デジタルデバイスが不可欠な時代にあって、目のトラブルも増えています。また、加齢によって目の病気リスクも高まっていきます。人は情報の8割を視覚から取得するといわれ、目の健康は生活の質を維持する上でも、とても大切なことです。そこで、日ごろから目のために心がけたいことをYouTubeで目の病気について発信する、メディアでもおなじみの眼科専門医、二本松眼科病院副院長の平松類先生に詳しく聞きます。
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目の健康を守る5つのポイントとは
そもそも、「健康な目」とはどのような状態をいうのでしょうか。眼科医の平松類先生は、「病気や違和感のない状態といえます」と話します。パソコン作業やスマートフォンを見る時間が長くなっている現代。手もとが見えにくくなるスマホ老眼、ドライアイ、疲れ目といったトラブルが増えています。「デジタルデバイスとつき合いながら、目の健康を守るためには、次の5つを守りましょう」と、平松先生はアドバイスします。
1.パソコン作業やスマートフォンを見ているときは、意識してまばたきをするようにする。そして、1時間に1回、1分間は遠くを見るようにする。または目をつぶる。
2.ホットアイマスクなどで目を温めたり、目薬をさしたりして目の乾燥を防ぐ。
3.仕事でパソコンを使う人は、休憩時間にスマートフォンを見ないようにする。
4.デジタルデバイスを使うときは、なるべく画面の大きいものを使う。
5.モニターを見るときは、水平または水平から15度下ぐらいを目安に。
この5つのポイントは、平松先生も日ごろから意識しているそうです。
ある栄養素が目の健康を守るカギに
目を健康に保つためには、目そのもののケアも大切ですが、それに加えて食べるものにも気を配る必要があります。
「全身の細胞は日々生まれ変わっています。目も同じなので、日々の食事から摂取する栄養はとても大事です」と平松先生は話します。
では、目によい栄養素とはなんでしょうか。
「もとっとも重要な栄養素はルテインです。網膜の中心に黄斑部という、実際にモノを見る部分がありますが、この黄斑部にたまる栄養素がルテインです。若いころはルテインは豊富にありますが、40歳をすぎると徐々に減少していきます。積極的に摂取しないと、目がダメージを受けやすくなることがわかっています」
そのルテインは、実際に目にどのような働きをしているのかというと――。
「ルテインは“天然のサングラス”といわれ、紫外線から目を守る働きをしています。目から入った紫外線は、目の細胞を酸化させ、白内障といった病気を進行させるなど、目にダメージを与えます。この紫外線による酸化や加齢性の酸化を防ぐのが“抗酸化物質”で、ルテインも抗酸化物質のひとつです。とくに目に集積するので、目の健康維持にはなくてはならないものです。白内障だけではなく、緑内障や黄斑変性といった目の病気にも効果が認められています」
ルテインは植物が作り出す色素の一種で、野菜に多く含まれています。ルテインを最も多く含む野菜はケールで、モロヘイヤ、よもぎ、小松菜、ほうれん草、ブロッコリー、レタスなどが続きます。100g中の含有量は下のとおり。
<ルテインの100g中の含有量>
ケール 22.0mg
モロヘイヤ 13.6mg
よもぎ 11.3mg
小松菜 7.6mg
ほうれん草 4.5mg
ブロッコリー 2.00mg
レタス 1.8mg
食べる量の目安について、平松先生は次のように話します。
「ルテインの摂取量は、1回につき10mgがよいと言われています。ホウレンソウなら2束から3束が目安です。継続して週に2~3回とっていると、安定して目にたまっていきます」
ふだんの食生活にとり入れやすい野菜がそろっているので、意識して食べるようにしたいですね。
トマト、カニ・エビなども抗酸化作用がある
目によい抗酸化物質は、ルテインのほかにもあります。
「ブルーベリーなどに含まれるアントシアニン、トマトに多いリコピン、鮭・カニ・エビなどに含まれるアスタキサンチンなどです。ビタミンCとビタミンEは抗酸化ビタミンと呼ばれています。ただし、これらは全身に作用するため、目に集積するのはごくわずか。目の健康を“サポートするもの”と捉えておくとよいでしょう」
ビタミンA・C・E(エース)も目によいとされています。「抗酸化作用以外には、ビタミンAは細胞の成長を促し、目においては網膜細胞を保護する作用があります。ビタミンEは細胞膜を保護するなど目の細胞を安定させる重要な働きがあります」
また、「魚油に含まれるDHA、EPAは涙の質をよくする働きがあり、ドライアイの改善に効果的」といいます。
日ごろのちょっとした心がけと工夫が目の健康を守ります!
取材・文/海老根祐子