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歯ぎしりはやめられる? “スマホ顎関節症”ってなに? 歯科医が解説、気になる歯やあごまわりのトラブルと対策

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歯ぎしり

上下の歯をギリギリとすり合わせてしまう「歯ぎしり」。家族やパートナーに指摘されたことがあるという人も多いのではないでしょうか。いつものことと放っておくと、じつはさまざまな悪影響があるそう。今回は歯科医師の宮本日出先生に、歯ぎしりにまつわる疑問や、最近、増えているという“スマホ顎関節症”についてお聞きしました!

監修 : 宮本 日出 (歯科医師・歯学博士)

みやもと・ひずる 歯科医師、歯学博士、幸町歯科口腔外科医院・院長。
日本顎関節学会・代議員・指導医・専門医、厚生労働省歯科医師臨床研修指導医、その他、大学・学校の教官職等多数。国内外に160篇以上の論文を発表、複数のメディアにも登場している。

Contents 目次

歯ぎしりをしてしまうのはなぜ?

歯ぎしり

歯ぎしりをするのは、寝ているときだけではありません。じつは、起きているときに歯ぎしりをする人もいます。頻度や強弱は異なりますが、かなり多くの人が歯ぎしりをしていると考えられています。しかし、「自分が歯ぎしりをしている」と自覚しているのは、全体のわずか8〜16%というデータも。無意識に行っているため気づきにくく、周囲から指摘されて初めて自覚するという人も少なくありません。特に起きているときの歯ぎしりは、「癖」のようなもの。日中に無自覚で行っている人が多いのです。

歯ぎしりのタイプ

ちなみに、歯ぎしりは、3つの種類に分類することができます。1つ目は、ギリギリと上下の歯をすり合わせてしまう「グラインディング」、2つ目はカチカチとぶつけ合う「タッピング」、3つ目がグーっと強く噛み締める「クレンチング」。一般にグラインディングのことを「歯ぎしり」と認識している人が多い印象ですが、じつはさまざまなタイプがあります。

では、なぜ歯ぎしりをしてしまうのか。その原因のひとつは、「ストレス」といわれています。たとえば、貧乏ゆすりをしている人は、「体を揺らしたい」のではなく、「ストレスを発散するため」に体を揺すり動かしてしまうのですが、歯ぎしりもストレスをためないようにしようという体の防御反応の一種。コロナ禍の外出自粛など、行動が制限された際には、欧米で「歯ぎしりが増えた」という研究論文が出ていることからも、ストレスと歯ぎしりは密接した関係にあるといえます。

肩こり、老け顔、歯周病…じつは歯ぎしりが関係!? 対策は?

肩こり

一般に歯ぎしりをすると、その人の体重と同じくらいの力がかかるといわれています。

長期間、歯ぎしりをし続けると、歯や歯茎にダメージを与え、歯周病を引き起こしたり、症状を悪化させたりする可能性があります。また、肩こりや頭痛などの一因にもなりかねず、上下の歯を強い力で擦り合わせることで、徐々に歯が削れて短くなり、老け顔に見えたり、咬筋といわれるあごの筋肉が肥大し、ほおの下部が下膨れのように張って大顔になったりするケースも。

睡眠中などに無意識にしてしまう癖だけに、自分で意識してやめるのはなかなか難しいもの。主な対策としては、歯への負担を緩和するために、歯科クリニックでは、寝ている間にマウスピースの使用をすすめることが多いのですが、ただ、歯ぎしりそのものがなくなるわけではありません。歯にかかる負担を多少軽くするという対処療法的なものになります。

そこで、最近では「ボツリヌストキシン注射」を活用し、筋肉の動きを抑える治療も増えてきました。ボツリヌストキシン…いわゆるボトックス注射をすると筋肉が眠った状態になるため、歯ぎしりは起きにくく、歯へのダメージはもちろん、あごの筋肉の肥大やこわ張りを抑えることができるのです。ただ、ボトックス治療は自費診療になり、何度かくり返さなければいけません。処置後は効果が持続しますが、徐々に効果が薄れていくため、くり返し注射をする必要があります。5回程度打つことで歯ぎしりが落ち着いたという人もいますが、個人差があるということを意識しておきましょう。

最近、増えている“スマホ顎関節症”って?

猫背

顎関節症はあごの関節や筋肉に負担がかかり過ぎてあごに痛みが生じたり、口があけにくくなったりする病気です。歯ぎしり、猫背、ストレスなどが原因となりますが、じつは最近、スマホの見過ぎによってあごや口まわりの不調を訴える人が増加していて、“スマホ顎関節症”という言葉が注目されています。

スマホを見ているとき、猫背でうつ向きがちの姿勢になっていませんか? 人は頭が前に倒れた姿勢のとき、上下の歯を当てて下あごを安定させようとします。前を向いているときは、上下の歯に1〜2mmの隙間が空いていますが、スマホを見ているときは、上下の歯が当たった状態。些細なことではありますが、この姿勢があごに負担を与え、なんと顎関節症のリスクを2倍に増やしてしまうことがわかったのです。

従来の顎関節症は、特に女性ホルモンの変化が起こる20歳と40歳以上の女性に顕著に見られる症状でした。しかしコロナ禍によって増加した“スマホ顎関節症”は、子育て世代の30代女性にも多く見られるように。外出の機会が減少したことで、自宅でスマホを見ている時間が急増し、ここ2、3年、顎関節症の症状を訴える人が目立ってきているように感じます。

リフレッシュ

そこで、予防のために推奨したいのは、「15分ごとに、スマホを置いて背中を広げること」。動画の視聴やネット検索など、長時間スマホを見続けてしまうようなら、リマインダー機能を活用し、意識して定期的にうつ向き姿勢をリセットしましょう。お風呂に入ったとき、湯船で口を大きく開けて、かたまった筋肉とあごの関節を動かすのも効果的ですよ。

*****
歯ぎしりや顎関節症は、早めの対策が大切。「もしかして…?」と不安に感じたら、かかりつけの医師に相談しましょう。

文/佐藤有香

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