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睡眠専門医が答えます! 心のモヤモヤも睡眠で解決できる? 即寝の方法は? etc…[後編]
「FYTTEヘルスケアトレンド2023」で、注目のトレンドワードのひとつになっている「リカバリータイム」。これまでも睡眠や休息は関心の高いテーマでしたが、コロナ禍での免疫力やメンタルヘルスへの影響が高まって、メガトレンドになっています。今回は、後編として、睡眠でリカバリー(休息・回復)する素朴な疑問を、睡眠の専門医である坪田聡先生に答えていただきました。
Contents 目次
なかなか眠れない人必見!入眠しやすくなるアイデア教えます!
Q.寝たらイヤなことは忘れちゃうという人がいるけど、心のモヤモヤも睡眠で解決できるの?
A.「イヤなことを思い出して眠れなくなり、睡眠不足になってしまうと、抑うつ状態になってくるので、物事を悪く考えやすくなってしまいます。そうすると悪循環にハマってしまいます。逆にたくさん寝て頭がスッキリすれば、ポジティブに考えられるし、解決策も浮かんできやすくなります。
たとえば、100m走の記録をとるのに、マラソンをした直後に100m走っても、いい記録は出ないですよね。同じように、夜寝る前は、いちばん頭が疲れているときなので、そこで考えてもいい案が浮かぶわけありません。
そんな人におすすめなのは、寝る前に、解決したいことをきっちり頭の中で整理して、あとは解決したあとの自分の姿を考えて眠るという『追想法』または『レミニセンス』と呼ばれている問題解決手法です。これは、発明家のエジソンや、ノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹博士も行っていたことで有名です。寝ている間に古い記憶が整理されて、新しい記憶と結びつくことで、新たなアイデアが浮かぶといわれています。寝る前はイヤなことをいつまでも考えず、明日の自分にすべてをまかせるくらいの気持ちで眠りましょう」(坪田先生:以下同)
Q.体も頭(脳)も疲れているはずなのに、眠れない……のはどうして?
A.「これは、頭が興奮している状態だからです。体をコントロールしている自律神経には、体を活動的にする『交感神経』(昼の神経)と、体をリラックスさせる『副交感神経』(夜の神経)がありますが、ストレスを抱えると自律神経がうまく働きません。眠ろうとしても自律神経のスイッチが昼のままでは、心身が興奮・緊張した状態なので、眠れないのです。スムーズに眠りにつくためには、夜の神経である副交感神経にスイッチを切り替えなければならないのです。
布団に入って15分たっても眠れなかったら、一度布団から出て、リラックスして過ごしましょう。眠れないまま布団にいると、『布団=眠れないところ』と条件づけられてしまい、不眠につながってしまいます。『布団=眠れる場所』というイメージを持てるように、ワンルームの場合は、寝るとき以外は、ベッドカバーをかけておき、寝るときにカバーをはずしてはじめて布団が見えることで、『布団=眠り』の印象を強くしましょう。
眠れないときは、ホットミルクやハーブティを飲んだり、ストレッチや腹式呼吸をしたり、好きな音楽を聴くとか、本を読むなど、何も考えずにできることをするのがおすすめです。そして、気持ちが落ち着いてきたら、再び布団に戻りましょう」
Q.即寝するための、具体的な方法ってあるの?
A.「即寝とは、布団に入ってから5分以内に入眠することをいいます。即寝のメリットは、眠れないというムダな時間をかけずに睡眠時間を確保できるだけではなく、ノンレム睡眠への導入時間が短くなり、良質な睡眠ができるようになります。
即寝するには、寝る1時間前からブルーライトが出ているテレビやスマホ、パソコンなどを見ないようにして暖色系の照明で過ごし、夏の寝室の室温は26度、湿度は50~60%にしておくことです。
このほか、おすすめは、『スリープ・セレモニー』です。これは『入眠儀式』とも呼ばれ、『歯を磨く』『トイレに行く』『パジャマに着替える』など、寝る前に必ず行う習慣を決めておくことです。そうすることで脳は、『この行動をするということは、そろそろ眠るんだな』と、意識づけられ、自然に眠気を促します。『パブロフの犬※』と同じ原理ですが、軽い気持ちでまずは1週間続けてみてください」
※『パブロフの犬』の原理とは…犬にエサを与える都度特定のベルを鳴らして聞かせる。それをくり返していくと、エサを与えなくても、そのベルの音を聞いただけで、唾液が分泌される、という現象。「条件づけの理論」とも呼ばれている。
Q.CBDが睡眠に効果的って本当?摂取量や副作用は?
「海外セレブたちが愛用していると話題のCBD(カンナビジオール)とは、大麻からとれるカンナビノイドという成分のひとつです。大麻草の茎や種子から抽出されますが、精神へ与える作用や中毒性がないことで知られ、医療や健康分野で関心を持たれています。
大麻草由来の成分ですが、日本で発売されているCBDは、厚生労働省に証明されているため、合法で販売可能です。作用としては、健康な大人のストレス緩和や、リラックス作用、不眠の緩和や、皮膚の抗炎症効果などがあります。摂取の仕方は、口の中から摂取するCBDオイルや食べ物として摂取するCBDガムや、CBDクッキー、ガスとして摂取するCBDリキッドや、皮膚から摂取するCBDクリームなどがあります。
これは薬ではないので、どのくらいで人に効くかわからないところがありますが(英国食品基準庁によると、CBDの摂取量の上限は健康な大人で1日70㎎。70㎎以上だと健康に有害な影響が出る可能性があるとのこと)、摂取量を守ったうえで、不眠がある人は試してみるのはありだと思います。試してみて、不眠が軽減されるのでしたら、その人に合っているのだと思います」
Q.睡眠の専門医としておすすめする睡眠アイテムはありますか?
A.「睡眠に悩んでいる人、良質な睡眠をとりたい人におすすめしたいのが、睡眠リズムを測定し、睡眠の浅いときに起こしてくれる目覚ましグッズです。目覚まし時計タイプのほか、スマホのアプリやスマートウォッチなどいろいろあります。これらは、自分の体内時計に合わせて目覚められるため、朝はもちろん、1日中気持ちよく過ごせます。ただし、これらの目覚ましグッズは、睡眠リズムを優先するため、睡眠時間が短くなってしまうことがあります。ですので、しっかり、睡眠時間を確保できるように気をつけてください」
即寝・即起きできるようになれば、睡眠効率が高まり、睡眠の質も高めることが可能になります。まずはできることから試してみて、睡眠で質のいいリカバリーを目指してみてください。
取材・文/奥沢ナツ
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*FYTTEヘルスケアトレンド2023特設サイト:https://fytte.jp/trend2023/