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25%は無自覚…悪性不整脈「心房細動」の早期発見へ! 新設が続く「スマートウォッチ外来」とは?

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心臓の健康

心拍数や活動量、睡眠状態など、さまざまな健康指標を測定できるスマートウォッチ。日常の健康管理に利用している人が増えるなか、医療機関で設置が進んでいるのが「スマートウォッチ外来」です。スマートウォッチに搭載されている心電図計測や不整脈の検出機能によって、これまで症状が出るまで気づかなかった悪性の不整脈「心房細動」を発見し、脳梗塞などを予防するという取り組みです。そこで今回、昨年に「スマートウォッチ外来」を新設した総合東京病院(東京都中野区)循環器内科の滝村由香子先生にお話をうかがいました。

監修 : 滝村 由香子 (日本循環器学会認定専門医)

総合東京病院(東京都中野区)循環器内科 スマートウォッチ外来 医長 日本循環器学会認定専門医、日本不整脈心電図学会認定不整脈専門医、日本内科学会認定医、植え込み型除細動器(ICD)/ペーシングによる心不全治療研修証取得

Contents 目次

不整脈が起こったときすぐに心電図を記録

スマートウォッチと心電図

2020年、Apple Watchに搭載されたAppleの心電図計測アプリが厚生労働省から家庭用医療機器の認可を受けました。心電図計測や不整脈の検出が可能になり、現在では複数のメーカーからも同様の機能のスマートウォッチが登場。それに伴い「スマートウォッチ外来」を開設する医療機関が増えています。

総合東京病院では、スマートウォッチの“不整脈が出ています”“心房細動の疑いあり”といったメッセージに従い患者さんの受診が増えたことから、2023年夏にスマートウォッチ外来を設置。最近では、かかりつけのクリニックから紹介されて訪れる人も少なくないといいます。

「心臓にかかわる循環器系の病気のなかでも、スマートウォッチは特に不整脈を発見するのに大きなメリットがあります。不整脈は心電図によって“現行犯”で発見する必要があるため、“動悸があるのに病院の検査では異常なし”になってしまう患者さんの診断がずっと早くなるケースが増えています」と滝村先生。

 

スマートウォッチの表示

(例)Apple Watch

これまでも病院で計測器を装着して心電図を記録することはありましたが、年に数回しか起こらない動悸や不整脈を検出することはなかなか難しい状況。それに対し、スマートウォッチの場合は長時間装着するアイテムのため、ときどきしか出現しない動悸や不整脈に気づくチャンスが多くなります。

「心拍の異常を認めた際にすぐに心電図をとることが可能なので、スマートウォッチ外来では、スマホのアプリと連携させ、波形のまま残っている心電図を実際に見せていただいて診断します。なかでもApple Watchの場合、特に悪性の心房細動は検出率が非常に高く、信頼に値すると感じています」

不整脈のなかでも怖いのは「心房細動」

心電図

拍動(脈)の異常によって起こる不整脈。症状として心臓がドキドキする動悸が現れます。動悸は感じ方によりいくつか種類があり、脈が速くなる「頻脈性不整脈」、脈が飛ぶ感じの「期外収縮」、脈がバラバラになる「心房細動」などに分けられます。不整脈の場合には、異常の頻度や持続時間を評価し、治療を要するものなのかを判断します。

「不整脈のなかでいちばん注意したいのは、脈がバラバラになる心房細動です。心房細動が怖いのは、心臓のなかに血栓ができやすくなって、それが血流に乗り運ばれ、脳血管を詰まらせて重い脳梗塞の原因になることです。そのほか心筋梗塞を含む全身の血栓塞栓症や心不全の原因にもなります」

通常の心房の心拍数(波形1)が1分間に80回だとすると、心房細動の場合、心房の心拍数が1分間に350〜600回程度に上がります。このとき、心臓の4つの部屋のうち血液を受けとる役割の心房は収縮拡張ができず、細かく震えている状態です。心電図では、(波形2)のように小さい丸い波は見えず、細かい波(細動波)が見られます。

波形

心房細動と診断された場合、頻度や持続時間により治療が必要となり、まず血栓ができないように血液をサラサラにする薬が処方されます。これによって脳梗塞を防ぐことができます。

そのほか、稀に「期外収縮」という場合も。安定した心拍のなかにタイミングが速い心拍が紛れ込んでくる不整脈で健康な人でも現れることがあり、回数や症状によって治療の有無を判断します。また、スマートウォッチでは心拍数を測れますが、安静時の心拍数(脈拍数)が常に120以上の場合は治療が必要な不整脈の可能性が高いといえます。

無自覚の人は25%! 表示が出たらまずは受診を

心臓の健康

このように一概に不整脈といっても、治療が必要かそうでないかはさまざま。「不整脈や動悸があっても心電図から判断して治療がいらないケースもあり、まずは受診することで安心材料になる」と滝村先生。

Apple watchでは「判定不能」や「心拍高値」という結果が出ることがありますが、これらが頻繁に表示される場合もまずは医療機関に相談するのがよいそうです。

心房細動に関しては60歳を境に罹患頻度は急激に上昇し、80歳以上では約10人に1人が罹患。男性が女性に比べ約1.5倍発症しやすいとされます。また、肥満や高血圧のほか、飲酒や喫煙、過労、ストレス、暴飲暴食、睡眠不足などもリスク要因となるため、30~40代の働き盛りの年齢においても例外ではありません。

「心房細動は約25%の人が無自覚とされ、そのまま進行していきます。スマートウォッチ外来の意義はこうした何も症状がない患者さんを汲み上げること。自覚がなくても治療を開始することで、脳梗塞など何の前触れもなく起きていた突然の悲劇を防ぐことができると考えています」

それらしい症状がない人にもっとも恩恵がある心房細動の検知。スマートウォッチに表示が出たら、落ち着いて受診へ。スマートウォッチの使い方がよくわからなくても、病院の医師やスタッフが対応してくれる場合もあるため、気になる表示が出たら、まずは相談してみることをオススメします。

取材・文/庄司真紀

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