マスクの着用が個人の判断にゆだねられて以降、マスクをはずす機会が増えました。そこで気になるのが口臭や歯の着色など、今までマスクで隠れていた部分のお手入れ。そこで今回は、たくさんのオーラルヘアケアアイテムを試してきたという現役の歯科衛生士の竹内里奈さんに、現在愛用しているアイテムを教えていただきました。歯ブラシや電動歯ブラシ、歯みがき粉やマウスウォッシュ、デンタルフロスやガムなどのアイテムの、選ぶ基準や正しいケアの方法など、目からうろこの内容です!
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毎日使う歯ブラシは、高くなくてもOK!
歯ブラシは、ドラッグストアなどの売り場で、ヘッド(植毛部)の大きさや形、毛の硬さなど、たくさんの種類があり、「どれを選べば……」と悩む人も多いはず。
「私が使っている歯ブラシは、『クリニカアドバンテージハブラシ』の『4列超コンパクト』の『ふつう』タイプです。(※写真上) ヘッドがすごく薄いうえ、先端が細くなっているのが特徴です。ここまでヘッドが薄いと、奥歯の奥に、親知らずがある人でもしっかり届いてとてもみがきやすいと思います。
前回もお話しましたが、歯ブラシの選び方で大切なのは、ヘッド部分の薄さと毛の硬さです。歯ブラシの毛はかため・ふつう(レギュラー)・やわらかめの3タイプがありますが、“かため”は歯ぐきを傷つけたり、歯ぐき下がりの原因になることもあるのであまりおすすめはしていません。歯ぐきは肌と同様、ゴシゴシ洗ったりせず、やさしく洗うのがポイントです。歯ぐきの状態が健康な人は“ふつう”の歯ブラシを、歯ぐきに炎症や出血がある人は、“やわらかめ”を選んでください」(竹内さん)
歯ブラシ売り場には、さまざまな価格帯のものが並んでいて悩みますが…。
「高いからいいというものではありません。自分の歯や歯ぐきの状態や悩みに合ったものを選んで、1日1回は時間をかけてていねいに歯みがきできれば、安い歯ブラシでも問題ありませんよ」
短時間で効率よく歯みがきができる、電動歯ブラシ編
手みがきより短時間で効率よく歯垢を落としてくれる電動歯ブラシ。ひとくちに電動歯ブラシといっても、回転式、音波式、超音波式などがあり、価格も安いものではないため、選ぶのがむずかしいアイテムです。
「私はフィリップスの『ソニックケアー』を使っています。振動がすごく微細で、汚れが取れやすいんです。通常の電動歯ブラシだと上の歯をみがいてるときに、下の歯にヘッドが当たると歯に振動が響くことがあるのですが、『ソニックケアー』はヘッドの背面がゴムになっているので、みがいているときにほかの歯に当たっても響く感じがないのも魅力です。あわただしい朝や昼は普通の歯ブラシでみがいて、夜は電動歯ブラシで歯ぐきやほっぺたの内側をマッサージするようにていねいにみがく用として使い分けています。
たとえば、1日に5回、30秒くらいずつみがくという人と、1日に2回しかみがかないけど、そのうちの1回は5分くらいかけてじっくりとみがく人を比べた場合、後者のほうが虫歯や歯周病になりにくいことがわかっています。要するに、“歯みがきの質”がすごく大事ということです。ですので、1日1回夜は歯ブラシで時間をかけ、ていねいに時間をかけてみがくようにしています」
ただし、電動歯ブラシを使う前に、基本的にはふつうの歯ブラシでしっかりみがけていることが大前提であると、竹内さん。
「歯ブラシと電動歯ブラシとでは、みがき方や、力の入れ方などがちがってきます。電動歯ブラシは、持っているだけですごく振動しているので、これを手みがきのように動かしてしまうと、過度に力が入り、歯ぐきに過度に負担がかかる状態になってしまいます。すると、歯ぐきがやせてしまうので要注意です。電動歯ブラシを導入するとしても、自分の歯みがきの仕方が自分の歯に合っているか歯科医院でチェックしてもらい、正しいみがき方で手みがきと併用するのをおすすめします」
フッ素入りはマストの歯みがき粉
歯みがき粉も売り場にたくさんの種類が並び、迷いやすいアイテムです。
「じつは、学生の頃からサンスターの『ガム』シリーズが好きで、歯みがき粉は現在は『ガム・プラス デンタルペースト ハーブミント』を使っています。成人の7~8割が歯周病といわれている中で、自分が歯周病かどうか、どの程度、歯周病になっているかは歯医者に行かないとわかりません。自覚症状が出る前に手を打ちたいなと思ったときに、先まわりして殺菌・ケアしてくれるのが『ガム』でした。『ガム・プラス』は、従来のガムシリーズでは届かなかった歯周病菌の増殖原因に着目したもので、増殖をおさえる殺菌アプローチがプラスされています。
また、歯みがき粉には虫歯予防に欠かせないフッ素入りであることも重要です。歯医者さんで塗布できるフッ素の濃度は9,000ppmですが、市販されている歯みがき粉で、含有できる最大濃度は1,450ppmです。この『ガム・プラス』は1,450ppmの高濃度フッ素なのも選んだポイントでした。
歯みがき粉も、虫歯予防、歯周病予防、口臭予防、知覚過敏用、ホワイトニング用など、いろいろありますが、自分の歯の状態や悩みに合ったものを選ぶのがいちばんです。ふだんは歯周病予防の歯みがき粉を使っていても、歯の着色が気になったら、ホワイトニングできるものをサブで使う、など使い分けをしてもいいと思います」
習慣化してほしいデンタルフロス
歯ブラシだけでは取りきれない歯間の汚れを取り除いてくれるのが、デンタルフロスです。
「歯みがき粉と同じサンスターの『ガム・デンタルフロス[ワックス ふくらむタイプ]』を愛用しています。デンタルフロスには、ワックス加工のあるものとないものがありますが、ワックス加工がされていると、すべりがよくなり、扱いやすいメリットがあります。一方、ワックス加工がないタイプは、歯垢除去効果が高いといわれています。『ガム・デンタルフロス[ワックス ふくらむタイプ]』は、ワックス加工ありで水を含むとふくらむタイプです。歯垢をしっかりからめ取りやすく、とても便利で気に入っています」
デンタルフロスには、糸の長さを自分で調節できる糸巻きタイプのものと、持ち手があるホルダータイプがあります。ホルダータイプには、前歯に使いやすいF字型と、前歯はもちろん、奥歯にも使いやすいY字型があります。
「デンタルフロス初心者にはY字型がお掃除しやすくおすすめです。自分の歯並びや使いやすさを考慮して選んでください。歯と歯の間のすき間が点接触している部位には歯間ブラシ、面接触してる部位にはデンタルフロスを薦めます。自分の歯の部位の状態に応じてデンタルフロスと歯間ブラシを使い分けてみましょう。
歯間ブラシには“4S~2L”までサイズがあり、サイズ選びが重要です。せっかく歯間ブラシを買ったのに、歯間に入らなくて捨てることになったというのはよく聞く話なので、購入する前に歯医者さんで自分に合うサイズを教えてもらうと確実ですよ」
「よく口の中の掃除の仕方を患者さんにお伝えするときに、『部屋の掃除と同じですよ』とお話させていただきます。部屋の床面を掃除するとき、掃除機をかけますが、口の中ではそれが歯ブラシになります。タンスとタンスの間とか、冷蔵庫の隙間を掃除するときは、掃除機のノズルを変えないと汚れはとれません。口の中でも同じで、隙間はデンタルフロスや歯間ブラシを使わないと汚れは取り切れないのです。この汚れが付いたままだと細菌のかたまりの歯垢(プラーク)となり、虫歯や歯周病、口臭の原因になってしまいます。ぜひデンタルフロスは1日1回(夜)でいいので、使ってください。
デンタルフロスは、歯と歯の間にただ入れて抜くだけでは効果はありません。歯と歯の間にデンタルフロスを入れ、ノコギリを引くときのように前後させながら、あまり力を入れずに通します。そして、手前の歯と奥の歯にそれぞれ少し添わせるように上下に動かし、両方の歯の面を掃除します。取り出すときもノコギリを引くときのように動かしながらゆっくり取り出すのがポイントです」
毎日するならノンアルコールタイプのマウスウォッシュを!
マウスウォッシュにも、虫歯や歯周病、口臭などを予防するいろんな種類があります。
「マウスウォッシュには、殺菌効果の高いアルコールタイプと低刺激のノンアルコールタイプがありますが、私はピリピリしないノンアルコール派です。これは好みで選んでいいと思います。ただ、アルコールタイプは刺激が強いので、短期間や週に2~3回使うのはいいのですが、毎日使うならノンアルコールタイプがおすすめです。
わたし自身は、今は歯みがき粉などとライン使いをしているのでマウスウォッシュも、『ガム・プラス デンタルリンス』を愛用中です。歯周病を予防してくれるこちらを使うと、朝起きたときの口内のねばつきなどが軽減されている気がします」
「お口の中の掃除を部屋の掃除と例えましたが、マウスウォッシュは口の中の換気だと思ってください。歯みがきやデンタルフロスを使って歯にくっついた固まったバイキンを崩して取り除いたあと、細かいバイキン(浮遊細菌)が口の中をまっているので最後に換気してバイキンを吐き出す意味でマウスウォッシュを使うのが最適です。
気をつけたいのは、マウスウォッシュをする頻度。やり過ぎてしまうと、必要な常在細菌までも殺菌してしまい、口内のバリアが手薄になってしまいます。そうすると、口が乾燥して病原菌などがつきやすくなってしまいます。口腔内の環境を乱す原因になるので、1日1回、寝る前に行うか、多くても1日2~3回にとどめるのがいいですよ」
口臭予防になる、舌みがき
口臭の原因のひとつとされている舌についた汚れ・舌苔(ぜったい)を取り除く舌みがき。
「舌みがきでいちばんしてはいけないのが、歯ブラシで舌までみがいてしまうことです。舌の表面には味を感じるセンサーがついていて、毛の長いじゅうたんのようになっています。これをブラシでゴシゴシこすってしまうと、傷ついて、繊細な味の変化に気づけなくなってしまうことも。なので、私はパフのスポンジのような約2mm厚のブラシ用毛材がついた、SHIKIENの『舌みがきスムーザーW-1(ダブルワン)』を使っています。これは総合病院などに入院されている患者さんにも使われている舌ブラシで、刺激が弱く、掃除もしやすいのが特徴です。ただ、菌が繁殖しやすいと思うので、歯ブラシ同様、1か月くらいで取り換えましょう。」
「舌苔(ぜったい)だけでなく、胃腸の調子が悪いときも白くなります。数回、お掃除してもとれないときは、ムリに取る必要はありません。舌みがきは、週に2~3回、多くても1日1回、汚れが気になるときにしましょう。
今の口の中の悩みや問題だけでなく、5年後、10年後も健康な歯でいるために大切なオーラルヘススケアとそのアイテム。歯みがきはもちろん、デンタルフロスや舌みがきなど、ぜひ歯科医院で自分にあった方法を習い、毎日の習慣にとり入れて、口もとに自信をつけていきましょう!
文/奥沢ナツ