コロナ禍を経て、免疫力が下がったと感じることはありませんか。風邪を引きやすかったり、不調が出やすかったり。病気になる前に、体は免疫力が低下していることを知らせようとサインを発しています。今回は、小林弘幸先生の『名医が教える 免疫力が上がる習慣』より、免疫低下のサインをお伝えしていきます。
Contents 目次
やる気が起きないときは免疫力も低下している⁉︎
やる気が出ない、無気力といった精神的な不調も免疫力が低下していることを知らせる体からのメッセージかもしれません。
「私たちの体は、免疫、内分泌系、神経系という3つのシステムが相互に作用することで、心も元気な毎日を送れるようになっています。このシステムの最大の敵といえるのが精神的なストレスです」(小林先生)
1日のなかで何度もイラッとしたり、落ち込んだり、心にダメージを受けることがありますが、しばらくすると元気になれるのは、この内分泌系と神経系が連携してストレスを和らげてくれるホルモンを分泌しているから。
ところが、いつまでたってもまったくやる気が起きなかったり、ふさぎ込んでしまったりなどなかなかポジティブな気持ちになれないのは、このストレスに対応するためのシステムに問題が生じている可能性があります。
「ストレスを和らげるホルモンが増えすぎると、相互に作用しているシステムのバランスが崩れて、免疫力が低下してしまいます。またストレスで神経系が乱れることでも免疫力が低下することがわかっています」
やる気が出ない無気力といった症状が出た場合は、ストレスによって免疫が低下している可能性があります。
肌荒れも免疫低下のサイン
免疫力の低下は肌にも現れます。肌荒れや吹き出ものなどトラブルが続いていませんか。
「肌は常にウィルスや細菌、ほこりなどの異物にさらされています。そのためいつも異物が侵入してきていないか監視していて、発見したらその場で侵入を阻止しています。この働きを肌の“バリア機能”といいますが、免疫力が低下してバリア機能が弱まると異物に簡単に突破されるようになり、それが肌トラブルの原因になります」
適切なスキンケアをしても悪い状態が続くようだったら、免疫力の低下を疑ってもよいでしょう。肌ダメージが蓄積されると、しだいにあと戻りできない肌老化へとつながってしまいます。
しつこい首や肩のこりもじつは…
マッサージやストレッチをしても、しばらくするとまた戻ってくる首や肩のこり。これも免疫力の低下が原因になっている場合があります。
「こりとともに痛みが続くときは、免疫力の低下の疑いがさらに強くなります。痛みは炎症が拡大しているときに発生する症状であり、痛みがしつこく続くということは免疫が十分に能力を発揮できず、炎症がひどくなっていることが考えられるからです」
また、痛みが続くと肉体的なストレスを和らげるホルモンが大量に分泌され、精神的なストレスのときと同じように免疫力を低下させることになります。
便のチェックで免疫の調子がわかる
免疫細胞の7割は腸に存在しており、腸は免疫の拠点となるところ。腸内環境は善玉菌、悪玉菌、日和見菌のバランスがよく、腸内細菌の多様性が高いことが理想です。
「細菌の種類が減ってこのバランスが崩れると腸内環境が悪化し、免疫が低下する原因になります。また腸内環境が悪くなると、免疫が暴走するリスクも高くなります。実際に新型コロナウイルス感染症で重症化した人と健康な人の腸内細菌の状態を比べたところ、重症化した人は菌の種類が減少していたという報告があります」
免疫が暴走することで起こるのがアレルギー症状です。
そして腸内環境の状態は便でもわかります。よい状態では便はバナナのような形状で黄色から黄褐色の色味をしていて水に浮きます。逆に悪ければガチガチのかたまった黒っぽい便だったり、液体状でゆるかったり、下痢が続いたりします。悪い便の状態なら、免疫力が低下している可能性があります。
免疫は体のさまざまな機能が絡み合っているため、数値化は難しいものの、血液検査で“免疫グロブリン”の量を測定することで把握することもできるそうです。免疫力が気になる人は、食事や運動など毎日の生活から免疫を高める“免活”を意識していきましょう。
文/庄司真紀
参考書籍/
『名医が教える 免疫力が上がる習慣』(アスコム)
著者/小林弘幸
こばやし・ひろゆき 順天堂大学医学部教授。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。1960年、埼玉県生まれ。87年、順天堂大学医学部卒業。92年、同大学大学院医学研究科修了。順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した「腸のスペシャリスト」。さらに、腸と密接なかかわりをもつ、自律神経研究の第一人者として、プロスポーツ選手、アーティスト、文化人へのコンディショニング、パフォーマンス向上指導にかかわる。『医者が考案した「長生きみそ汁」』(アスコム)などベストセラー多数。「世界一受けたい授業」(日本テレビ)などメディアにも多く出演している。
監修者/玉谷卓也
たまたに・たくや 薬学博士。日本免疫学会評議員。順天堂大学非常勤講師。創建協会取締役。
1988年、筑波大学医科学修士課程修了。2008年に順天堂大学医学部客員教授に就任。2020年、任期満了に伴い現職。この間、武田薬品工業、ソニー、エムスリーにも兼務。主な専門領域は、免疫学、炎症学、腫瘍学、臨床遺伝学。20年以上、免疫、がん、線維症、アレルギー、動脈硬化などの研究に従事。