ぜん息は気道が炎症を起こして狭くなり、咳や呼吸困難などの症状が出る病気です。これには遺伝も関係しますが、発症には多くの要因が関連します。このたび海外研究では、睡眠時間や夜型か昼型かといった睡眠のパターンが健康的ではない場合、ぜん息になりやすくなると報告されました。ぜん息の心配がある人は気をつけるとよいかもしれません。
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ぜん息と睡眠が関連?
ぜん息と睡眠は深い関連があると考えられています。ぜん息の人では、睡眠の質や睡眠時間が削られることが知られている一方で、逆にいびきなどの睡眠の問題があると、気道の炎症など呼吸器系の問題を起こし、ぜん息との関連が考えられています。
そこで今回、中国の山東大学の研究グループは、健康的な睡眠とぜん息になるリスクとの関連性を調べました。そのときに遺伝的にぜん息になりやすいかどうかも加味して分析しました。
研究グループは、英国の約50万人の健康データや遺伝子データを集めた大規模研究「UKバイオバンク」の情報を使いました。このUKバイオバンクでは、参加者に睡眠習慣をたずね、睡眠の健康度を5つの指標で判定しました。朝型、睡眠7〜9時間、不眠症、いびき、頻繁な昼間の眠気という点から5点満点で点数をつけて、2点以下が睡眠の健康度が低いグループ、5点が睡眠の健康度が高いグループ、3~4点は中間のグループとしました。そして、10年間の追跡期間中にぜん息になった人とならなかった人の睡眠の健康度を比べました。
睡眠時間の影響が大きい
こうして研究で確認されたのが、睡眠の健康度が低いとぜん息になるリスクが高くなり、そこに遺伝的なぜん息のなりやすさが加わると、さらにリスクが上がることです。
具体的には、睡眠の健康度が最も高いグループに比べて、最も不健康な睡眠パターンのグループはぜん息のリスクが55%高くなりました。
また、ぜん息になりやすい遺伝子をどれくらいもっているかでぜん息になるリスクを判定した場合、高リスク(関連の遺伝子が多い)グループは低リスクグループより47%アップ、加えて睡眠パターンが不健康だと、ぜん息のリスクは122%高く、つまりリスクが2倍以上になることがわかりました。
睡眠の健康度を判定した5つの指標のうち、ぜん息に対する影響が大きいのは、「睡眠時間7〜9時間」が保たれているかどうか、「不眠症」であるかどうかだということがわかりました。睡眠が十分に保たれ、不眠症ではないことが、ぜん息の発症リスクを減らすうえでは重要ということです。
今回の研究では、睡眠とぜん息の直接的な因果関係が調べられたわけではなく、また、38〜73歳のヨーロッパの人々のみを対象としているため、結果は子どもや異なる人種や民族背景をもつつ人には当てはまらないかもしれません。しかし、遺伝的な素因によらず、睡眠習慣を改善することがぜん息の予防につながる可能性は推定されます。この研究をきっかけに、睡眠習慣を見直してみるのはよいかもしれません。
<参考文献>
Xiang B, Hu M, Yu H, et alHighlighting the importance of healthy sleep patterns in the risk of adult asthma under the combined effects of genetic susceptibility: a large-scale prospective cohort study of 455 405 participantsBMJ Open Respiratory Research 2023;10:e001535. doi: 10.1136/bmjresp-2022-001535
https://bmjopenrespres.bmj.com/content/10/1/e001535
Poor sleep may bolster genetic susceptibility to asthma risk
https://www.bmj.com/company/newsroom/poor-sleep-may-bolster-genetic-susceptibility-to-asthma-potentially-doubling-risk/