メンタルヘルスと体重の意外な関係が明らかになってきています。心と体はつながっており、精神面の健康と体重には、互いに影響し合う双方向の関連性があると考えられています。このたび海外研究から、気分が沈んだときに、太りぎみや肥満の人は体重が短期的に増えやすいという報告がありました。すぐに影響が出るところが要注意です。
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個人の毎月の変動を調査
メンタル面の不調は、体重やBMIの増加につながるとされます。ただ、これまでの研究は、メンタルヘルスの長期にわたる影響を調べた研究が中心で、もっと短期的に個人の精神状態と体重の変動については十分に調べられていなかったといいます。短期間の体重の変動を確かめる研究は難しかったという事情もあるようです。
そんななか、今回、ケンブリッジ大学など英国の研究グループは、2000人以上のデータを、スマートフォンを使い分析。メンタルヘルスと体重変動の関係を探りました。注目したのは、コロナのパンテミック期間の6~9か月間です。この期間、研究対象者についてスマホのアプリを使い、毎月体重測定とメンタル面(うつ症状、不安感、ストレス)をチェック。うつ症状は点数が高くなるほど症状が強いと判断される0点~24点のスコアで測定しました。
BMIが高い人ではわずか1か月で影響
研究の結果、確認されたのが、うつ症状がわずか1か月後の体重に与える意外な影響でした。
具体的には、うつ症状のスコアがふだん(個人の毎月のスコアの平均)より上昇すると、1か月後の体重がふだんのスコアのときより増えることが確認できました。また、うつ症状のスコアが1ポイント上がると、1か月後に体重が45g増えました。この数字は少なく思えるかもしれませんが、たとえば5ポイント上がると(うつ症状では軽度から中等度へのアップに相当)平均的に225gの増加となるため、無視はできないでしょう。
こうした関連が明らかだったのは、研究開始時点で過体重(BMI25〜29.9)または肥満(30以上)の人でした。標準体重またはやせ型(BMIが25未満)の人ではこのような関連性は見られませんでした。
この結果は、年齢や性別、職業などに関わらず確認できました。不安症やストレスのスコアとは無関係で、うつ症状が関連するようです。また、逆に体重の増加が1か月後のメンタル不調の悪化につながるという発見もありました。
今回の研究では、うつ病とは診断されないレベルでうつ症状が変化したときに、太りぎみの人では体重が増えやすいという結果です。わずか1か月という短期間で増加するということなので、影響が比較的すぐに出るところも要注意といえるでしょう。気分が沈んでいるときは、いつも以上に食べ過ぎなど体重管理に気をつけるとよいかもしれません。
<参考文献>
Feeling depressed linked to short-term increase in bodyweight among people with overweight or obesity
https://www.cam.ac.uk/research/news/feeling-depressed-linked-to-short-term-increase-in-bodyweight-among-people-with-overweight-or
Mueller J, Ahern AL, Jones RA, Sharp SJ, Davies A, Zuckerman A, Perry BI, Khandaker GM, Rolfe EL, Wareham NJ, Rennie KL. The relationship of within-individual and between-individual variation in mental health with bodyweight: An exploratory longitudinal study. PLoS One. 2024 Jan 10;19(1):e0295117. doi: 10.1371/journal.pone.0295117. PMID: 38198439; PMCID: PMC10781195.
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0295117