新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)は、世界中で人々の生活のあらゆる側面に大きな影響を与えました。月日は過ぎてすっかり生活は平常に戻りつつありますが、影響はまだ思わぬところに残っているようです。このたびの海外研究によると、ごくプライベートな問題である男女の性生活にコロナの影響が及んでいることが報告されました。感染した女性、特に後遺症がある女性は性生活に問題が生じる可能性が高いというのです。
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新型コロナと性生活の関連を調査
日本ではこれまでに新型コロナにかかった人は累計で3000万人以上に上るとの統計が公表されています。一方で、人口約3億3000万人の米国では31%以上がいちどはコロナにかかっていると推定されるそうで、感染した場合の多岐にわたる影響については数多くの研究が行われているといいます。そのなかのひとつが、性生活への影響。たとえば、男性では勃起不全の問題が明らかになっています。一方、女性の性生活に関しては不明点も多く残されているようです。
今回、米国の研究グループはさまざまな年齢の女性を対象にオンライン調査を実施しました。調査では、性生活を定量的に調べるため「スコア化」しています。たとえば「この4週間の間に何回くらい性的な欲求を感じましたか?」といった質問に答えてもらって、性的な興奮や潤滑度、満足度など6つの項目に分けて性生活を評価。そのうえで、新型コロナの感染歴がある女性とない女性、そして感染歴に加えて後遺症もある女性の間でスコアを比較し、性生活への影響を分析しました。アンケートで、過去1か月間に性生活があった女性およそ1300人のうち、感染歴がある人は半数、その25%(170人)は後遺症がありました。
後遺症があるとリスクアップ
こうして研究で確認されたのが、新型コロナの感染歴がある女性、なかでも後遺症がある女性は性的なトラブルを抱えるリスクが高くなるということです。
具体的には、感染歴がある女性は感染歴がない女性に比べて性的な欲求、興奮、潤滑度、満足度の4項目の合計スコアが低下。感染症の影響により、心身両面で性的機能を損なっている可能性が確認されましたが、オーガズムと痛みの2項目では違いは見られませんでした。
さらに後遺症がある女性では、感染歴のみの女性と比べて性的興奮やオーガズムなどの項目と、合計スコアが一層低くなっていました。
このような影響の背景には、コロナ禍のせいで社交が減ったり、子どもが家にいることが増えたりしたこともあるのではないかと、研究グループは考察しています。仕事や勉強などへの影響については問題視されることもよくありますが、性生活の改善には時間がかかるようです。
また特に女性の場合、性生活について話すのはタブー視されていると、研究グループは指摘しています。そうした点から新型コロナの性生活への影響が表に出にくい部分もあるようです。新型コロナの感染の影響とみられる悩みを抱えている男女は医療関係者やカウンセラーに相談するなどの解決策を考えてよいかもしれません。
<参考文献>
Having COVID-19 and Long COVID Can Impact Women’s Sex Lives
https://www.bu.edu/articles/2024/covid-can-impact-womens-sex-lives/
Seehuus M, Fertig M, Handy AB, Clifton J, Stanton AM. The impact of COVID-19 and long COVID on sexual function in cisgender women. J Sex Med. 2024 Jan 30;21(2):129-144. doi: 10.1093/jsxmed/qdad155. PMID: 38055615.
https://academic.oup.com/jsm/article/21/2/129/7458909
The Female Sexual Function Index: Transculturally Adaptation and Psychometric Validation in Spanish Women
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7037847/
新型コロナウイルス感染症の国内発生状況等について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/kokunainohasseijoukyou.html