崎医療福祉大学医療技術学部卒業。2003年、筑波大学大学院医学研究科博士課程修了。筑波大学先端学際領域研究センター客員研究員、国立健康・栄養研究所身体活動研究部客員研究員などを経て、14年より現職。