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脱マスクで、歯並びが気になったら? 歯科医師が解説! 知っておきたい「大人の歯列矯正」と口腔ケアのポイント

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歯並び

脱マスクによって、これまでにも増して口元や歯並びが気になる人も多いのではないでしょうか? 以前は歯の矯正は子どものころに行う傾向にありましたが、近年、「大人の歯列矯正」に注目が高まっています。そこで今回は大人の歯列矯正や最近のオーラルケア事情について、歯科医師の宮本日出先生に教えていただきました。

監修 : 宮本 日出 (歯科医師・歯学博士)

みやもと・ひずる 歯科医師、歯学博士、幸町歯科口腔外科医院・院長。
日本顎関節学会・代議員・指導医・専門医、厚生労働省歯科医師臨床研修指導医、その他、大学・学校の教官職等多数。国内外に160篇以上の論文を発表、複数のメディアにも登場している。

Contents 目次

歯列矯正は何歳になってもできるの?

歯列矯正

歯列矯正は歯やあごの骨に力をかけてゆっくりと動かすことで歯並びや噛み合わせを整え、バランスのとれた口元にする治療で、基本的に何歳になっても行うことは可能です。ただ、たとえば、重度の歯周病で歯を支える骨がなかったり、骨粗しょう症などであごの骨がもろかったりすると、歯列矯正を行えない場合もあります。自分の歯並びに悩みや違和感がある場合は、まずはかかりつけの歯科医師に相談するのがよいでしょう。

矯正は歯並びだけではなく、ときにはあごの調整が必要になるケースもあります。顔には「ゴールデンプロポーション」と呼ばれる黄金比率があり、基本的には左右対称のバランスが美の基準となっています。医師はこの比率を整えるための提案を行い、歯並びを含め、あごの骨を調整する手術を行うことでゆがみをとり除いていくのです。「どこをどのように治すべきか」は自身で見極めるのは難しいため、専門の医師のもと客観的に判断してもらうことが大切です。

そして、気になるのが費用だと思いますが、矯正は基本的に自由診療なので高額になります。「よりきれいな見た目になるため」という審美的な改善を主な目的とした治療と判断されているため、健康保険の適用にはならないのです。現在、保険適用となるのは厚生労働省が定める疾患のみ。唇顎口蓋裂(しんがくこうがいれつ)などの先天性異常や顎変形症など噛み合わせに深刻な問題があり、明らかに食べることが困難と判断される場合に限定されています。

それぞれの治療法、メリット、デメリットは?

歯列矯正

歯並びを改善するための代表的な治療法として、「針金治療」と「マウスピース治療」が挙げられます。針金治療は、歯にブラケット(ボタン)つけて針金で結び、時間をかけて歯を動かしていきます。「ブラケットが気になる」「ていねいなブラッシングが必要」などの難点もありますが、専門医が直接治療を施すため、得られる安心感は大きいでしょう。

マウスピース

対してマウスピース治療は、患者さんご自身での管理が必要となります。針金治療に比べて目立ちにくいことから、マウスピース治療を選ぶ人が増えていますが、正しく管理しなければ効果は得られません。基本的なルールは、1日20時間以上、マウスピースを装着すること。しかし、着脱のタイミングは患者さんに委ねられているため、着けていない時間が長くなると、改善が見られず治療期間が延長してしまうケースも珍しくありません。自分のライフスタイルやセルフケアなども考慮して、どのような方法がよいか検討していきましょう。

また、歯科クリニックを選ぶ際は歯科医と患者さんとの関係性が大切です。矯正の治療は年単位にわたるもの。装置の異物感や矯正過程に生じる痛みに加えて、ケアの面倒くささとも向き合わなければいけません。だからこそ、カウンセリングの段階で「自身が安心して任せられるかどうか」を判断してほしいと思います。

「国民皆歯科健診」でオーラルケアはどう変わる?

歯科健診

これまで大人の歯列矯正についてお話ししてきましたが、じつは日本人はオーラルケアに対しての意識が薄く、歯科健診の受診率も低い状況です。知らず知らずに歯周病が進行している人も少なくありません。

歯周病は糖尿病や認知症などの全身疾患の発症の一因となり、悪化を助長させることが明らかになっており、アメリカの歯周病学会では「体の100以上の病気と歯周病が関連している」と発表しているほど。新型コロナにおいても、歯周病がある場合の重症化リスクは4.7倍ともいわれていました。それほどに歯周病は恐ろしい存在なのです。

こうしたことから、現在、政府では「国民皆(かい)歯科健診」の導入を検討しています。これは毎年の歯科健診を義務づける制度で、歯周病を予防・ケアすることで、全身にかかわるさまざまな病気を未然に防ぐことを目的としたものです。病気を予防することができれば、将来的に医療費の負担を軽減することにもつながります。

従来、予防や健診は「保険が適用されない」のがスタンダードでした。しかし、国民皆歯科健診では保険で受けることが可能となります。制度の導入により、歯医者をもっと身近に感じてもらい、オーラルケアへの意識を高めてもらえたらうれしいです。

文/佐藤有香

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