風邪やインフルエンザが心配な季節。腸が免疫力に関わる重要な器官といわれることから、腸活に取り組んでいる人も多いかもしれませんね。11月開催のFan!Fun!FYTTE腸活部(オンラインクラス)では、消化器外科専門医の白畑 敦先生を講師にお迎えし、「お口から腸の健康を考えよう! 免疫ケアにも役立つ腸活の新常識腸」をテーマに、腸と免疫の関係、さらには最近注目されている口腔内環境と腸との関係をひも解きながら、腸活の最新情報を教えていただきました。その内容を2回に分けてお届けします。<前編>ではまず、腸と免疫の関係について詳しく見ていきましょう!
Contents 目次
腸内環境が免疫に及ぼす影響とは?
免疫とは具体的にいうと、“体内の異物や不要物の排除”と“傷の修復を保つ”仕組みのこと。
腸内には約1000種類、数でいうと100兆個を超える腸内細菌が存在し、バランスが保たれていると、免疫力にもよい影響を及ぼすとされています。
では、どのように免疫が働くのでしょうか?
「免疫細胞は骨髄のなかで生まれて血液やリンパ液を通って全身を巡りますが、その免疫細胞の約70%は腸に存在します (50%は小腸、20%は大腸)。なぜ免疫細胞が腸にあるかというと、腸には血管やリンパがたくさんあるからなのです」(白畑先生)
小腸では免疫の前線基地である「パイエル板」と呼ばれる器官が、大腸では「腸内細菌叢(腸内フローラ)」が免疫細胞と相互に影響し合います。
「小腸ではパイエル板、大腸では腸内細菌が間接的に血管やリンパのなかの免疫細胞を刺激して、免疫の働きを高めます。ヨーグルトの善玉菌が直接免疫になるのではなく、パイエル板や腸内細菌の働きを高めて、腸内の血管やリンパのなかの免疫細胞を強くするのです」
さらに、免疫で重要なのが免疫細胞でつくられる「免疫グロブリンA(IgA)」です。
「免疫グロブリンは免疫細胞によってつくられる抗体のことで、腸内環境をよくすると、『免疫グロブリンA(IgA)』がたくさんつくられます。IgAはほかの抗体に比べて抗原に対する特異性が低いため、さまざまな病原体に対応することができ、全身の粘膜で病原体の侵入を防いでくれます。そしてこのIgAの産生を増強するのが腸内の短鎖脂肪酸で、短鎖脂肪酸は免疫細胞を活性化させ、免疫を強くするという仕組みになっています。短鎖脂肪酸は大腸で腸内細菌が食物繊維やオリゴ糖を発酵させることで生成されます。IgAは短鎖脂肪酸の作用を受け、血流にのって全身を巡り感染症予防に貢献するのです。ですので、免疫力を高めるには、腸内環境を良好に保つのはもちろんですが、血流もポイント。腸内環境がよくても、血管がよくなかったり、腸内に病気があったりすれば免疫を高めるという目的は達成されないということになるので注意しましょう」
食事はシンバイオティクスを心がけよう
腸内には、ビフィズス菌や乳酸菌など体にプラスの働きをする「善玉菌」、ウェルシュ菌や大腸菌など体に悪影響を及ぼす「悪玉菌」、優勢なほうに味方する「日和見菌」がいます。
理想の割合は一般的に善玉菌2:日和見菌7:悪玉菌1といわれていますが、腸内細菌はバランスとともに多様性が大事で、善玉菌だけであればいいというものではないのが、腸内細菌の難しいところ。腸内細菌の集まりである腸内フローラをよい状態に近づけることが腸活です。
栄養バランスのよい食事は腸内のビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌を増やし、免疫力を高めたり、発がん物質の産生を抑えたり、食べ物を発酵・分解してビタミンB群や乳酸、酪酸などの体に有益な物質をつくり出したりします。
「腸内フローラを形成する腸内細菌の種類は乳幼児期に決まり、その後は大きく変化することはありません。しかし、食生活やライフスタイルによって体によい善玉菌を増やし、有害な悪玉菌を抑えて、腸内環境をよりよい状態に整えていくことは可能です。そのためには、乳酸菌やビフィズス菌などの腸に有益な菌と、オリゴ糖など有益な菌の栄養となる食材を一緒にとるシンバイオティクスを実践していくのが効果的です」
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ここまで腸内細菌と免疫についてお話いただきましたが、続いて<後編>では近年注目されている口腔内環境と腸との関係について、ご紹介していきます。
文/庄司真紀