赤ちゃんが正常な体重で産まれてくるのは望ましいですが、ときには低出生体重で生まれることもあります。そうした場合には赤ちゃんの体への影響も心配されます。このたび海外研究より、妊娠中のお母さんの過ごす環境の空気が赤ちゃんの出生体重に影響すると報告されました。この研究によると、緑の多い地域に住んでいると赤ちゃんの出生体重が高くなるうえ、大気汚染の影響を和らげる効果が期待できるといいます。
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居住地域の“グリーン度”を測定
出生体重が低い場合に、影響が出てくることのひとつが肺の機能だといいます。肺の健康な発達は赤ちゃんが子宮で成長している期間が重要で、低出生体重の場合にはその影響が肺に現れやすいようです。具体的には、肺の感染症にかかりやすくなり、その後の喘息や閉塞性肺疾患につながるリスクが高くなるというのです。
今回、欧州の国際的な研究グループは、妊娠中のお母さんの大気環境と赤ちゃんの低出生体重および早産との関連性について調べ、欧州呼吸器学会(ERS)で研究結果を発表しました。
研究グループは、北欧5か国で行われている大規模な長期追跡調査の参加者から、2800人近くの母親とその子ども5000人ほどのデータを調べました。母親が妊娠中に住んでいた場所の衛星写真に基づいて、植生(森林や農地、公園など)の密度の測定により緑の豊かさを判定するとともに、汚染物質(粒子状物質、二酸化窒素、オゾン、ブラックカーボン)のレベルを確認。そのうえで、母親の年齢や喫煙、健康状態などを考慮して、子どもの出生体重との関連性を分析しました。
基準以内の大気汚染でも影響か?
欧州呼吸器学会(ERS)で報告された研究結果によると、大気汚染のレベルが高いと出生体重が低いという関係が見られると指摘。粒子状物質、二酸化窒素、ブラックカーボンが存在すると、それぞれ46〜56g低い出生体重になるという関連性についても説明しています。
また、緑の豊かさを分析に加えると、大気汚染による出生体重の減少が軽減されたうえ、より“グリーンな”地域に住んでいた母親の子どもは、出生体重が若干高い(平均27g)こともわかったそうです。
母親が住んでいた場所の大気汚染の平均レベルは欧州連合の基準範囲内であったことから、比較的低いレベルの大気汚染でも、低出生体重につながる可能性があると研究グループは指摘。緑がより豊かな環境に住むことで、この影響を緩和できそうと結論づけています。日本においても妊娠中の環境を考えるうえで参考になるかもしれません。
<参考文献>
Mums exposed to air pollution give birth to smaller babies, but living in a greener area may mitigate the risks
https://www.ersnet.org/news-and-features/news/mums-exposed-to-air-pollution-give-birth-to-smaller-babies-but-living-in-a-greener-area-may-mitigate-the-risks/
Preconception air pollution/greenness exposure and pregnancy outcomes:The Life-GAP Project
https://k4.ersnet.org/prod/v2/Front/Program/Session?e=379&session=16572
expert reaction to unpublished abstract and poster on air pollution and birth weight
https://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-unpublished-abstract-and-poster-on-air-pollution-and-birth-weight/