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発症リスクが半減! 大腸がん検診の効果は「予想以上に大きい!」と海外研究の報告

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大腸内視鏡

大腸がん検診を受けたことがあるでしょうか? 予防に大切ながん検診ですが、科学的な証拠に基づいて発症リスクや死亡率を下げる効果がこれまでも認められています。このたび新たな海外研究において、大腸がんの検診による発症リスクの低下は「これまで考えられていたよりかなり大きい」と報告されました。

監修 : 星 良孝 <ステラ・メディックス>

ステラ・メディックス代表取締役社長 獣医師/ジャーナリスト
専門分野特化型のコンテンツ創出を事業として、医療や健康、食品、美容、アニマルヘルスの領域の執筆・編集・審査監修を担っている。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BP社において「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年に会社設立。YouTubeステラチャンネルでもヘルスケアの話題を発信。
YouTube:https://youtube.com/@stellach

Contents 目次

無料でも受診する人は少ない

内視鏡

がん検診はその効果が認められている一方で、「偽陽性」や不必要な治療につながる「過剰診断」のリスクをはらんでいることが知られています。また、これまでに検診の利益や費用についても多くの研究が行われてきました。

今回、マサチューセッツ工科大学など米国の研究グループは、「自然実験」と呼ばれる分析手法を、がん検診に適用することで詳しく調べてみました。

この「自然実験」は、2021年のノーベル経済学賞の対象にもなり、経済だけでなく教育や医療などさまざまな分野で活用されている新しい分析手法です。

これまでの研究では、「無料のがん検診に招待されたグループ」と「無料のがん検診に招待されていないグループ」の間で、その後のがん発症率を比較するやり方が一般的でした。しかし、実際に招待された人のなかで、検診を受けた割合はどれくらいなのかについては明確ではありませんでした。特に大腸がんの場合のように内視鏡を使う検査は不快に受け止められることもあり、どうしても受けない人が多くなりがちで、全体的な効果が見えづらくなっていたのです。

そこで、今回の研究では、6か国17か所の医療機関を含む大規模な研究5件(すべて内視鏡検査)からのデータを再評価。招待された人のなかで実際に検診を受けた割合は低く、42〜87%と大きく異なりました。従来の研究であれば、招待されたグループと、招待されていないグループを比較するのが一般的で、実際に検診を受けた割合は考慮されません。新しい分析手法ではこの実際に招待されて、しかも検診を受けた人と、そもそも招待されず、検診も受けなかった人との比較により、検診後の発症リスクがより厳密にわかるというものです。

発症リスクが半減の結果に

大腸

こうして研究で確認されたのが、実際に大腸がん検診を受けると、その後10年間の大腸がん発症率が半減することです。

具体的には、過去の研究では、参加者のおよそ1%が大腸がんになると考えられていました。検診の効果は、発症リスクでおよそ0.25ポイントの低下としていました。それに対して、新しい分析手法を使うと、およそ0.5ポイント下がることがわかりました。つまり、倍の利益があると明らかになったのです。

内視鏡検査に気が進まない人も、検診を受けた場合に発症リスクが大きく下がることを聞けばやる気になるのではと、研究グループは指摘。大腸内視鏡は気が進まないという人でも、一度、検討する価値がありそうです。

<参考文献>

Study: Colon cancer screenings are more effective than previously understood
https://news.mit.edu/2023/study-colon-cancer-screenings-are-more-effective-1219

Angrist JD, Hull P. Instrumental variables methods reconcile intention-to-screen effects across pragmatic cancer screening trials. Proc Natl Acad Sci U S A. 2023 Dec 19;120(51):e2311556120. doi: 10.1073/pnas.2311556120. Epub 2023 Dec 15. PMID: 38100416; PMCID: PMC10742387.
https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2311556120

2021年のノーベル経済学賞に社会の変化と雇用の関係など調べた3人
https://www3.nhk.or.jp/news/special/nobelprize/2021/economics/news/news_02.html

 

 

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