体内時計によって生じる約24時間周期の体のリズム「サーカディアンリズム」には、いわゆる朝型・夜型といった個人差があります。このリズムはメンタルヘルスも含めてさまざまな病気に関係していることがわかってきました。このたび海外研究において、朝型の傾向が強いと拒食症のリスクが高くなると報告されました。朝型・夜型は単なる生活スタイルの違いというだけにとどまらない性質といえるのかもしれません。
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生活リズムとメンタルヘルスなどが関連?
最近の研究によれば、朝型・夜型、あるいは中間型などサーカディアンリズムのタイプは「クロノタイプ」と呼ばれ、精神障害との関連性が示されています。
たとえば、夕方から夜にかけて元気になる夜型の傾向はうつ病や統合失調症と相関するほか、過食性障害(むちゃ食い障害)と関連する可能性もあるそうです。
また、拒食症もサーカディアンリズムの関与を示す研究結果が出てきています。ただ、拒食症は気分障害や不安症などとも関連しているため、サーカディアンリズムとの関係についての詳細はまだ明らかではない部分もあるようです。
そこで今回、米国ハーバード大学をはじめ英国、ウルグアイの大学を含む国際的な研究グループは、遺伝子情報に基づいてリスクを調べる「メンデルランダム化」という手法を使って、拒食症とクロノタイプとの関連性を調べてみました。この方法は、朝型・夜型といったタイプや拒食症の傾向を、偏りなく確かめられるのが特徴です。
今回、研究グループは、欧州系の人のゲノム解析や調査のデータからクロノタイプと拒食症に加えて、睡眠時間などの睡眠の特性と不眠症を含む睡眠障害についても詳しく分析しました。
拒食症と朝型はお互いに関連
こうして研究で確認されたのが、朝型と拒食症はお互いに関連していることです。
具体的には、早起きで活動のピークが日中の早い時間帯に現れる、遺伝的に朝型傾向のある人は拒食症になりやすいとわかったのです。逆に遺伝子的に拒食症になるリスクが高いと、不眠症になるリスクが高いこともわかりました。ただし、昼間の眠気や睡眠時間など、ほかの睡眠の特性との関連性は見られませんでした。
うつ病や統合失調症、過食性障害など夜型との関連が示されている障害とは異なり、拒食症は朝型と相関し、さらに不眠症にも関連すると、研究グループは分析しています。
拒食症の治療法は少なく、再発率も半数以上に及ぶうえ、原因もいまだに不明とされていますが、研究グループは朝型がリスク要素である可能性があり、将来的にはサーカディアンリズムに基づく新しい治療や予防法の発見につながる可能性も指摘しています。
生活スタイルを振り返って、当てはまる人は気をつけるとよいかもしれません。
<参考文献>
Harvard researchers see genetic link between anorexia, early rising
https://news.harvard.edu/gazette/story/2024/01/harvard-researchers-see-genetic-link-between-anorexia-early-rising/
Wilcox H, Paz V, Saxena R, Winkelman JW, Garfield V, Dashti HS. The Role of Circadian Rhythms and Sleep in Anorexia Nervosa. JAMA Netw Open. 2024 Jan 2;7(1):e2350358. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2023.50358. PMID: 38175645; PMCID: PMC10767597.
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2813601