犬とふれ合うことで心身の機能改善を目指すドッグセラピー。高齢者や障がいのある人だけでなく、海外では大学生のメンタルケアにも利用されつつあるようです。その効果を調べた研究は女性を対象としたものが多かったのですが、このたび海外研究によると、ドッグセラピーはそれを受ける人のジェンダーにかかわらず効果的であることが明らかになりました。社会的、情緒的な幸福感や満足度を高めると報告されています。
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従来は女性を対象にした研究が多かった
中高教育を終えて大学生になると、大きく環境が変わってストレスや不安、ホームシックなど精神的な負担も加わります。そんなときにはペットと過ごす時間が心を癒してくれることもあります。
専門的にはメンタルケアのひとつとしても、訓練された犬(“セラピードッグ”と呼ばれています)とそのハンドラーを介して学生が犬とふれ合うドッグセラビーのプログラムが注目されています。ストレス軽減やポジティブな感情の増加など、数多くの好ましい結果が出ているそうです。ただ、これまでの研究の多くは参加者が女性主体で、性別によらず効果的かがはっきりしていませんでした。
そこで今回、カナダ、ブリティッシュコロンビア大学の研究グループは、ドッグセラビーが多様なジェンダーに対して同じように効果があるのか調べてみました。研究に参加した大学生は、それぞれが自認するジェンダー別に女性80人、男性54人、ほかのジェンダー28人(男女どちらでもない、流動的に変わる、複数ジェンダー)。
参加者3〜4人に1頭のセラピードッグとハンドラーという組み合わせで20分ほどのセラビーセッションを行い、セッションの前後に、幸福感や孤独感などいろいろな感覚および精神状態を5段階で自己評価するアンケートに答えてもらって、結果をジェンダー間で比較しています。
犬とのリラックスできるひととき
こうして研究で確認されたのが、ドッグセラピーはどの性自認の人でも同様によい効果が得られることです。
幸福感や肯定的な感情、楽観性、キャンパスとのつながりなどが増加し、ホームシックや孤独感、不安感、否定的な感情、ストレスなどが減少したうえ、これらのポジティブな影響は、さまざまなジェンダーにわたって同等でした。
今回の結果は、これまでの研究結果を裏づけるとともに、ドッグセラピーがジェンダーを問わずよい影響を与えることを示すものと研究グループは結論づけています。特にセッション後により楽観的になった点については、その先の大学生活にポジティブな見通しをもたらして有益なのではないかと説明しています。
アンケートの自由回答から、参加者はドッグセラピーの時間をふだんの心配事やプレッシャーを一時的に忘れてリラックスできるひとときとみなしていることもわかりました。一般的なメンタルセラピーより気楽に参加でき、低コストでジェンダーを問わないドッグセラビーは、大学生のメンタル面での健康を改善するプログラムとして期待できるかもしれません。
<参考文献>
Canine cuddles can comfort equally across all genders
https://news.ok.ubc.ca/2023/10/24/canine-cuddles-can-comfort-equally-across-all-genders/
Binfet, J.-T. et al. (2023) ‘A mixed-methods examination of an on-campus canine-assisted intervention by gender: Women, men, and gender-diverse individuals’ self-reports of stress-reduction and well-being’, Human-Animal Interactions. CABI. doi: 10.1079/hai.2023.0037.
https://www.cabidigitallibrary.org/doi/10.1079/hai.2023.0037
アニマルセラピーとは(NPO法人日本アニマルセラピー協会)
https://animal-t.or.jp/html/about-animaltherapy/more-animaltherapy.html