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ストレスからくる不眠の解消法を4つ紹介。専門医が教える睡眠で心をリカバリーする方法

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夜中まで寝れない女性

「FYTTEヘルスケアトレンド2023」で、8つのトレンドワードのひとつに掲げられている「リカバリータイム」。これまでも「睡眠負債」が注目されるなど、睡眠や休息は関心が高いテーマでしたが、免疫力やメンタルヘルスへの影響といったコロナ禍を通して、一気にメガトレンドとなっています。
そこで今回は、睡眠がもたらす心(メンタル)の疲れをとるメカニズムや、ストレスや不安・悩みから不眠症ぎみになってしまったときの対処法を、睡眠の専門医の坪田聡先生にお聞きしました。

監修 : 坪田 聡

医師・医学博士。雨晴クリニック院長。日本睡眠学会のほか、日本医師会に所属。医師として診療にあたる中で、睡眠障害がほかの病気の発症や経過に深く関係していることに気づき、高齢者を中心に睡眠障害の治療を開始。その後、治療から予防に診療をシフトし、「快眠で健康な生活を送ろう」というコンセプトのもと、睡眠の質を向上させるための指導や普及に努める。著書に、『女性ホルモンが整う オトナ女子の睡眠ノート』(総合法令出版)、『朝5時起きが習慣になる「5時間快眠法」』(ダイヤモンド社)などがある。

Contents 目次

睡眠不足になると顕著に表れる心(メンタル)の変化のメカニズムとは?

脚を抱えて顔をうつ伏せにしている女性

早速ですが、睡眠で心(メンタル)が休息したり、回復できるメカニズムを教えてください。

「心(メンタル)の問題は、睡眠不足になったときに顕著に現れます。睡眠不足になると、感情をコントロールする脳の側頭葉の内側にある扁桃体の血流が上がり、興奮しすぎたりして感情がセーブできなくなります。とくに扁桃体は不安や恐怖、緊張、怒りなどのネガティブな感情に関わっているため、うつっぽくなったり、キレやすくなったりしてしまいます。というのも、物を考えたり、判断や情動のコントロールなど、人間らしさの源泉ともいえる前頭葉は、睡眠不足だと血流が悪くなり、扁桃体の原始的な気持ちがコントロールされずに表に出やすくなってしまうからです」(坪田先生/以下同)。

睡眠で心身を安定させるには、2つのホルモンが大切といいます。

「脳から分泌される『睡眠ホルモン』と呼ばれるメラトニンは、体内時計に働きかけて、覚醒と睡眠を切り替え、自然な眠りへと誘う作用があります。このメラトニンの原料となるのが『幸せホルモン』と呼ばれるセロトニンで、これには精神が安定する・安心を感じる・自律神経を整えるなどの効果があります。このセロトニンは、日中に太陽光を浴びたり、簡単なリズム運動をしたり、人とのスキンシップで分泌される『愛情ホルモン』のオキシトシンが増えると分泌されます。ですので、日中に運動や日光浴などしてセロトニンを作っておき、睡眠でメラトニンを増やしてよく眠ると、心身が安定するという好循環が生まれるのです」

国民病といわれる不眠症はうつ病予備軍⁉

作業中にあくびをする女性

ストレスや不安・悩みなどから、“眠ろうとしても眠れない……”ということは、誰にでもあるはず。「しかし、それが長期間続くと、倦怠感、意欲低下・集中力低下・抑うつ・頭重・めまい・食欲不振など、さまざまな不調が体に現れます。このように、夜の不眠が続き、日中に精神や体の不調を自覚して生活の質が低下していることが認められたとき、不眠症と診断されます」

ただ、不眠症といっても、寝つきが悪い(入眠障害)だけではないそう。

「眠りが浅く途中で何度も目が覚める(中途覚醒)、早朝に目覚めて二度寝ができない(早朝覚醒)、眠りが浅く、睡眠時間のわりに熟睡した感じが得られない(熟眠障害)があり、人によっては、これらの症状が複数現れることもあります」

一般成人の30~40%が何らかの不眠症状を感じており、不眠症は国民病ともいわれています。この不眠症は男性より女性が多いともいわれています。

「じつはうつ病患者の9割以上は不眠に悩んでいるというデータがあります。残りの1割が日中に強い眠気が生じる過眠症です。また、ある調査では、不眠症状がない人のうつ病のなりやすさを1とすると、不眠症状があったものの、きちんと治療を受けた人のうつ病のなりやすさは1.6とかで、ほとんど有意差はありませんでした。しかし、不眠症状をほったらかしにしていた人のうつ病のなりやすさは数倍〜30倍以上という結果になったといいます。このことから、不眠はうつ病の原因や初期症状である可能性が高いといえます。しかし、逆に言えば、睡眠障害を治してぐっすり眠ることで、うつ病になるリスクを減らすことができるといえます」

ストレスからくる不眠を解消する4つの方法

キャンドルやヨガマット

では、不眠症状を解消するには、どうすればいいのでしょう。

「不眠の原因には、ストレスのほか、体の病気や心の病気、そのほかの睡眠障害などそれぞれあり、対処法も異なります。そこで今回は、ストレスが原因の対処法を伝授したいと思います。まず、布団に入るまでに、なるべくその問題を考えないようにしたほうがいいのですが、『考えないでおこう』と考えること自体、その問題にとらわれていることになります。脳は一度にひとつのことしか考えられないので、イヤなことを考えるのではなく、自分が幸せになることなど、できるだけ気分転換できることをしましょう。

たとえば、ゆっくりお風呂に浸かったり、アロマを焚いて、好きな音楽をきいたり、ストレッチやヨガなど軽い運動をしたりするのもおすすめです」

「寝る直前まで悩みやイライラなどを引きずりがちな人は、『モヤモヤノート』を書きましょう。帰宅後、ノートにイヤだったことをすべて書き出します。どんなネガティブな内容でも、あなた以外は誰も見ないノートですから、思いのたけを好きなだけ書きなぐりましょう。そして書き終えたら、ノートを閉じて引き出しにしまいます。その際に、『はい、今日はこれでおしまい』と、締めくくりの言葉をはっきりと声に出します。これによって気持ちに区切りがつき、寝る前にモヤモヤすることがなくなります」

「一方、ポジティブな気持ちになれる方法でしたら、『スリー・グッド・シングズ』があります。これは、今日あった3つのよかったことを記録する方法です。茶柱がたったとか、信号が青でスムーズに渡れたとか、おいしいご飯が食べられたなど、些細なことで構いません。これを続けると、物事のよい面に目が行くようになり、幸福度が上がります」

「このほか、夜に考えすぎてしまう人には、『寝逃げ』という方法もあります。布団の中で問題と向き合うよりも、『もう寝ちゃおう』と現実から逃げたほうが、解決策が思い浮かぶことがあります。実際に、朝起きたら解決策が思い浮かんだという経験がある人は多いはずです。人の脳はレム睡眠中に、起きていた時間にストックした情報から自分に必要なものだけを抜き出して再処理しています。そして、新しい記憶が整理され、古い記憶と結びつくことで、新たなアイデアが浮かぶのです。この手法を利用した人として、発明家のエジソンや、ノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹博士が有名です。やり方は、あせったりして眠りに執着せず、解決したいことをきっちり頭の中で整理できたら、あとは寝るだけです」

自分の潜在能力を信じて、寝てみてください。

「ただし、布団に入って30分以上眠れないときは、まだ心身ともに『寝るとき』ではない、と考えて思い切って布団から出ましょう。そして、ホットミルクやハーブティーを飲んだり、クラシックやヒーリング音楽をきいたり、ストレッチをして滞っている血行をよくしたりして、眠気を待ち、眠くなったら布団に戻れば問題ありません」

不安やあせりで眠気がなくなるほど、人の心は繊細です。それを理解し、寄り添いながら、ムリのない範囲で不眠症状を取り除く行動をとりましょう。

次回は、睡眠が脳の疲れをとるメカニズムや対処法についてお届けします!

取材・文/奥沢ナツ

ヘルスケアトレンドの詳細は下記をご覧ください。
*FYTTEヘルスケアトレンド2023特設サイト:https://fytte.jp/trend2023/

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